上生的幻想

上生的幻想

2007/04/06
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テーマ: 京生菓子(15)

春の水    こなし

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 糸状にしたこなしの清流をういろう餅の桜が流れている風情。
 観世水など水の流れを流線によって表すのは、京菓子の伝統的意匠(たぶん)。干菓子にもある。尾形光琳の紅白梅図屏風など琳派の意匠が源流なんだろう。

 そんなことよりも、これを見てふと思い浮かべたのは、古今集にあるつらゆきの歌(第二巻 春下 一一八)。



 風が吹き落とし谷川の水が運んでくるからこそ深山に咲く桜を見ることができる、という意味なんだけど、この歌を詠んだとき目に浮かぶのが、谷川の清流を流れてくる桜の花や花びら。まさに、この「春の水」のイメージ。そういうわけで、このこなしの銘は、「 みやまがくれ 」と改銘(勝手に)。
 こんなふうに何かを連想させてくれるのも、上生菓子のたのしさ。
 今日は自家消費だけど誰かに出すなら「みやまがくれ」という銘で出そう。

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 中は、粒あん。こなしは俵屋吉富さんにくらべるとやや固めで水分も少ない。日持ちも翌日までということ。意匠に凝っている分、こなしを固めにしているのだろう。俵屋さんのやわらかさだと糸状にしたらだれてしまいそう。くろもじで二つに割ると水の糸はぽろぽろと割れる。硬く水分がすくないせいで、舌触りはややざらつくというかパサつく感じ。もちろんざらつく、パサつくとといってもほんとにかすかで、気になるわけではないけど。
 餡はワイルド。ぽってりとした小豆感。小豆の皮もやや固め。ただ、ワイルドとはいっても仙太郎ほどではなく、ワイルドながら洗練度は高い。以前食べた鶴屋さんの「京観世」の餡を彷彿とさせる風味、洗練度、バランス。「つばらつばら」はこれよりもやわらかい餡だが、小豆の風味の残し方が同じ。ただ、「京観世」の餡のほうにより近い。
 (餡について言えば、俵屋吉富さんの餡が僕の好み。鶴屋吉信さんにくらべてより洗練されていて、上品、繊細、そして上澄みのような澄んだ風味。だが、しっかりと小豆の風味は保っている。また、粒あんだと皮に違和感がまったくない。皮の外の餡の部分と皮の中、つまり小豆の中身のかたさが区別がつかない)

 このハッカ飴を思わせるようなアイスブルーが、食べた後、こなしと粒あんではでは絶対感じるわけがない清涼感を運んでくる。こういうありもしない風味をなぜか感じてしまうのも、上生菓子の楽しみのひとつかな。
 

春の風    こなし

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 写真は光の加減で色が濃くなってしまっているけど、もうすこし淡い色合い。淡く、こなしのもともとの生成(きなり)のような色を感じさせてくれるはんなりとした紅色。花びらの先はもともとのこなしの色合い。へらをいれて花びらをかたどってある。
 一見、桃饅かなと見まごうが、チューリップ。
 それにしてもこのこなしは、造形的なインパクトが強烈。斬新で、はんなりとした紅にごっつりとした存在感。
 最近の和菓子の意匠の傾向として(和菓子だけではない、日本画にしても、陶磁器の絵付けにしても、着物の柄にしても)、妙に写実っぽいもの(写実と言うより、「写真」っぽいという方が適切か)をよく見かける。はっきり言って、写実っぽい意匠などサイテイ(さぼらないでしっかり意匠化してください)。いかに、ほどよく抽象化し、意匠化(し、「かわいく」と奥さんなら言うかも)するか。そこが意匠をつくる者の腕の見せ所のひとつ。このこなしはチューリップという洋ものの花を題材にしてるのに(そう、洋ものの花ほど写実的な意匠も多い)、こんなにもほどよい意匠化をしているところが、本当に見事で素敵。目に鮮やかで存在感もあり、一度見たら忘れられない。

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 中は白餡。こなしのかたさは、「みやまんがくれ」と同じ。白餡のかたさもこなしとおなじ。これもやはり俵屋吉富さんのようにやわらかく水分が多いと、ぼってり変形してしまうだろう。日持ちも同じく二日。
 白餡よりも、こなしが甘く感じる。白餡の爽やかさもこなしの方により感じる。

 ところで、銘の「春の風」。
 どうして、「春の花」じゃないのか? (花をさして「春の花」ではもちろん、下品すぎる。)
 奥さんの説、「チューリップといえばオランダ。オランダといえば、風車。だから」
 確かに、そんな感じだと僕も思う。
 僕なら・・・「春の枕」とかに。こんなほっこりしたチューリップの花を枕にうつら・・うつら・・・・
 でもこの造形的インパクトを的確に表現してるもっとぴったりな銘がどこかにあるはず。


 意匠では、さすが、という感じの鶴屋吉信。見るもののこころをすっぱりとらえる魅力に溢れている。
 一方、食べてハッとさせられるのは、あの滑らかさ、やわらかさ、あの触感の俵屋吉富。
 鶴屋吉信のは「生菓子」、俵屋吉富は「なまもの」、今回と「野辺の春」の回のについては、そんな違いがよく現れている。
 それにしてもこんな小さなものにぎゅっと詰め込まれている歴史と技と、楽しさ。
 やっぱり、上生菓子はよろし。

 一個 350円~(税抜き)


 訂正  俵屋吉富の「野辺の春」「菜の花」 も、一個350円~(税抜き)





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Last updated  2007/04/18 09:37:06 PM
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