アンティークな琥珀堂

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アントワープと工業用途


<アントワープとHRD>
[ アントワープの地位|HRD ]

アントワープの地位

1990年以後、ダイヤモンドはベルギーの輸出の 7% を占めています。 研磨を始めとする関連産業を含めて考えたとき、ダイヤモンド産業がベルギー経済に占める地位の大きさが判るでしょう。
アントワープはダイヤモンドの取引量の世界一を誇り、世界で20ある取引所の内の四つが存在します。また、ダイヤモンド取引を行う上でのインフラストラクチャーが整っていることも他のセンターとは比較になりません。 例えば、ダイヤモンド鑑定機関、ダイヤモンド取引専門の銀行、ダイヤモンド輸送会社、ダイヤモンド研磨用機材の販売店等々。その上、街ぐるみの警備態勢がダイヤモンド取引の場としての信頼性を高めています。 しかし、ベルギー政府の税制を始めとするダイヤモンド産業に対する優遇措置が現在のアントワープのダイヤモンド産業を支えていることは疑いありません。 巷では、ベルギー政府が税制その他でダイヤモンド産業に厳しく対応したならば、アントワープは3カ月と持たず、大部分の業者が転出し、ダイヤモンド産業は壊滅するだろうなどとも言われています。
しかしながら、何故アントワープにデビアスのサイト・ホルダーが集中し、また、研磨済みのダイヤモンドが再び集まるなどダイヤモンド産業の中心地として機能しているかといえば、他のセンターにない良さがあるからでしょう。
それは第一にデビアス社がイスラエルへの過度の集中が危険であることを悟ったこと。 (詳細は前述のユダヤ人国家イスラエルとデビアス社を参照願います。)第二に米国のニューヨークには独占禁止法をはじめとする規制がありダイヤモンドだけを特別に優遇してもらう訳にはいかないこと。 第三にインドなど他の場所にはインフラが揃っていないことが挙げられます。
アントワープ市場の特徴の一つは他のセンターが例えばニューヨークは大粒だが規模が小さいとかインドならメレが中心といった様に比較的特定の種類のダイヤモンドが中心に取り引きされているのと異なり、世界中からあらゆる種類のダイヤモンドが集まってくるので、さながら、ダイヤモンドの百貨店のような存在になっていることです。 そして、地場産業としての研磨技術の高さはダイヤモンドビジネスに携わる専門家の多くが認めています。
アントワープのダイヤモンド市場は重量で世界の原石の約 50% - 85% を扱い、中央販売機構( CSO )サイトの 45% - 50% がベルギーに割り当てられています。 また、アントワープは工業用ダイヤモンドの約 40% を取り扱っています。 世界の多くの研磨済みダイヤモンドがアントワープのダイヤモンドオフィスを経由しています。 大ざっぱに言えば、輸入原石の 85% は再輸出されますし、研磨済みダイヤモンドの約 80% は輸入されたものといえます。 しかしながら、25年前に 1万 9000 人いたベルギーのダイヤモンド産業に従事していた人々はイスラエルの台頭と一時期襲ったダイヤモンド価格の暴落やベルギーの高い人件費には勝てず、現在 4000 人程度に減ってしまいました。 当時全世界の三分の一を占めた研磨職人達も現在では 5% 強に減った訳です。 しかしながら、職人の数は減ったかも知れませんが、機械化の実現によりアントワープの生産性は逆に向上し、 1992 年には世界的な不況のさなかにありながら、約 6.5 - 7.0 億ドルの原石をアントワープが吸収しているのです。

HRD

アントワープのダイヤモンドビジネスの上で重要な役割を果たしているのがベルギー国内の全てのダイヤモンド関連団体を代表し、調整する非営利団体、日本でいう公社にあたる「ダイヤモンド・ハイ・カウンセル」(HRD)の存在です。 
HRDはベルギー・ダイヤモンド業界の総括団体として公認されており、四つのベルギー・ダイヤモンド取引所と全ての取引団体および労働組織を代表し、ホスト、スポークスマン、そしてロビイストとして活動しています。 
HRDの組織は次の通りです。

<総会>
最高政策決定機関で、各取引所、専門家団体および労働組合からの代表者で構成されます。 理事会のメンバーから選ばれた執行委員会は、ジェネラル・マネージャーの助力を得て、HRDを統括しています。 さらに執行委員会のメンバーから選ばれた4人は、ジェネラル・マネージャーの助力のもとで、経営委員会を管理しています。

<ダイヤモンド・オフィス>
ダイヤモンド全部門のために、税関の手続きや安全かつ迅速な輸送業務を調整するとともに、輸入および輸出の調整を行っています。

<鑑定書(保証書)発行部>
アントワープ大学と緊密な協力関係にあり、ダイヤモンド鑑定書(保証書)を科学的な方法で作成しています。 鑑定書(保証書)にはダイヤモンドの品質と特性をできるだけ正確に記載し、またそれぞれのダイヤモンドは匿名で検査されることで、完全に客観的な評価を保証しています。

