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鑑識 米沢守の事件簿



昨年劇場版も大ヒットした「相棒」シリーズのスピンオフ作品が登場。今回の主人公は、杉下右京と亀山薫の特命係コンビの活躍を描く「相棒」のレギュラー陣の中で、高い人気を誇る警視庁鑑識課課員・米沢守。六角精児演じる米沢は、何かと敵の多い特命係コンビにとって、科学的な見地から事件をサポートしてくれる心強い味方である。

物語は昨年の劇場版と連動している。東京ビッグシティマラソンを狙ったテロ事件解決後、米沢はマラソン参加者の中に元妻・知子の姿を発見する。やがてこの女性が自宅アパートで、死体となって見つかった。米沢が現場に向うと、彼女は同名で瓜二つの別人で、しかも千束署の刑事・相原の元女房だった。因縁を感じた米沢は、自殺と断定された女性の死因を、相原と共に調べなおしていく。同じ名前と顔の元女房を持つ米沢と相原が、新たな相棒コンビとなって事件解決に乗り出す作品である。

今回の米沢は刑事のふりをして聞きこみ調査も行うが、あくまで冷静で理詰めの彼に対して、相原を演じた萩原聖人は完全に直情型。その冷静と情熱の対比が面白いが、長年かけて熟成してきた米沢のキャラクターと組むには、相原の感情だけでひた走る人物像がやや薄い感じがするのは否めない。それでもシリーズのファンには街頭でギターの弾き語りをする、米沢の知られざる私生活の一端が拝めるのが嬉しいだろうし、お馴染みのレギュラー陣も端々に出演してサービス・シーンが満載。本家の「相棒」とは違った遊び心がちりばめられていて、肩の力を抜いて観られる映画である。事件のほうは死んだ女性が働いていた会社の内部に焦点が絞られていくが、その社員たちは市川染五郎、片桐はいり、伊武雅刀など、クセのある俳優揃い。何度も苦境に立たされながら、米沢は鑑識課課員として物証で、相原は元女房への愛情と信頼というメンタルな面で、その壁を突き破っていく姿が描かれる。

苦言を言うならベテランの長谷部安晴監督の演出に、いささかルーズな設定描写があることだろう。TVの2時間サスペンスであればお約束の、都合のいい人物配置とドラマ展開が、特にクライマックスで見られるのはいただけない。それでもトータルには、主役メンバーは違っていてながら「相棒」を観た感じがするところに、このシリーズが持つ強みと面白さがある。スピンオフもいいのだが、本家「相棒」の劇場版第2弾も、そろそろ始動して欲しいものだ。

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