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さすらいの天才不良文学中年
ベテラン新人発掘プロジェクト 公募新人賞 黒瀬ゆか
皇帝の使者来たらず
おいらのミステリー作品が「オール読物推理小説新人賞」二次予選を通過していた(9月22日発売「オール読物10月号」誌上)が、昨日発売のオール読物で最終的に落選が判明した(「同11月号」誌上)。
559作品の応募中、1次予選通過は116作品、2次予選通過は35作品、最終候補は6作品。不良文学中年も2次予選通過までは健闘したが、最後矢尽き、刃が折れて、討ち死にである。まあ、しかし、おいらとしては良くぞここまでやったということで、取り敢えずは自己評価、殊勲乙。
処女作で入選するほど世の中は甘くはない。今回の落選も想定内だと思えば気が楽だ。それよりもあの栄えある「オール読物推理小説新人賞」の2次予選を通過させて貰っただけでも、考えようによっては、立派な勲章だ。今後のおいらの投稿履歴には、堂々と「オール読物推理小説新人賞2次予選通過」と書くことが出来るからだ。
これからと言えば、リベンジしかない。既に、満を持した次作を他の新人賞へ9月末に応募済みで、引続き二の矢、三の矢を射るつもりでいる。心の切り替えが重要なのは、スポーツの世界だけではない。幸い、書くことが苦にならない性質である。再び好きな書き物三昧に没頭してみよう。中高年の星として、これからも自由気儘に生きながら、世の中に新風を送るつもりでいる。
皆様これからもよろしくご指導ください。
人生のポイントカード
人生にもポイントカードがあるのだろうか。
精進して、努力して、しかし、すぐには結果がでないとしても、今日頑張った分はこのポイントですよと、人生のポイントカードに判が押されているのだろうか。
答え。
「頑張りは 誰かが見てる すぐそばで」(作者不詳)
人生にもポイントカ-ドはあるのだと思いたい。だから、誰であってもいつの間にか人生のポイントは貯まっている。
それは、おいらの場合、例えば、作家修業というポイントであり、今年は「城山三郎経済小説大賞」の予選通過である。
このポイントが貯まって一定の点数に達したときに、堂々と作家と名乗ることができたり、文学賞を受賞することができるのだと思う。
人生のポイントカード、おいらは大切にしたいのぅ。
本格ミステリー「ベテラン新人」発掘プロジェクト(その1)
本格ミステリー「ベテラン新人」発掘プロジェクトとは、推理作家である島田荘司氏が提唱し、講談社が主催するプロジェクトである。昨年の12月に発足した。
おいらにとってこの話しの発端は、読売新聞を見た友人が「柚木さん、60歳以上に限定された公募小説が募集されていますよ」というものであった。
当初、おいらは、また、老人を食い物にする自費出版やセミナーもどきが開催されるのかなぁと思っていた。つまり、聞き流したのだが、たまたま読売のネットを見ていたら、講談社の名前が掲載されているではないか、オヤ~と思ったのである。
こりゃ、まともだわ。
講談社のHPを開けてみると、大きく取り上げられている。
「定年された皆様! 長い社会経験を通じて培われた才能をミステリー小説の創作に活かしてみませんか。講談社は日本のミステリー界を牽引してきた島田荘司氏とタッグを組んで、ミステリー文学界を震撼させるような60歳以上限定の新たな才能を発掘するプロジェクトを推進します」
そうして、今年の1月15日(土)14時から講談社で説明会が開催され、ネットでの申込締め切りは1月7日までだと云う。
年末に申し込んだのは云うまでもない。
さて、1月11日に講談社から次のメールがおいら宛に入った。
「本格ミステリー「ベテラン新人」発掘プロジェクト説明会のお知らせ
