先ずは、この四国R-14はホラー的要素を強くしようという、 (おそらく藤村監督の)意図のもと制作されているので、とても怖い印象を与えるのですが、 私が考えるところ、本来の嬉野先生の書いたストーリーって、もっと違っていたように思えるんです。 「もっと人間的なつながりを感じさせる、 人と人との関わり方をメインにしたストーリーではなかったのだろうか?」 本当に訴えたかったところはこうだったのではないか。とあくまで推測で今回書きました。 途中で出てくる女性(幽霊)に関しても、 これは『もっと、もっと面白くしてあげられるよ』と言う大沼の ちょっとしたいたずらの一つだったのではないか? だから、途中から女性に関して、大沼が一言も語らなくなった…。 初めから四国のVTRはR-14で終わっていたのに、その続きも、初めはちゃんとあった。 すべて初めから、今まで騙され続けてきた大沼が起こした、いたずらなんだと…。 このように考えていくと怖くないんですね。 よく、「あの女性はなんだったの?」と言うコメントを耳にするんですけど、 このように考えながら、次のストーリーを読んでもらうと「どうでしょう」。 すご~く長いですけど、読んでくれるとうれしいです。 (あくまで、リカ☆彡的ストーリーですので「ちがう!」とか言っていぢめないでね)
タレント 大沼 陽 |
ディレクター 藤 木 |
ディレクター 上 島 |
編 成 部 小 宮 |
僕の母は旅が好きだった。だが、父は知らない土地に出向くのを面倒がり、
結局僕は家族と一緒に旅行に出るという経験も無いまま成長していった。
子供の頃から旅をするという習慣のなかったそんな僕が、四年というわずかの間に番組という名目で、
こんなに多くの土地を旅をするという事になるとは、思いもしなかったことだ。
それも、この年上の友人たちと。いい年をしたこの大人たちがどうやって僕を驚かそうかと知恵をしぼる。
「大沼君、次の旅は何処だと思う?」
「おいおい、藤木君、上島君、そんなに得意そうな顔で僕に聞くもんじゃないよ。
僕だってバカじゃないんだ。案外言い当てちゃうんだぞ。」
だが、始まりがあれば必ず終わりが来る。この番組にだって、いつか終わりの日がやってくるだろう。
だとしたら、番組のスタートと共に始まった僕らの関係も、番組の終焉とともに終わってしまうんだろうか。
それとも、四国の人の魂が死んだら皆あの石鎚山に集うように、
僕らもどこかで、また集うことはあるんだろうか…。
半年前、四国でのR-14(ロールジュウヨン)の「円城寺金剛院での映像が映っていない」という怪奇現象があった。 その時は映っていなかったと言うことで番組もスタッフも納得していた。 …が実は、映っていないはずの映像は、撮影後映像確認をした藤木が消去していたのである。 「おい、上島。おまえカメラが回っていたのに何も映っていないということがあると思うか?」 「おもわないよ。でもお前確認したじゃないか。そしたら何も映ってなかったって…」 映っていたのだ。そこには暗いお堂の前に立っている大沼の足に絡まる無数の手が絡みついていたのだ。 「なあ上島、もう一度行ってみないか、四国。もう一度あの寺に行って何が起こるか確認をしたいんだよ」 「…うん、行ってみようか…」 ちょうどその頃、局宛に視聴者から妙な写真が送られてきた。大沼の写真である。 半年前、四国へ向かう大沼を空港で写したものらしい。 その写真には……大沼のあるはずの片足が写っていないのである。 あの怪奇現象の原因は大沼にあるのではないのか、藤木はそう踏んでいた。 「もう一度、四国へ行こう。アイツを連れて三人で」
大沼を呼んで四国行きを伝える。 「何で、また四国に行くの?」と大沼は怪訝そうだった。 「いやなの?」 「いやだよ、当然でしょ。またお遍路とかするわけでしょ」 結局、大沼には四国のパブリシティものだから、ということにして無理やりOKをとった。 次の仕事があると言って切り上げた大沼の、帰り際、 振り返って二人を見つめる大沼の寂しげな表情に気づくものは誰もいなかった。
