■『ライナス』


イナダ組「ライナス」  (2003年 第26回公演)


STORY
 竜一(音尾琢真)は一人娘(山村素絵)と妻(出口綾子)と暮らす、平凡なサラリーマン。
 新聞で読んだタイムカプセルの記事をきっかけに、忘れかけていた過去の記憶を辿ることになる。

 思いだしていく子供時代の中にいたのは、暴力をふるう母親(棚田佳奈子)、
 自分の事しか考えていない姉(小島達子)、
 そして自分達を捨て、女性として生きる事を選び、恋人(森崎博之)と暮らす父親(大泉洋)。

 幼い竜一(江田由紀浩)の心のよりどころは、古ぼけた一枚のブランケットだった。
 竜一は気持ちの離れてしまった家族や、しまっていた過去にもう一度向き合う決心をする。
 主人公が7年振りに逢った父親は母親になっていた。

 その父親ハル(大泉)が経営するバーで歌う歌と、その恋人テツヤ(森崎)が歌う二曲がイナダ組オリジナル。


私・的・感・想


今回のこの舞台、みなさんご存知の通り、大泉洋氏、おかま役をやっています。
大泉洋氏演じる「ハルちゃん」もいいんだけど、この舞台キーになっているのが江田くん。
音尾琢真氏演じる「父親役」の子供時代を演じています。

タイトルからも分かるように、スヌーピーのライナスがいつもタオルケットを持っているよね。
アレがこの舞台と大きな関係があります。
この江田くん演じる子供時代の竜一も、常にタオルケットを持っています。
このライナスも、情緒的なイナダワールドが繰り広げられていて、
面白いんだけど切ない、最高に素敵な舞台です。(今のところイナダ組での私の好きな舞台のNO.1なんです)


この中で音尾氏は江田くんと共に主役をやってます。
この話は、音尾氏演じる「父親役」が昔、母親から虐待を受けていたことにより、
その時の記憶を無くしてしまっている。
それを思い出してしまう、ほんの1日の出来事がこの舞台の大半を占めているのですが
その中での音尾氏が、妙に印象に残っています。

演出上、うまいと思ったのは、 大人の音尾氏と子供時代の江田くんの台詞のユニゾン。
これがあることによって、子供の時の思いと今の大人の竜一の記憶が一致した瞬間が
明確に分かるんです。

竜一は記憶を取り戻す前から、普通の家庭のちょっと口うるさい父親なんです。
記憶を取り戻した後も、普通のちょっと口うるさい父親には変わりはないんです。
見た目は何も変わりないのに、でも心の中だけが変わっている演技。
あの演技にはこみ上げてくるものがありました。



この舞台で、 森崎氏は、わりと今までにない、穏やかで、優しくて包み込んでくれる男性の役をやっています。
でもね。そう言うと、聞こえはいいんだけど、でも実はずるい男だと思う。
要はちゃんと奥さんがいて、で恋人のハルちゃんがいるわけです。ハルちゃんは浮気相手。
そのハルちゃんとわかれるから、「そろそろ、子供と一緒に住みなよ。」と持ちかけたのです。
ハルちゃんの寂しさにつけこんで。でも結果的にはそれがもとでいい結末になったんだけど。


そして、大泉洋演じる「ハルちゃん」これは、文句なしにうまい!おかま役!
笑い事ではなくて、本当におかまの切なさがひしひしと伝わってくるんですね。
途中で、泣き崩れるシーンがあるんですが、その姿は本当の女性の様です。
最後に大人になった竜一と電話をするシーンがあるのですが
ここのシーンは心が痛かったです。



■関連日記/ 2005年11月01日 2006年01月15日


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