この度は本格ミステリー「ベテラン新人」発掘プロジェクト説明会にご応募いただき、ありがとうございます。つきましては下記の要領で説明会を開催いたしますので、ご案内申し上げます。
当日は、このメールをプリントアウトしたものをお持ちになるか、またはメール画面を受付にてご提示下さい。
●日時
2011年1月15日(土) 14時~16時半
●場所
(株)講談社 本館6階 講堂
東京都文京区音羽2-12-21
最寄り駅:東京メトロ有楽町線 護国寺駅 6番出口徒歩1分
*6番出口を出て、本館(古いほうの建物)南口、正面向かって左側よりお入り下さい。
●講師
作家:島田荘司
以下、略」
お~、当日が楽しみじゃのぅ(この項続く)。
本格ミステリー「ベテラン新人」発掘プロジェクト(その2)
当日、午後1時半に「有楽町線」護国寺に到着した。護国寺駅の6番出口を出る。
講談社の中央の門に案内役の男性が立っている。親切に会場を説明してくれる。その門から構内に入り、左手に進んで同社の横にある入り口から中に入った。
受付で講談社から来たメールを提示し、入館証と書類を貰う。そのまま直進し、左側にあるエレベーターに乗車する。ここでもエレベーターのボタンを押している、案内役の男性がいる。
最上階(6階)に到着するとそこは講堂であった。1列7名の席が3列あり(21席)、奥行きは13席である。
21席×13席=273名が座れる勘定である。
半分位の混みようだろうか。おいらは前から4列目に座った。
周りを見渡すとほとんどが男性である。女性もいるが、1割程度か。そう云えば、自転車(ママチャリ)に乗って来ている女性もいた。
中央に演壇があり、演壇の後ろには講談社の社旗が掲げてある。
左右には講談社の始祖である野間夫妻だろうか、肖像画が飾ってある。
1時50分現在、4分の3程度の収容である。少し混み合ってきた。これだと優に200名は超えているだろう。
受付で貰った資料を取り出して読むと、今回の公募小説の締切が7月中旬とある。
これで、2時から3時まで島田氏の講演、30分の休憩をはさんで3時半から4時半まで質疑応答とあるが、公募の説明だけで時間がそこまで持つのかなぁと素朴な疑問がわく。
講堂前方の左側に司会者の席があり、司会のHさんが立ち上がった。いよいよ開始である(この項続く)。
本格ミステリー「ベテラン新人」発掘プロジェクト(その3)
いよいよ島田荘司氏の登壇である。
驚いた。実にダンディである(島田先生、驚いちゃってごめんなさい)。
全身を黒っぽい姿で固め、長髪。サングラスっぽい眼鏡。声は低音で、ゆっくりとした口調。もてるだろうなぁ。こりゃ、イメージと違うなぁ(島田先生、ごめんなさい)。
午後2時から始まった島田氏の講演は、熱が入った(写真上は講演後。撮影許可済)。
島田氏によれば、このプロジェクトのアイデアは昔からあったそうだ。それがやっと実現したのだが、当初は年配の方々が数十人集まって、小さな会議室で島田氏と和気あいあいとやれれば良いなと考えておられたようだ。
ところが、蓋を開けてみると、応募は300名となった。人数が増えたのは、このプロジェクトが読売新聞に掲載されたことが大きな理由ではなかったのかと氏はのたまわれる。
だから、場所が講談社の講堂となったようだ。当日の参加は約250名。
島田氏の前振りは、日本には物作りの名人がいるのだから、定年を過ぎた人たちの中にミステリー作りの名人がいるはずだと云うものである。
その話しがひとしきりなされた後で、本題である本格ミステリーとは何かに話しが及んだ。
氏によれば、本格ミステリーとは、「魅力的な謎を科学的根拠に基づいた推理によって論理的に解明していく小説」である。
具体的には、本格ミステリーとは前段に魅力的な謎があり、後段に解決がある。すなわちその本質は、謎の解決にあるという。
小泉八雲の小説も魅力的な謎、神秘的な謎があり、これもミステリーではある。しかし、解決がない。だから、本格ミステリーではないと氏はのたまうのである。
