この年
15になる娘は 二人おりました
ひとりは 村の長のひとり娘 琴音もうひとりは 綾乃と云う名の 身寄りのない娘でした
綾乃は 長の好意の元 琴音と姉妹同様に育てられなに不自由なく 暮らしておりました
しかし
色々と 物事がわかってくる年頃になると
『どうにかして この御恩に報いたいもの』
と 考える様になって参りました
龍神祭が近付くにつれ
村のあちこちで 薄ら寒い囁きが交わされる様になりました
『今年の人身御供は どうなさるおつもりだろう…』『よりによって 15の娘が 二人とも長の娘御とはのう…』
長が ふたりの娘を心から大切に思っていることを
村人たちも よくよく承知していただけに
その心痛は 察するに余りあるのでした