上生的幻想

上生的幻想

2010/04/12
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テーマ: 京都。(6370)

IMG_6907.jpg

 舟形の器に入っているのが、向附。
 左から、ホタテ貝柱、赤いのがこしび鮪、うえの白いのが鯛。
 花弁人参と花弁百合根。

 さて、ホタテは適度な厚みに切って両面を炙ってある。少し焦げ目があった。中はレア。炙ることで水分が抜け、風味が濃縮され、また、表面はぽろぽろと繊維がほぐれ、中はしっとりねっとりして、とてもおいしかった。ただ、風味が濃縮といっても、その濃縮の仕方が、なんというか、綺麗。


 以前、お造りというのは、実は獲れたて、〆たてをさばいたものよりも、短冊にしたものを濡れ布巾につつんで数日から一週間ほど冷蔵庫に寝かしておいた物の方が、いろいろな旨みが出ておいしい、という話を聞いたことがあるが、まさに、そんな感じだった。

 たしかに、その分、獲れたてぴちぴちな「鮮度」といったものはなくなってはいるが、ホタテも含めてこの複雑で豊かな旨みは、やはり、ふつうにイメージする御造りとは別次元。
 これを食べると、いわゆる獲れたてぴちぴちの御造りは、水っぽく感じそうな気がする。

 そして、御造りに添えられてる・・・この「醤油」というのか、つまり御造りをつけて食べる「醤油」だけど、これも、「醤油」と呼ぶのをためらわれる風味。といって、出汁とか、そういうものでもない。

 昨日、ここの料理は上生と同じ方向性と洗練と書いたが、これを最初に感じたのは、実は、こっちの御造りの方だった。御造りそのものに、感じた。それも驚きだった。御造りなんて、料理の中で一番手がかかってなさそうな物。つまり、加工しようにもそんなに加工しようもないし、仕立てようもないと思えるものの風味に、そんな方向性と洗練を感じさせてくれるのだから。

 綺麗で、澄んでいて、丈高く、また、背筋をピンとして居住まいを正しているが、しかし、窮屈でも堅苦しくもない、また、ほのかにはんなり華やかだが決して出しゃばらない、そういった風情の風味。
 これは、すべての料理に共通していた。

 この風情は、町衆の美意識の利休、大名・武家の織部、公家の予楽院(前述のふたりとは時代は下がるが)、と並べてみると、明らかに、予楽院系の好みという感じだ。


 で、先附と向附を食べているとお酒が欲しくなって、燗酒を注文(一合)。

IMG_6908.jpg

 瓢型の器も何とも面白い。
 猪口は、丹波焼かな?
 ついでに器のことを言えば、どの器も、こけおどしや目先の派手さ、きらびやかさなどを排した、さりげないながら、たしかな、しっかりとした、それでいて風情のあるよいもばかりだった。

 お酒は、柔らかく、澄んでいて、綺麗、あたたかみがあり、滋味豊か、といった風情(澄んでいるとかあたたかいとか、清酒だから当たり前、燗酒だから当たり前、というそういうことではなくて、念のため)。ただ、どこか、ちょっとよどんだ感じがしないでもなかったのは、「伏見の酒」だからだろうか?
 確かめたわけではないが(と、これも聞きそびれた)、奥さんが「伏見の酒やね」と言ったのに、たしかにそうだとすぐに思えるような酒だった。
 とにかく、山水のわき水ではなく、京都盆地の地下を流れていって伏見で湧いた水、というイメージにぴったりくる姿をしていたのだ。
 高度の高いしゃんとした清冽な感じの水ではなく、柔らかく、滋味豊かな(これが、僕はなんとなく澱みというイメージにつながる)、そんな水からできているお酒。

 これが、また、料理にぴったり。
 柔らかく、滋味豊かな中に、ぴんと背筋をのばして居住まいを正しているが堅苦しさや窮屈さはなく、また、ほんのりはなやかという、料理に通じる要素をもっていたからだ。


                            つづく・・・








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Last updated  2010/04/12 09:09:50 PM
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