妊娠・出産話-シン-


妊娠・出産話 -シン-

シンを妊娠したことに気付いたのは、今の旦那と付き合い始めて7ヶ月が経った頃
1997年の11月でした。

当時、私はまだ19歳 旦那は24歳。
正直言って、「どうしよう・・・」と思いました。
旦那も同じように迷ったようです。
何せ旦那はベトナムからの研修生で、実習生としてあと2年日本で働くための試験に
合格したばかりでしたから・・・

でも私はどうしても産みたくて。
好きなひとの赤ちゃんを堕ろすなんて、とても考えられませんでした。


高校時代、授業で 『沈黙の叫び』 というビデオを観たことがあります。
これから堕胎される赤ちゃんを超音波で撮影したもので、お腹の赤ちゃんは器具
から必死に逃げ惑うように子宮の中で暴れていました。
狭い子宮の中で逃げ惑い、叫ぶように口を開けた小さな小さな赤ちゃんのその姿に
涙が出ました。


「親は、子どもを選んじゃいけない」
そう思ったから、もし旦那がどういう結論を出そうとも私は産むことを決意したのです。



旦那は、生まれてくる赤ちゃんと私と共に生きる道を選んでくれました。

ところが厳格な両親になかなか妊娠したことを言い出せず、結局6ヶ月に入った頃、
母親に「最近、お腹周りがやけにふくよかだけどまさか妊娠してないでしょうね?」
と問い詰められるまで隠していた私。
もう6ヶ月だと告白したら驚愕しておりました。

お父さん、お母さん。どこまでも親不孝な娘でごめんなさい。


父からも呆れられましたが、父は翌日からすぐに外務省や法務省に問い合わせて、
ベトナム男性との婚姻手続きについて調べてくれました。



ベトナムは社会主義国。
男性が国外で国際結婚することは厳しく、婚姻手続きのことで電話をした旦那は在日
ベトナム大使館の職員から
「あっはっは。
大使館や領事館で仕事してる人間じゃあるまいし、どうやって日本で生活していく
つもりなのか?無理無理。」
と電話口で笑われたこともあったそうです。

研修ビザで来日していたため、一度本国に戻り『日本人の配偶者等』のビザを取得
し直さないといけないということで、1998年7月2日にベトナムへ帰国した旦那。
私は9月8日に出産予定日を控え、書類一式と旦那の帰りを待つこととなりました。



8月26日の午前1時。
大量に破水して急遽産婦人科へ入院。
破水しているから動かないよう言われ、ひたすら陣痛室のベッドでじっとして、陣痛が
つき始めたのは昼頃から。
若いし初産だし、なかなか子宮口が開かず途中、内診のときに器具で4cmまでこじ
開けられ・・・

夕方5時を過ぎて陣痛は3分間隔に。
「9時頃には生まれるかもねー。」
と看護師さんに言われ
「あと4時間我慢すればいいんだ。あと4時間・・・」
と、泣き言ひとつ言わず「痛い」の一言も漏らさず痛みに耐えて耐えて、9時。


9時前の内診で
「まだまだ8cmくらいねぇ~。もうちょっとかかるかな。」
と助産師さんに言われ、ガッカリ・・・

早く痛みから解放されたい・・・


夜勤の看護師さんは2人。
陣痛で腰が痛いとかでナースコールするのも申し訳なくて、ひたすら我慢。
人生においてあんな我慢大会するのはもう二度となかろうな~。

11時。
いよいよ痛みが限界になり、どうにもこうにも我慢できなくていきみのがしもつらく
なってきたのでナースコール。

「もう全開大になっとる!分娩室に行ってよかよ。」
と、助産師さん。

「・・・歩いて行かんばですか?」

「もちろん!隣が分娩室やっけん♪」


陣痛が去った合間を見計らってベッドから降り、隣の分娩室へ。
どうもなければ数秒もかからない隣の部屋が遠く感じました。
ヨレヨレ歩いて行っていたら、また陣痛がきてしまいその場で立ち止まって歯を食い
しばり、陣痛に耐え・・・
1分間隔でくるくせに陣痛は長いんだから!!

「くっそー。ばり痛か・・・」

と、暴言吐く私。


分娩台に乗ってみたら、私は背が高いからか足台の位置に無理があり、超きつい
体勢に(涙)
その体勢で陣痛に耐えなきゃいかんし!!

夜中に破水してから全然寝ていなかったので、陣痛の合間にウトウトしていたら
「寝ちゃダメ!!ちゃんと深呼吸していきみのがさなきゃ!」
と、看護師さんに起こされ
「陣痛がきてない間くらい寝たいんですけど。」
と、痛みと疲れと眠気とでイライラして看護師さんをにらみつけました(笑)



何度いきんだことか。
予定日より早く破水したため、お腹のシンはまだ下がってきておらず、私のお腹側に
自分の背中を向けていなかったのでなかなか出てきませんでした。




そして、1998年8月27日午前1時47分。
シンが生まれました。

ベトナム語でシンは『美しい』という意味があります。
心の美しい優しい紳士な男性に育って欲しいと願いを込めて 『心』 と命名しました。




© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: