August 19, 2004
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      見たことがある気がする

       来たことがある気がする


     遠い昔に 出会ったことがある気がする



           ***





旅行に行ってきた。
以前日記に書いた、高校からの親友との旅。

ジーンズにスニーカー。
お菓子が沢山入ったボストンバッグを持って、



とにかく笑いすぎた。
はしゃぎすぎた。
腹筋が引き締まったような気のする旅だった。
まず、荷物を置いてから、草津の湯畑に出ようということになり、
ホテルへ向かう。

地図には”徒歩10分”とあるのに、30分は歩いた。
途中、「あ、ここかな?」と思い近寄ってみると友人が一言、
「ねぇ、でもライオンのマークじゃないあれ?」
ライオンズマンションだった。

何度も建物を間違えて、やっとついたB級ホテル。
うーん、これはホテルか?

代理店で予約をしたときにお世話になったミスタービーン
(日記参照)の顔が、「ホテルはどんな感じですか?」と
私達が尋ねたとき、一瞬くもったのを私は見逃さなかった。笑。
やっぱりあの一瞬のくもりは間違いじゃなかったんだ。笑。

一日目は草津をめぐり、ホテルへの道にあるセブンイレブンで



私達は、高校3年生、受験期に初めて同じクラスになった。
スパルタ学校だったので勉強には厳しいものがあったが、
学園祭やその他行事ではまっさきに腕を振るう私達は
めぐりあわせのように意気投合した。

授業中に、よく手紙を書きあっていた。
先生が黒板のほうを向いている間に紙飛行機にして飛ばす。

そのスリルは今でも思い出すことができる。
内容は、勿論、ほとんどが恋愛だった。


当時私が彼女に渡したり飛ばしたりした手紙を、彼女は今も
全部持っている。
彼女自身、とっておいたという記憶はなく、以前部屋を
大掃除した時に、束が出てきて、読み返すとなかなか面白い
ので、とっておこうと思ったそうなのだ。

彼女はその束を持ってきていた。
よくもまぁ、こんなにもよく、先生の話も聞かずに手紙を書いて、
実らない片想いにうつつをぬかしていたものだ。

読み返しながら、その頃のあまりの純粋さ、まっすぐさが
滑稽で、滑稽すぎて、私達は沢山笑った。
でもお互いにそんな中でも、今は忘れかけているような何かを
悟り、お酒も手伝って随分感動した。

なんというのだろう、まったく根拠がなくても、
保証がなくても、何かを本気で信じることのできる自分が
そこにはいた。

そして、日々を暮らすというただそれだけのことに、ものすごい集中力をもって臨んでいた。

もちろん、無意識に。
すごく馬鹿みたいなんだけど、すごく羨ましい。
そんなことを、過去の自分に対して思ったのだった。


その後は、部屋を暗くして懐中電灯で遊んだり、おしいれに
入ってドラえもんごっこをしてみたり、
24歳らしからぬ遊びをしながら、
今のお互いに関する沢山の
話をして、気づかぬうちに眠りについた。

ほんとうの友達というものは、言葉でも表情でもない何かで、
ほとんど全部のことを、一瞬で掴み取ってしまうものだと思う。
嘘のつけない世界だ。
なんていうのだろう、何かを話したくて、話そうとして、
話し始めて話し終わるその少し前には、胸の奥をきゅっとつか
まれたような気持ちになっている。




翌日は軽井沢。
何度きてもかわらない街並みなのに、
毎回違った表情を見せるなぁと思う。
多分、一緒にくる人によって違ったりもするのかもしれない。

軽井沢銀座を歩く人たちの顔が好きだ。
この一本道を歩く人たちは、もう絶対に、素敵な顔をしている。
ときめいていて、ビタミンカラーだ。

顔の部分だけあいたモナリザの描かれた看板に、犬がよじ登って
顔を出している姿に、周りの人たちはみんな笑っていたのだけど、
あとからきてそれを見てふいに大笑いしはじめたおじさんが
いて、
私はそのふいの笑顔にふと見とれた。


人が無意識に見せる表情を見つけたとき、それがどうしようもなくいいものに思えてしまう。 小さな秘密を見つけたような、
そんなちょっぴりわくわくする気持ちだ 。


”ねぇ、私、嬉しくて、楽しくて、ちょーーーーーー、
 シアワセ”
私はたまらない気持ちで、そう友人に叫んで高台から飛び降りた。



軽井沢銀座に、似顔絵を書いてくれるおじさんがいる。
私は前回ここを訪れたときに、描いてもらいたいとすごく思って
いたのだけれど
その時は一日の予定がたてこんでいて時間がなかったので、
今度来た時はきっと描いてもらうんだ!と思っていた。 


そのおじさんが、いた。
本当に、あの日と変わらないおもかげのままに、そこにいた。
私は一目見て、あのときのおじさんだ!と分かった。
胸がどきどきした。

友人と駆け寄り、早速描いて貰う。
”若干、目をぱっちり描いておくね”とおじさんがいい、
”やったー!”と私が言うと、知らぬ間に私達の周りに
集まっていた他のお客さん達が一斉に笑った。

”あら、きづかないうちにこんなにお客さんが集まった。
 あなたたちは福の神だね!”