<宝石学研究所>
アントワープの各大学と協力して、国際レベルの研修コースとダイヤモンドのグレーディングや宝石学についてのセミナーを主催しています。

<広報部>
ダイヤモンド市場に情報を提供するほか、国内及び海外市場におけるアントワープ・ダイヤモンドの販売促進支援活動を行っています。また、歓迎委員会やダイヤモンド科学技術研究センターの案内、記者会見、発表、ベルギー国内および海外での会議、セミナー開催や貿易使節団の派遣、世界の主な宝石見本市へのHRDの参加など、広範囲にわたる活動を行っています。

<ダイヤモンド科学技術研究センター (W.T.O.C.D.)>
HRDと提携して、新しい技術の導入など生産性と品質の向上のために研究を続けています。
これらの活動をつうじアントワープのダイヤモンド業界の地位の向上、健全化に貢献してきました。

<ダイヤモンドと工業用用途>





ダイヤモンドは硬度が高いために、宝石用だけでなく近代工業のあらゆる分野で
耐摩耗性の優れた工具として使われています。
実はダイヤモンドの用途は宝石用よりも工業用の方が多く、かつ重要であるとさえ言えるのです。
これは他の宝石とは全く違う側面です。


工業用ダイヤモンドとしてのもう一つの特徴は人造ダイヤモンドの生産がなされていることです。
工業用ダイヤモンドとして、もはや天然のダイヤモンドでは均質性その他の需要を
充分に満たすことが出来ない状況なので人造ダイヤモンドが生産されているのです。
この結果、人造ダイヤモンドの全てと天然産ダイヤモンドの大半は工業用に使われているのです。



ガラス切り

身近なところではガラス切りがあります。

レコードの針
レコードの針にもダイヤモンドが使われてきました。
針の先端は極度に正確に磨きあげられて、普通のLP用のものでは十七ミクロンの細さです。

研磨剤
ダイヤモンドは耐摩耗性にも優れているので、
微粉末にした研磨剤も大きな用途を持っています。
昔からガラスの彫刻や他の宝石の研磨に使われてきました。
光学用のレンズやコンタクト・レンズの研磨や金属面、
特に超硬合金の精密研磨などにも、不可欠の材料となっています。

研削砥石
消費量の多いのは、金属材料、磁器、ガラス、半導体などの加工に使う研削砥石用です。

錐の先端のビット
色々な材料の穴開け、石油井掘削などのボーリング材料や岩石の切断などにも使われます。
ハイウェイの表面の削り落としなどにも使われています。
ダイヤモンドのドリルは身近かな所では歯医者さんでも使われています。

掘削用のダイヤモンド・ヘッド
ダイヤモンドは万物のなかで最も硬い石、
あらゆる物に傷をつけることができるものとして知られていました。
工業用にダイヤモンドを岩石の掘削に用いる最大の理由はこの硬さにあります。
掘削用のダイヤモンド・ヘッドは大粒のダイヤモンドを鋼鉄製の土台に埋め込んだもので、
これを先頭に付けたシャフトを高速で回転させながら、岩石にあなを開けてゆきます。
これに用いるダイヤモンドは大体五カラットまでの大きな原石です。
大きさはあっても宝石にはならない茶色や黒色のダイヤモンドが用いられます。
イギリスとフランスを繋ぐユーロ・トンネルの掘削に日本から輸出された
特大の掘削機が活躍したことは記憶に新しいところです。

極細の金属線を作る工具
極細の金属線を引き出して作る工具もユニークなもので、ダイヤモンドが使われています。
これはダイヤモンドの結晶の中に特定の角度で開けた孔を通して、
金属線を一定の細さに作るためのものです。
正確さと摩耗に対する強度の点でダイヤモンド以上のものは見あたりません。
この細線作りは一秒に四十メートルという速度で行われるので、その摩擦に長時間耐え、
常に一定の精度を保つことは最上質のダイヤモンドにしか出来ないことなのです。
この様にして電気製品や電球のフィラメントに使われる様な細い線が出来るのです。

人工衛星の外部観測用の窓
1978年にアメリカが金星にむけて送り込んだ人工衛星パイオニアの外部観測用の窓には、
極度な高温に耐えた後も、計測ができるだけの透明度を持つ唯一の素材として。
13.5カラットの最上質のダイヤモンド製の丸窓が採用されました。

LS1(大規模集積回路)などの放熱板
2a型ダイヤモンドはの熱伝導性が優れていますから、
LS1(大規模集積回路)などの放熱板に用いられます。
半導体の性格を持つ2b型のダイヤモンドは
新しい半導体の材料として今後が期待されています。



今日、自動車、自転車、金属線、スクリュウなど殆ど全ての製品は
ダイヤモンドの助けを借りて製造されます。
冷蔵庫、トースター、ラジオ、テレビ、それから電球などあらゆる電気製品が
ダイヤモンドを使ったダイカストに依存しています。
このように現代の工業の多くがダイヤモンドの存在なしには成立しえないという
事実こそ直視しなければいけない点でしょう。




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