そして、本格ミステリーの中段には、推理という面白さがあるのである。
この前段、中段、後段の3つが揃って一定レベル以上の高度のものが本格ミステリーだというのである。
これを魚に例えると、
お頭が謎
背骨が推理
尻尾が解決
である。
この背骨の推理の部分に、一定数以上の枝となる骨があり、それが際立つと良いミステリーとなる。
骨に付け加える魚肉は、恋愛でも戦争でも時代物でも何でも良い。ただし、シルエットは魚である必要がある。魚であれば、奇形魚でも良い。それが傑作となるかも知れない。また、巨大なこぶのある魚であっても良い。こぶとは、例えば蘊蓄のことである。
この謎が神秘的、幻想的である場合、さらにミステリーらしさが増すことになる(この項続く)。
本格ミステリー「ベテラン新人」発掘プロジェクト(その4)
島田荘司氏は、続いて、のたまわれた(写真は講談社)。
本格ミステリーと自然主義的ミステリーとの差である。
島田荘司氏によれば、自然主義的ミステリーの代表者は松本清張である。
清張は自然主義的文学の観点から不自然な伏線を嫌い、意図的な伏線を排除したのである。
しかし、本格ミステリーの美しさは高度な謎解きにある。だから、本格ミステリーにあっては、不自然な伏線があっても良いのである。
それのみか、神のような登場人物、人工的な設計も一定までは認めて良いのである
だから、謎解きを重視し、文章力は二番目でも良いのである。自然主義的文学の物差しと異なる物差しを使ってミステリーを書いても大丈夫なのである。
ただし、自然主義的文学作品を評価しないと云う訳ではない。
むしろ、島田荘司氏はそういう作家や作品も大好きであるとして、田山花袋の布団や自然主義的作家の天才である太宰治にまで言及されるサービスぶりを発揮されたのである。
さらに島田氏の講演は熱を帯び、本格ミステリーの嚆矢として、1841年発表の「モルグ街の殺人(エドガー・アラン・ポー)」にまで話しが及んだ。
このミステリーは、当時の最先端の自然科学が生んだ新ジャンルである。
それまでのミステリーが心霊ものや非科学的なものであったにもかかわらず、当時発足していたスコットランドヤードによる科学的捜査と期を一にしていたと、氏はのたまれるのである。
くしくも日本では昨年から裁判員裁判制度が始まった。裁判員が証拠を基にして事件が有罪か無罪かを判断するように、本格ミステリーは際立つ推理によって謎解きを行うのである。
ここで島田氏は講演時間が予定の1時間を20分も超えていることに気付かれ、慌てて講演を終えられたのである(この項続く)。
本格ミステリー「ベテラン新人」発掘プロジェクト(その5)
30分休憩の後、3時50分から質疑応答が始まった。
実は、この質疑応答も熱が入ったのである。老人パワーがさく裂した(写真は講演終了後)。
最初にも述べたが、質疑の時間が持つのか(=質問があるのか)とおいらは密かに危惧していたのだが、これが見事に外れた。
老人はしょもない質問までするのである。おいらも苦笑しながらお聞きしたのだが、質問を答える島田氏は大変だ。
さて、本格ミステリーにまつわる質疑のみ、次に再現する。
質問 ミステリーとサスペンスとの差は?
回答 ミステリーとサスペンスは違う概念。サスペンスはワクワク・興奮を誘うもの。幽霊が登場する。5人居て、1人だけが幽霊を見た。これに対し、5人とも幽霊を見たとする。1人だけ幽霊を見たのでは、思い過ごしかも知れない。しかし、5人とも見たのであれば、それを科学的に立証する必要がある。それがミステリーの要諦である。
質問 頭、背骨、尻尾のように、本格ミステリーは定型的にすべきか?
回答 こだわる必要はない。
質問 探偵がいた方が良いか?
回答 いなくても構わない。
質問 文章の巧拙は影響するか?