そんなおじさんの言葉にまた笑い、私達はすごく似ている
似顔絵を胸に、その場をあとにした。


なんだか、変わらない姿でおじさんがそこにいたことが、
あまりに嬉しすぎた。
私はここに数年ぶりに来たけれど、
私が東京で、
進路に悩んだり会社へ行ったり恋をしたりしている間にも、
おじさんはこの場所で毎日誰かの顔を描き続けていて、
そして今日今この時間にもここにいた。いてくれた。
ただそのことに、ありがとう、
いてくれて、ありがとうと思ったのだった。





日々、ふと思う。
私達は毎日、それぞれの場所で、生活をしていて、
私達の家族や友人や知り合いやあらゆる人たちも、
それぞれの場所で、それぞれの生活をしてる。

私達の世界というのは私達から見える範囲のことで、
視界にいない人たちの生活を、当たり前だけど私達は
リアルタイムに見ることができない。

時々、見えない場所で起きている全てのことが、
信じられないような気持ちになる。
出来事というのは全て、自分の視界に入ってきて初めて
現実になるのじゃないかという錯覚にとらわれるのだ。

おじさんがあまりにあの時と変わらない姿だったので、
あぁきっとおじさんは、私達がここにきたからここに現れた
のだ、
そんなことを思った。


ここまで書いてきて、なんだか私の言葉で文章にしたら
あまりにチープになりすぎてしまうような気がし始めた。


***************


東京は暑い。
新幹線を降りた途端、現実に帰ってきたような気持ちがした。
旅行前日までのお互いのはしゃぎっぷりが、脳をかすめる。
たったの一日なのに、もう随分家をあけていて、
会社の同僚や家族ともうずっと会っていないような感じがした。


そんな旅の帰り道、夕飯を食べていこうということになり、
とあるお店に入った。
そこで私が一目で惹かれたカクテルがあった。
澄んだ水色で、底のほうが黄色いマンゴー色。
どこまでも透明な水色の海の底に、
ぱっとランプのように珊瑚礁が咲いてるよう。
水色と黄色の間には、透明な空間。
ほろ酔いのお客達がざわめく店の中で、そのグラスの中だけは
いつまでもどこまでも、深遠で、静かなのだった。


そのカクテルの名前も、うっとりするような綺麗さだった。


二杯目のビールを注文しようとする友人をよそに、
私はどうしてもそのカクテルが気になって注文した。


そのお店でも、帰りの電車で死んだように疲れていた私たちは
たちまち生き返り、
他愛ない話を延々とし、
ああ、気の置けない友人との本当に楽しくて楽しくて
たまらなかった旅を思い、シアワセをかみしめている
ほろ酔いの私を、一抹の切なさがふいにおそった。



なんだかその一瞬に、
昨晩ふと目がさめたら雨がざあざあ降っていて、
朝になったら晴れていますようにと祈っていたこととか、
夏が終わっていくんだなぁという予感や、
目の前にあるシーザーサラダのレタスがしんなりしているさまとか、
退院したとある友人のこととか、

そんな私をとりまいているあらゆるものがギュルっと音を立てて
私の中を逆流したような気がしたのだ。


ただ夏が終わっていくだけなのに、
偶然ヒトの形をしてここにある事のあまりの短さを思った。
そしてその次の瞬間のまたたく間に、
とてつもない落胆と浮上をいっぺんに味わったような気がした。




思えば、夏の終わりはいつも似ていて、いつもすごく
違っていた。


確か去年の、もうすぐ九月というある日。
私は交差点で自転車を止めて、赤信号が変わるのを待っていた。
風が強くて蒸し暑くて、息苦しいような夕方だった。

急にごろごろとイナビカリがして、ざぁっと雨が降り出した。
そばにいた多くの人たちがいっせいに「ほおっ」と言って
空を見上げた。
私は驚きながらも仕方ないまま、ぬれるごとに重くなる
ワンピースを体に張り付かせて、自転車をこいだ。

みんなが屋根の下にかけこみ、スーパーに駆け込み、走っていく。
その光景といっしょに、夏がものすごい速さで、
さよならを告げていくような気がした。

思えばあれが去年の、夏の終わりだったのだ。




本当にそのカクテルは、せつない色をしていた。
なんだか何が嬉しいのか悲しいのかわからないままに、
私は日焼けしてほてった顔を潤ませていた。
海のような青さが性懲りもなく恋しくなってカクテルを
見つめる私。
多分今年の夏の終わりは、今なのかもしれないと思った。



多分いろんなものを得て、多分そのかわりにいろいろなものを
手からこぼれ落としながら歩いた夏だった。
けれど今年も、ひとつの季節が終わって次の季節が歩み寄って
きていることに、気づくことができた。

