「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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誕生-手術
りきちゃんとすごした日々 その1
2002年、12月。
りきちゃんは、突然ママのおなかにやってきた。
パパ、ママにとって初めての子供。
両家のおじいちゃん、おばあちゃんにとっても初めての孫。
経過は順調だった、最初は・・・
ある日妊婦検診に行ったママは、落ち込んでいた。なんか、心臓がおかしいかもしれない・・・
大学病院での再検診で「心臓に穴が開いている」となったときは、パパもちょっと落ち込んだ。
でもおよそ100人に一人は穴が開いているといわれ、あながち珍しいものでもないことや手術すれば治ることが分かった。大丈夫だと思った。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
大学病院でちゃんと見てもらったところ、穴の大きさは1センチほどあり自然に塞がることはなく、生まれてから手術が必要なことが分かった。
力斗っていう名前は画数が少なくて書きやすいうえに、健康運もいい名前だという。
既に心臓病だということは分かっていたので、きっと強くなる、という願をこめて、この名前にした。
そうして予定日が近づいてきた・・どころか、どんどん過ぎていった。
すでに2週間近く過ぎているので入院となった。
9月20日土曜日早朝、「陣痛始まった」と突然電話が。
しかしその後も陣痛が来るには来るのだが、周期が一定ではなく、すぐに生まれそうにない。
そのまま夜になり、そして朝になり、昼になってもあまり状況は変わらず、また夜になった。
ここでやっと本格的に陣痛が激しくなってた。子宮口も開いている。
夜中になって、やっと分娩台に載せてもらえた。
パパは、ママのそばに立って、ママを励ました。
長時間にわたる格闘の末、なんか黒いものが・・・・頭だ!
で、そのあとは「ずるっ」とでてきた。おおっ、生まれたー!!!すげー!!!!
だがその直後、空気が凍りついた。
泣かない。
息をしていない!
出産に立ち会った先生が速やかに別の場所にりきちゃんを持っていって処置を開始する。
口の中や鼻の中のものを吸引し、さすったりたたいたり、暖めたり・・・・
ほえっ
確かに聞こえた。小さい声だったが息をした。おおおっ、良かったー
りきちゃんはそのまま抱っこも何もなく、別室でさっそくエコーなどの検査を受けていた。
かわいそうだが、これが現実だった。
生まれた時間、22日午前2時ごろだった。
私は、疲れてそのへんのソファに転がって寝ていたが、看護婦さんに呼ばれて目が醒めた。
生まれてすぐ、お子さんを調べました。
そういって見せられた紙に書かれたモノは・・・・
完全型心内膜床欠損症
新生児仮死
顔面麻痺
感染症
しばし沈黙のあと、「ありがとうございました。」と、とりあえず言ってみる。
ショックで言葉が出なくなったかと思ったからだ。
そして先生から詳しい病状説明をされた。
はい、といって聞くしかなかった。
大学病院では生むだけで、産後すぐに子供の心臓病を得意とするS病院へと転院することになっていた。
迎えがくるまえに、りきちゃんに会うことができた。
およそ生まれたばかりの子供がいるとは思えないような機械だらけのNICUに、確かにいた。
チューブやら点滴やらがつけられ、保育器の中に一人でいた。
・・・・かわいい。
うわ、かわいいーーー
触ってみた。柔らかい。この世のものとは思えないほど柔らかい。
手を握ってみる。頭をさすってみる。
やったね、りきちゃん。パパだよ。こんにちは、はじめまして!
そして、時間が来て、S病院に移る救急車が到着した。
移送前にもう一回面会した。やっぱり、すごくかわいいかった。
このあと、素手でりきちゃんに触れることができたのは、13ヶ月後だった・・・・
そうして、生まれてわずか数時間後、ママとりきちゃんは別々になってしまった。
大学病院からS病院までは、クルマで20分ぐらい。
S病院はこのとき初めて行ったが、大学病院と異なり、えらいキレイだった。
小児科のNICUのあるところは妙に静だった。
この静けさが、身にしみた。
そのうち看護婦さんがやってきて、とりあえず入院の手続きや、その他いろんな説明をうけた。
その後、担当のSH先生と会った。
思いつくこと思いつく限り、いろいろ聞いてみた。
「あああーよくなりますよ、だいじょうぶですよー」
と、軽くは言ってはくれなかったが、冷静に話を聞くうちに、まあ、大丈夫なんじゃなかろうか、と思うようになってきた。
その後、りきちゃんに会った。
よく見ると、なんか赤ちゃんらしい顔ではない。なんか、大人びているっていうか・・・
そして、あんまり赤くない。
かわいいことには変わりがないが、なんか、他の赤ちゃんとちょっと違う・・・
その後、パパは会社に行っていろいろ手続きなんかをした。
その晩、ママのところに行った。
ママがかわいそうだった。
普通、子供が生まれたら一緒の病室で過ごせるのに、りきちゃんはそばにはいない。
大学病院の看護婦さんや一緒に入院している方々にはいろいろ支えてもらったようだ。
りきちゃんは生まれてすぐS病院に転院した。
そこでは、面会時間が14時30分から15時までと、一日30分だけである。
ママは産後で大変なので、なかなか面会には来れないかも、と思っていたが、
なんと出産の次の日には面会に来た。ママの産後のひだちは良かったのが幸いした。
そうして、一日30分だけ、りきちゃんはパパとママに会えることになった。
りきちゃんは保育器に入って、栄養チューブが鼻から胃まで入っている。
心拍とサチュレーション(血液中酸素濃度)のモニターが付いていて、裸で寝かされている。
ママに抱っこしてもらうことも、服を着させてもらうことも、オッパイを吸うことも、素手でさわってもらうことすら出来ない。
この子は、パパとママからの愛情を感じることが出来るのだろうか。
面会時間の30分は、パパとママは全開でりきちゃんに接し、いっぱい触れ合おうとした。
生まれてから10日ほどたったある日の朝、病院から電話が。。。。
急に呼吸が出来なくなったので、とりあえず呼吸器を付けましたとのこと。
面会に行ってみると、口から呼吸器のチューブが気管に入っていて、
抜けないように頭は固定、手も固定されている。
普通の親ならば、痛々しくて見ちゃいられないかもしれないが、このときは妙に冷静だった。
だって、これがなければ死んでしまうんだし。
10月になり、動脈管開存のため、肺高血圧となって容態が悪くなってきた。
このままだと肺がダメになってしまうので、動脈管を縛る手術をします。
すぐにでも手術をしたいようだった。
パパは外国出張だったが手術はその期間中に行うこととなった。
そう難しい手術ではないとは思うが、我が子の手術の時に立ち会えない、ママ独りにしてしまうことが申し訳なかった。
みごと手術は成功、うまくいったようだった。
手術の当日の様子はパパは知らない。
でもママががんばってくれたようだった。
手術後はりきちゃんの体調は手術前よりも確実に良くなっていた。
連休を利用して、大阪からおじいちゃんとおばあちゃんも来た。
手術もうまくいって、みんなにお披露目できて、順風満帆のように思えた。
相変わらず呼吸器は入っているわけだが・・・
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