回答 影響しない。それどころか、わざと稚拙にし、それが最後の謎解きに繋がるという小説(例えば、綾辻行人氏の小説)もある。選者も小説の最後まで息が抜けない。
この他にも質問は数多あったが、本格ミステリーとは直接関係がないので割愛。質疑が終わって解散時間になったのは5時15分であった。
質疑が終了し、参加者がほとんどいなくなっても、島田氏は壇上から下に降りて、質問攻めに会っていたのである(写真上)。
いやあ、面白いプロジェクトであったのぅ(この項続く)。
本格ミステリー「ベテラン新人」発掘プロジェクト(その6)
さて、本格ミステリー「ベテラン新人」発掘プロジェクトの主たる募集要項は次のとおりである。
1.応募資格 60歳以上
2.作品 長編本格ミステリー
3.原稿枚数 350枚以上550枚程度
4.締切日 7月15日(金)
5.選者 島田荘司
特にこのプロジェクトの説明会に出席しているという必要性はなさそうである。
そうであれば、出席者の半数が応募するとした場合の作品数は130作品。それ以外にも投稿すると予想される人の作品数が同数として、約300作品程度が応募されるかも。
ま、応募数によって入賞の難易度が決まることなどはないから、島田荘司氏に賛同するシニアの人は、そういうことに関係なく本格ミステリーに挑戦すべきだろう。
よっしゃ、一つおいらもこのチャンスを逃がさないようにしてみるか。
幸福の女神に、「後ろ髪」はついていないのである(この項終り)。
本格ミステリー「ベテラン新人」プロジェクト
本格ミステリー「ベテラン新人」プロジェクトの原稿締め切り日が、昨日の7月15日であった。
昨日の未明に原稿が完成(400字詰め原稿用紙換算357枚であった)し、昨日付の消印で講談社に送付した。
構想半年、執筆1ヶ月であった。
で、最後の2週間は「村上龍『半島を出よ』現象」になっていた。
この「村上龍『半島を出よ』現象」というのは、村上龍が「半島を出よ」執筆時、長野かどこかの別荘で缶詰状態になり、一心不乱に小説を書いていたときのことをいう。
小説が佳境に及んでいたとき、彼が近くのコンビニに飲み物か何かを買いに行ったのだそうだ。
その時の村上龍の目はらんらんとし、髭は伸び放題、その様相は尋常ではなく、あたかも夢遊病者のようで、店員がビビったという有名な話しがあるらしい。
おいらも最後は完全な昼夜逆転現象になり、仕事以外の時間はひたすら原稿を書いているという状態になっていた(家族には迷惑をかけた)。
執筆に没頭すると、常に脳は回転状態で、24時間、小説の世界に入ったままということになる。
疲れて、寝ようと布団に入っても脳が覚醒しているので、直ぐには眠ることができない。バーチャルのはずの小説の世界が生身の脳を征服して、現実世界にしてしまうのである。
これは難儀である。
しかし、逆に、これが小説を書くときの醍醐味だと云うこともできる。
だから、それを乗り越えた上で、小説が完成したときの喜びはひとしおである。人間は新しいものを作るのが好きなのである。
閑話休題。今の気持ちは、脳を休めて、温泉にでも行こうと思うばかり。来週は母の遠距離介護で再び広島に帰省するので、帰路、どこかに寄り道だ。
なお、このシニア賞の発表は今年12月を予定されている。さて、どうなりますやら。
「島田荘司本格ミステリーベテラン新人賞」
昨日、講談社「島田荘司本格ミステリーベテラン新人賞」の発表があった。
おいらの応募作「薔薇と少女と乳白色」がその最終候補作とされていたことが判明した。
応募総数は217作品、最終候補作は19作品である。
皇帝の使者、再び来たらずであるが、これまでのおいらの実績は2次予選通過(オール讀物推理小説新人賞)が最高だったので、最終候補まで行ったことは次回作への励みになるというものである。
来年は賞を取りたいのぅ。目指せ、印税生活!?