寒く冷たい冬が終わり春が訪れる頃に、日々だんだん増えていく
金色のつぶつぶを空気の中に見つけられたように。



多分まだ私は、大丈夫なのだ。
理由もなく、そんな気持ちがして急に勇敢な気持ちになって、
海を全部飲みきってもう黄色い部分だけになったグラスを片手に、
私は屈託なく笑った。











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Last updated  August 19, 2004 11:34:30 PM
コメント(8) | コメントを書く


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Re:琉球珊瑚(08/19)  
yukina♪  さん
いいお友達ですね。
授業中の手紙まで残して持ってきてくれているなんて。
素敵です。
カクテルの名前が琉球珊瑚?
飲んでみたいです。
ともみさん、素敵です。
(August 20, 2004 01:17:48 AM)

Re:琉球珊瑚(08/19)  
千佳りん  さん
仲良しのお友達と素敵な旅を
されたのですね。
楽しい想い出がたくさん詰まった旅
でしたね。
日記も小説を読んでいるように
とっても素敵でした。 (August 20, 2004 07:46:19 AM)

Re:琉球珊瑚(08/19)  
APD  さん
tomomiさんの日記たのしい!

希望いっぱいのやや上向きの顔が頭に浮かんできます。

こっちも元気になります。ありがとう。 (August 21, 2004 02:08:09 AM)

Re:琉球珊瑚(08/19)  
nachugirl  さん
お久しぶりです^^お元気でしたか?

TOMOMIさんも素敵な旅行してきたんですね。
NACHUも就活そっちのけで自分の好きな事してて、
そろそろ私の夏休みも終わりかな、って思ってます。

TOMOMIさんが今年を振り返ったように、私はちょうど大学4年間を振り返っていました。
私、結果的に後悔のない4年間を送れたみたいです。

来年から何をしてるのか分からないし、なんか行き当たりばったりな人生送ってるけど、
それでもなんか同じこと思います。

私はまだ大丈夫だ、って。

頑張りましょうね^^ (August 22, 2004 04:27:29 AM)

Re[1]:琉球珊瑚(08/19)  
Tomomi1979  さん
yukina♪さん
>いいお友達ですね。
>授業中の手紙まで残して持ってきてくれているなんて。
>素敵です。
>カクテルの名前が琉球珊瑚?
>飲んでみたいです。
>ともみさん、素敵です。
***********************************
そうそう!そうなんです!カクテルの名前が、琉球珊瑚だったんですよー。気づいていただけて本当嬉しいです。
でも実はこのカクテル、というか飲み屋さんは、チェーン店ですよ!とっても有名でどこにでもある 笑

(August 22, 2004 11:54:41 PM)

Re[1]:琉球珊瑚(08/19)  
Tomomi1979  さん
千佳りんさん
>仲良しのお友達と素敵な旅を
>されたのですね。
>楽しい想い出がたくさん詰まった旅
>でしたね。
>日記も小説を読んでいるように
>とっても素敵でした。
*****************************************
千佳りんさん、おひさしぶりです。
千佳りんさんみたく一日一日を素敵に重ねるように、このたびも一瞬一瞬を素敵に重ねることができました。
そんな気持ちをこれからも忘れずにいたいです。
(August 22, 2004 11:55:41 PM)

Re[1]:琉球珊瑚(08/19)  
Tomomi1979  さん
APDさん
>tomomiさんの日記たのしい!

>希望いっぱいのやや上向きの顔が頭に浮かんできます。

>こっちも元気になります。ありがとう。
***************************************
楽しんでいただけで嬉しいです。有り難うございます。
本当に楽しい気持ち、嬉しい気持ちも、言葉で伝えるって本当に難しいものですよね。いつもそんなことをもどかしく感じながら、書いています。
(August 22, 2004 11:57:02 PM)

Re[1]:琉球珊瑚(08/19)  
Tomomi1979  さん
nachugirlさん
>お久しぶりです^^お元気でしたか?

>TOMOMIさんも素敵な旅行してきたんですね。
>NACHUも就活そっちのけで自分の好きな事してて、
>そろそろ私の夏休みも終わりかな、って思ってます。

>TOMOMIさんが今年を振り返ったように、私はちょうど大学4年間を振り返っていました。
>私、結果的に後悔のない4年間を送れたみたいです。

>来年から何をしてるのか分からないし、なんか行き当たりばったりな人生送ってるけど、
>それでもなんか同じこと思います。

>私はまだ大丈夫だ、って。

>頑張りましょうね^^
*******************************************
なっちの旅日記、よんだよ~。
うんうん、大丈夫って思える限り、大丈夫なんだよね。
根拠も理屈もなく、そう思った。

北海道に行きたい!
(August 22, 2004 11:57:58 PM)

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はじめ@ おっつー なんか一人暮らし満喫してるみたいだね! …
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