フライブルク日記

2016/04/04
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カテゴリ: 日常生活
桜は満開、コブシは散り始め、ツツジもそここで咲いている。

お天気は今ひとつ冴えないけれど、春はきているらしい。

寝室の窓の目の前に枝を広げている街路樹のカエデも新芽を吹いている。

シジュウカラやフィンチが声をきそって囀って、にぎやか。

いいな、こういう瞬間をあと何年、楽しませてもらえるんだろう。

カエデの薄緑色の新芽を見て、思い出した。

「国策」に合わないことをして、独房に入れられたある方が書いた本のことを。

刑務所に閉じ込められていると、見えるものはコンクリートばかりなのだそうだ。

一つだけ目を癒してくれる「自然」は階段だか廊下にある、たった一本の観葉植物だそうだ。



この本のほとんどは忘れてしまったけれど、この部分がとても印象に残った。

この方が観葉植物を目にして、心いっぱいに吸い込もうとするのは、たぶん、山を歩いて喉が乾ききって、やっと清流にたどりついて水を飲むときのような気持ちなのではないかと。

わたしも街路樹の新芽を見ると、喉がうるおされるような想いがする。

刑務所生活に関してもう一つ印象に残っているのは、この方の本だったか、別のやはり「国策」と合わないことをして刑務所に入れられた学者が書いた本だったか忘れたけれど、刑務所暮らしでのただ一つの楽しみは、毎日の食事だということ。

そして、甘い物にものすごく感激した、甘いお菓子が楽しみだったと著者は書いていた。

甘味というのはとても魅力的だ。すぐに燃えてエネルギー源になるから、自然と体が欲しがるようにできているのだろう。

BFは2才のときに、旧ソ連領から雪の中をさまよい、空から攻撃がくる中を、何年もかかって逃げてきた(そういう運命になったのは、もちろんナチがしたことが悪いし、ドイツ軍自身が自国の市民の逃亡を阻止したという経過もある。自分たちが先に逃げた)。

逃亡中はいつも空腹で、おがくず入りスープまで食べて飢えをしのいだそうだ(おがくずにしみこんでいた機械油の匂いがしたそうだ)。

あるとき、草原で集めたスイバを、母親がどこかの村の青空市で売るのに付き添っていたとき、BFはよその人がリンゴを食べて、その芯を地面に捨てたのを目にした。
すかさずBFは、そのリンゴの芯にかけよって、拾って食べたのだそうだ。
その瞬間に口いっぱに広がる甘味への感激は、今でも忘れられないそうだ。


ふだん、当然のようにある間はありがたいとも思わないけれど、なくなったら、とても恋しくなる存在。
なくなってはじめて、ありがたさを悟る存在。

こんなことを考えて、ぼんやり街路樹を窓から見ていたら、ギャーギャーという美しくない声がして、姿はとても美しいカケスがカエデにとまった。
カケスはカササギと類縁関係がある。どちらも姿が優雅で美しいけれど、声がなー、やっぱりカラスの仲間なんだよね。

カケスは日本では山に行かないと見えないけれど、こちらでは町でも見られる。


都市の緑、木々も減り、野鳥も激減しているらしい。身近にもそれを実感する。

野鳥も木々も、なくなってからやっと、そのありがたさを実感するのかもしれない。哀しいな。





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Last updated  2016/04/04 07:58:32 PM
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