オリジナリティとは
アイルランドの作家ジェイムズ・スティーブンスの言葉。
「オリジナリティとは、今まで誰一人として云わなかったことを云うのではなく、自分の頭で考えたことを云うことなのだ」
慧眼である。
ジェイムズ・スティーブンスは、ダブリンのスラムで孤児として生まれ、長じて冒険的、実験的な精神を貫く独創的な作家である。ダブリンのスラム街を描いた小説「雑役婦の娘」、古典的空想物語の「黄金の壷」、神秘性に満ちた詩集「まぼろしの丘」などを残している作家である。
さて、小説で最も重要なのはオリジナリティ(独創性)である。
これまで無数の小説が書かれてきたが、そのほとんどは二番煎じだと断言しても良い。いや、世の中の思考だってそうだ。99%は先人の考えを伝承しているのに過ぎないと思うのである。
だからこそ、オリジナリティが必要なのである。
いや、だからこそ、皆がオリジナリティを求めているのだ。
もう一度云う。
「オリジナリティとは、今まで誰一人として云わなかったことを云うのではなく、自分の頭で考えたことを云うことなのだ」
よし、おいらは、おいらだけにしか書くことのできない小説を書いてみよう。それがオリジナリティであると考えるのである。
小説を執筆中
少し前にも書いたが、2014年5月末締め切りの公募小説(50枚の短編小説)に応募した。発表は12月の予定である。
月が替わって、また、8月末締め切りの短編小説(50枚)を現在執筆中である。
9月からは従前から公言しているように、再び江戸川乱歩賞に取り掛かる。
乱歩賞は今年の1月末が締切りであったが、100枚程度書いた時点で最後の詰めに自信が持てず、今年に持ち越したと云う経緯がある。
これまでの公募小説の応募結果は、次点にはなっていても最終での詰めの甘さで賞を逃している。したがって、おいらも考えたのである。また、次点では悔いも残るというものである。
では、なぜ乱歩賞の前に短編小説を書いたのか。
それは、小説のカンを養うためと(書いていないと確実に小説が離れていく。このブログも毎日書いているので、文章の訓練になっている)、短編小説でも良いから賞が取れることに越したことはないからである。
とまれ、先月応募した作品は少々出来が良かったと思っているので結果を期待している。現在、取組み中のものも面白い作品に仕上がりそうである。
昨日も書いたとおり、今を大切に生きることがおいらにとって一番重要なことだ。
今を生きる。小説を書く。
トランス状態
先日も一言述べたが、現在、今月(2015年4月)末締め切りの公募小説にかかりっきりであり、少々トランス状態(一種の「入神状態」)になっている。
今回の枚数制限は400字詰め原稿用紙で120枚。締め切りまで後2週間を切っている本日現在、約100枚程度書き上げている。
公募小説名はご容赦願いたいのだが、小説の種類は純文学、エンターテイメント、ミステリーを問わない内容になっているので、おいらの得意な藤田嗣治をテーマにしたミステリーとだけ述べておきたい。
さて、では、どうしてトランス状態となっているかと問われれば、今月に入ってから執筆に入り(構想は今年の初めから)、先週末には愚妻を実家に帰し執筆環境を整えたのである。家族がいるとカンファタブルなので、ついつい趣味や道楽に没頭してしまうのである。
次に酒断ちである。一滴も飲まない。酒は百薬の長だが、執筆の天敵である。説明は不要である。
そして、外界との連絡を遮断してひたすら書く、書く、書く。
最初は小説の全体像をなでまわしているが、一旦スイッチが入ると半徹夜状態になる。起きているときは常に書いており、ひたすら書き続けているとトランス状態となり、手が自動的に動くのである。このとき、恐らく脳にはドーパミンが出まくっている。
仮眠していても小説のことばかり考えており、起床しても書き続ける。同じ椅子に座り続けているので、お尻は当然痛くなる。本当のことである。
こういうのを一心不乱というのだろう。密教で夜どおし念仏を唱える祈祷があるが、その修行と同じである。
しかし、月末までどうしても外せないスケジュールがいくつも入っており、それが難である。だが、そういうときほど一歩下がって、小説の中身を客観的に見ることができるというふうに考えるようにしている。気分転換は念仏修行でも必要である。
今月末まで、後2週間弱。さて、どうなることやら。
小説完成、投稿完了
お蔭をもって、小説が完成し投稿完了となった。
400字詰め原稿用紙120枚であった。最終的には150枚近くに膨れ上がったので、それを削って120枚丁度とした。
