だいじょうぶか、夫


なんと5年ぶりだった。

長男が生まれるちょこっと前に、
ベイビーシャワーのパーティを開いて
もらった時以来だから。

夫の両親は、その頃から別居していて、
父親の方にはガールフレンドがいた。

だから、
ショックの癒えていない夫の母親の
ことを考えると、

父親とそのガールフレンドが仲良く
出席する集まりを、なんとはなしに
遠ざけてきた。

夫は男だし、何も言わなかったけど、
おんなじ思いだったような気がする。

けれど、
昨日のゲリー叔父さんの60歳を祝う会には、
夫も私もどちらともなく、

「行こうか」
という話になり、5年ぶりの再会と
あいなったわけ。

会場のレストランに向かう車の中で、
夫はブツブツなにかつぶやいている。

耳をダンボにして聞いてみれば、

ソニーとエレン、ミルドレットに
ゲリーとエルキー、ゲイルとラリー・・・

そう、自分の叔父さん・叔母さん達の
名前を「復習」している夫が居た。

おいおい、
私は5年前に「初めて」会った親戚だけど、
名前はみんな覚えているよ!

夫よ、アンタは30云年も親戚やってるのに、
いくら5年ぶりとはいえ、もういいかげん
「復習」はないでしょう。

「ねねっ、スティーブ叔父さんの奥さんて
なんて名前だっけ?」

だから、忘れるなってーのっ!(呆)

さすが、うちの夫は必殺健忘症、
身内の名前が思い出せない・・・、ってあのね、
ヤバクないですか?

夫よ、どうかボケないでください。

レストランに着くと、真白いシャツを着た女性が
夫を見つけるなり、ハグして挨拶した。

「元気そうね、」
「ああ、そっちも元気だった?」

なんてったって、5年ぶり、ああ感動の再会だ。

皆ひととおり話が済んで、席に着く。
すると、となりの夫が私の耳元へ顔を寄せる。

「ねねっ、さっきの女の人、誰だっけ?」

「ええっ、知らないで話してたの?(驚)
あれはテリーよ、デイビットの奥さんでしょ」

「ああ、そう」

「ああ、そう、ってアンタ、
私が訊くのは分かるけど、自分の身内の名前を
妻に訊くっておかしくない?」

夫よ、どうかボケないでください。

私は自慢じゃないが、1回会ったきりでも
ちゃんと名前を覚えている。

5年前、初めて会う夫の親戚だから、
ちゃんと名前ぐらい覚えておこうと思った。

緊張したけど、なるべくたくさんの人と話して、
私の名前も覚えてもらおう、そう思った。

しかし、この男(夫)に緊張という文字は無い。

向かいに座ったソニー伯父さんが、
「なんていう会社で働いているんだ?」と訊いた。

「・・・・・、う~ん、なんだっけな、ええと、」

「〇〇〇〇〇(夫の勤め先の名)だよ」
見かねた私、となりで助け舟を出してやる。

「ああ、そうそう、なにしろそこで働き出して
まだ2週間だからね、ど忘れ、ど忘れ」

って、もう働き始めて1ヶ月経つんですけど。

ソニー伯父さん、不思議そうに私達を見ていた。

夫よ、お願い、どうかボケないでください。



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