蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「これなんやろ?」展




「これなんやろ?」って、何の展示だと思うだろうか。
芦屋市立美術博物館では、今「童美展」を開催しているが、歴史資料展示室では 「これなんやろ?」展 をしている。
この展示の副題は、「ちょっと昔の生活道具」となっている。
大正~昭和までの時代の中で、日常生活に使われてきた道具類。
それらの道具を展示していた。
昭和40年代に幼年期を過ごした私にとって、懐かしいものが多かった。
豚のかたちがユーモラスな蚊やり豚。渦巻状の蚊取り線香も知っているが、棒状の蚊取り線香は知らなかった。
蚊帳はもちろん知っている。薄い緑色の網の中に入るのは、なんだか異界に踏み込むようで、ドキドキしたことを覚えている。
意を決して蚊帳の中に入り、外を見る。
うすぼんやりと見える外の世界は、また別世界に感じたものだった。
ハエ捕りリボンやハエたたき、噴霧器、しゃがみ式便器、手水器、湯たんぽ、火鉢、パン焼き器、電話機(ダイヤルを回してかける)、おひつ、リードオルガンなど、何となく記憶の片隅にあるようなものばかり。
さすがに炭火アイロンや七輪、手廻し計算機などは知らないが、生活道具が醸し出す時代の空気は満喫できた。

私が特に感銘を受けたのは、ハイトリックという名前の蝿獲器。
これは大正時代に使われた道具で、ねじをまわして箱の表面に見えている板を回転させるもの。この板に砂糖や酢などを塗っておき、ここにハエがとまると、そのまま箱の中に引き込まれるという仕掛け。
悠長な道具だなぁ・・・。
箱の表面に見える板には、花などの模様がかかれており、一見して蝿獲りの道具には見えない。
美術館の説明書きにもあるように、オルゴールに見える。

これらの道具を見ていると、昔はなにをするにもゆったりと時間が流れていたことがわかる。
現在は、電化製品が我々の生活を飛躍的に便利にしてくれた。
だが、せかせかと時間に追われて生きる今の時代は、ゆったりと物事を楽しみながら暮らしていた昔と比べて、本当に幸せなんだろうか。
昔の生活道具に中に込められた、生きる知恵と美しいものを愛でる気持ち、そして自然に対する畏敬の念は、ずっしりと私の心に残った。
いいものを見た展覧会だった。

2004年12月4日~2005年4月10日   芦屋市立美術博物館




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