なぜ、枚数が超過したかというと、起承転結にあたる4部分をそれぞれ分けて執筆しており、最初から時系列で書いたのではないからである。
これはおいらだけの手法ではなく、あの百田尚樹氏も気に入った場面から書いていくのが上策と述べられている。
そうして映画のように撮影(執筆)が完成したら、それを順に合体して編集するのである。
一般に小説は増やすより、減らす方が完成度が高くなると云われる。増やすのは水増しと同じで余計なことを書いてしまい、読者の想像力を摘んでしまう。これは映画でも同様で、スピルバーグは困ったらフィルムを切るそうだ。
ところで、この2週間強は外出やウオーキング以外はほとんどパソコンに向かっていたので、頭がオーバーヒートしている。小説のストーリ-やネタが次から次へと頭に浮かぶので、いくらでも小説が書けると錯覚してしまうのである。
実際、投稿完了したばかりだというのに次の締め切り(6月末)の公募小説のことをもう考えている。次回は150枚の小説なので、構想1か月、執筆1か月で2か月もあれば十分である(と錯覚している)。
その作品は、おいらの好きな藤田嗣治とこのブログで取り上げている「アングル(エロティシズムの巨匠)」を題材にしたいと考えており、取材旅行で昨年行けなかった秋田まで足を延ばそうかと思案中である。
なぜ秋田か。それは、秋田にはとてつもなくでかいフジタの油彩「秋田の行事(3,700号)」が鎮座しているからである。
これから1か月間、妄想を重ねて小説の構想を練る。創作の愉悦に再び入ることができると思うと毎日が極上の日々である。
公募小説受賞の裏側(前篇)
本日から三日間、関ネットワークス「情報の缶詰」(2016年4月号)に掲載された「公募小説受賞の裏側」をお送りします。
公募小説受賞の裏側
昨年、又吉直樹氏の書いた小説「火花」が芥川賞を受賞した。文藝春秋で受賞評を読むと評価が分かれている。
今年に入って日経を見ていたら日経小説大賞の授賞式と選考委員による座談会が日経ホールで開催されるという。賞が決まるまでどうもめたか、選者の裏話しが聞けそうである。
1.日経ホールは満席
入場は抽選ということで応募すると運よく当選したので、2月26日の開催日に大手町に出向いた。
600名の定員なので余裕で入場できると思っていたのだが、会場は満席で当日は入場券がないと入れないという堂々たる人気であった(写真は授賞式開始前の日経ホール)。
おいらが驚いたのは、今年1月に「『芥川賞・直木賞をとる! あなたも作家になれる』刊行記念トークイベント」が神田の東京堂書店で開催されたのだが、そのときはせいぜい30人程度しか集まらなかったのである。
だから、今回も半分も入ればよいのではと予想していたのだが、これが大外れ。公募小説に興味を持っている人は多いのだ。
2.受賞作は力作
さて、日経小説大賞はその名のとおり、日本経済新聞が主催する公募小説で第7回目を迎える。経済のみではなく、ジャンルを問わない文学賞であり、原稿用紙300枚から400枚程度の長編小説である。
今回は約200篇の応募があり、そのうち20篇が予選を通過、最終作品が5篇となり、辻原登氏、高樹のぶ子氏、伊集院静氏の三氏によって西山ガラシャ氏の「公方様のお通り抜け」が受賞と決まった。
受賞作は、寛政4年、尾張徳川家の戸山下屋敷である「戸山荘」が舞台。
近くに住む大百姓の甚平は屋敷奉行から将軍家斉が屋敷にお成りになると知らされる。広大な屋敷は荒れていたが、巨大な池に「箱根山」と呼ばれる山や神社仏閣まである。甚平は公方様を喜ばせるために庭園に仕掛けを考え、趣向を凝らしたアイデアを出す。
おもてなしの喜びに目覚めた甚平が様々な人たちとテーマパークのように大名庭園を造る日々を落語のような語り口でユーモラスに描き出した時代小説である(この項続く)。
公募小説受賞の裏側(中篇)
3.授賞の言葉、こつこつと書くしか道はない
当日の午後6時半から授賞式が始まった。受賞者の西山ガラシャさん(名古屋市、50歳)が壇上に立ち、表彰状と賞金500万円が授与された。
受賞の言葉は、6年前から時代小説を書き始め、調べて書くことの繰り返しであったという。本人によると、「こつこつと書くしか道はない」との弁である。
4.座談会は云いたい放題
これが面白かった。選考委員の個性があふれたのである。
芥川賞作家の辻原登氏は、ご存じ文学賞を総舐めにしている小説創りのプロである。
小説の基本はエンタテイメントであり、そのためには技術が必要との持論を述べられ、その技法を磨くためには出来の良い小説をいかに読むかであるとされる。受賞作については、読んでいて心地がよいという評である。