空港にて、大沼と待ち合わせる。四国に到着し我々は旅館で夜になるのを待った。 大沼には、ここにきた本当の理由を何も知らせてはいなかった。 だが大沼は気づいていた。大沼がきりだした。 「なんで、俺に一言も話さないんだ。パブリシティも嘘だろ。何で俺を四国に連れてきた!」 一呼吸置いて、 「…行くんだなあの寺に、行くんだろあの寺に!。」大沼の目が二人を見つめる。 「だったらもっと早く言ってくれよホントの事を。ずっと待ってたんだぞ俺は。 あんたらがいつホントのことを言ってくれるのかって。」 「だって、言ったらお前怖がると思って…」そう、藤木は言えなかったのだ。 「怖いよ、でもこの写真見てみろ、ここに写っているのは俺だぞ、写っていないのは俺の足だ! これは俺の身に起こった現実なんだ。だからあの寺に行って何か手がかりが掴めるんだったら行くよ。 だけど、俺を蚊帳の外に置くのはやめてくれ。俺をダシにするのはやめてくれ。これはおれ自身の問題なんだぞ!」 と本音をぶつける。 「いや、あの時あの場所にいた俺たち3人の問題だ…」上島はそう答えた。 少し考えてから大沼は口を開いた。 「…よし、いくぞ…。俺がお遍路服を着てあの寺へ行けばあの時と状況は同じなんだな」
そして3人はまた、この場、円城寺金剛院にたどり着いたのだ。 大沼は、確認するかのように、「ああ、ここだ…」とつぶやいた。 そして、半年前と同じ状況で撮影を開始した。今度は何があってもまわし続けることを約束して。 そしてその時は来た。同じようにアラームがなり、ライトが切れたのである。 「女性がいる…」大沼がつぶやいた…。「こっちを見ている…」と。 3人はいてもたってもいられなくなり、すぐに車に戻り、車を出発させた。 「俺たちは帰るぞ!絶対に帰るぞ!札幌に帰るぞ!」大沼が叫んだ!大沼の本心だったに違いない。 その後、旅館に戻りVTRを確認すると、そこには境内の映像の他に、まったく別の場所がまざって映っていたのである。 どこかの交差点であった。 結局何も解決しないまま、3人は朝一の便で札幌へと帰ることになった。 飛行機の中、疲れて寝ているディレクター2人を見て、大沼は一人ホッとしたように笑みを浮かべていた。
局に戻りVTRを確認していた藤木が、「この場所見た事あるぞ」と言い出した。 「デジャブじゃないのか?」という上島に対して「お前も一緒にいたぞ」と。 脇にいた大沼は、「藤木さん、この場所知ってるの?何処だかわかるかい?」と藤木の方をのぞきこんだ。 少し嬉しそうでさえあった。 ディレクター班がロケに言ったと聞いた小宮が、話を聞きに来た。 小宮は尋ねた。「で、どこに行ったの?誰と?」藤木は応えた。 「俺たち2人と大沼です」そう言ったとたん、小宮は顔色を変えて部屋を出て行った。 翌日編集室に行った上島が異変に気づく。四国のVTRがR-14までで終わっている。 あれだけあった旅の土産、グッズもなくなっている。大沼に連絡が付かない。 疑問を持ちながらもVTR整理をしていた上島が、一本のOAテープをたまたま見つけ、全てを知ってしまう。 思い出してしまったのだ。 大沼は、半年前、四国での怪奇現象のあと、VTRにまぎれて映っていたあの交差点で、 交通事故をおこし即死だったのだ。あっというまの出来事だった。 「大沼は死んだんだ…なんで思い出したんだろ俺、ずっと忘れていればよかった…大沼…。」 「そうか…大沼は俺たちに会いに来てくれていたんだ…。藤木…アイツはもういないんだ…」 上島はそう言って、藤木のもとへと走った。
編集室のドアを開け「藤木!」と叫ぶ。 「おう!上島、わかったよ、この場所。円城寺の次の場所へ向かう時にこの場所通ったじゃないか。 やっぱりお前も一緒にいたじゃないか。」 「でもさぁ、その先が思い出せないんだよなぁ」 といっている脇には大沼が座っていた。…だが、藤木には見えていないようだ。 大沼はこちらを向いて、少しさびしそうに… 「上島さんは、その先のことを…もう知ってるんだよね。そのあと俺がどうなったのか、思い出してくれたんだよね。」 「どう?面白くなってきたでしょ。もっともっと面白く出来るよ。もっともっと面白くしてあげられるよ。 だからさ、上島さん。みんなでまた一緒に旅に出ましょうよ」と…。
始まりがあれば必ず終わりが来る。 この番組にだって、いつか終わりの日がやってくるだろう。 四国の人の魂が死んだら皆あの石鎚山に集うように、 僕らは…やっぱりこの番組に集い、一緒に旅をするんだろう…。
ぼくの奥さんがこんなことを言いました。 霊はね…会いたがっている人がいるから会いにくるの… それを聞いてぼくは 幽霊とか怖くなくなりました。 だって大泉くんが本当に死んじゃって 会いに来てくれたら うれしいに決まっているもの。 そんなことを思いながら、 ぼくはこの物語を書いていました。 嬉野雅道