紅一点の高樹のぶ子氏は硬派である。
辻原登氏と伊集院静氏が推す受賞作品とは違う作品を推薦されていたのである。3人で決めるときはいつも自分が1対2で負けると嘆いておられた。受賞作品を推さなかった理由は、悪人が出てこないからである。小説は深読みが大切で、悪のない小説は小説ではないという持論である。
伊集院静氏は、小説の基本はテーマとストーリーであり、それを満たしているとの評であった。
今の小説を読む人は疲れて自宅に戻り、それから小説を読むので、「役に立つか、面白くなければダメ」という分かりやすい基準である。
やっぱり小説の肝は面白いかどうかであるが、今後、期待している小説は「登場人物がすげえなぁ~」というものだそうだ(この項続く)。
公募小説受賞の裏側(後篇)
5.福山ミステリー文学新人賞
ところで、ここまで書いたとき、おいらの仕事の上での後輩から今年の「福山ミステリー文学新人賞」に彼の大学(東京外大)時代の友人が決まったという連絡をもらった。
この賞はおいらが生まれた広島県福山市が主催し、同市出身の島田荘司氏が仕切っておられる本格長編ミステリー賞である。
受賞者は原進一氏で、受賞作品は「アムステルダムの詭計(きけい)」。
昭和40年に起きたアムステルダム運河殺人事件をもとにしたフィクションであり、同年夏、アムステルダムの運河に浮かんだ日本人死体は頭部、両脚、手首が切断され、胴体だけがトランクに詰められて発見された。
当時、松本清張はこの事件を小説化するにあたって綿密な取材をし、被害者が替え玉であるとの説を唱えたが、後に自説を撤回している。
ヨーロッパ警察機構のほか、インターポールも捜査したが、事件は迷宮入りの様相となったというものである。
原氏は大学卒業後、全日空に入社、アムステルダム駐在の経験がある。まだ、受賞作品は発表されていない(近刊)ので、殺害された人物がおいらの後輩だといううわさや、いや犯人だという説もあるという(後輩の学生時代の仲間が作中にかなりでているらしい)。
この受賞作への島田荘司の評がすこぶるよい。
「二十五年という待機の歳月が流れ、ようやくここに、隠れもない松本清張のDNAを持った、おとなの文体を操る、成熟した思索の書き手が現れたと見え、今後さらに出現が続けば、かつて自分が構想した二派競合の時代がいよいよ実現するか、という期待も抱かされた」(ネットから転載)。
う~む、この作品も面白そうである。やはり小説は面白くなければならない。
最後に、伊集院静氏の小説を書く基本で締めくくる。
よい小説を書くためには、「書く、読む、書く、読む」の繰り返しが必要である。読め!(この項終り)
今週のNHK・FM放送の「FMシアター」が期待できる
今週土曜日(18年2月10日)のNHK・FM放送の「FMシアター」が面白そうである。
月曜日の朝、おいらの親友O君からグッド・ニュースが入った。
おいらたちの高校の同期同窓であるK君のお嬢さん「黒瀬ゆか」さんが放送作家としてデビューされるというのだ。
早速、黒瀬ゆかさんのことをネットで調べてみると、黒瀬ゆかさんは日大芸術学部放送学科の卒業。
NHKによれば、彼女は日本放送作家協会や日本脚本家連盟の養成スクールを経て、一昨年(16年)、ラジオ日本「カフェ・ラ・テ」の公募「フレッシュドラマシリーズ夏」で佳作を受賞されたという実力派である。
その黒瀬さんがNHK大阪放送局(BK)主催の「2017年度第38回BKラジオドラマ脚本賞」で最優秀賞となられたのである。
同脚本賞の公募には20歳から90歳までの133篇の応募があり、受賞者の中からは長川千佳子(芋たこなんきん)、山本むつみ(ゲゲゲの女房、八重の桜)など多くのテレビ・ラジオ作家が誕生しており、次代を担う新人作家の登竜門として高く評価されている。
その彼女の作品「家族のコツ」が今週末、2月10日(土)22時から50分のラジオドラマ番組「FMシアター」としてオンエアされる予定というのである。
しかも、役者には、あの怪優、佐野史郎が登場するのである。
う~む、これは聞き逃す手はない。
おいらは前にもブログで書いたが、ラジオドラマの特性とは、聴く人に音だけで状況を想像させ、しかも、聴く人が劇中の人物に感情移入して音だけでイマジネーションを膨らませていく、ということである。
今週の土曜日が愉しみである。皆の衆、2月10日(土)22時、NHK-FM「FMシアター」(再放送あり)を聴こう。
NHK・FM放送でオンエアされた「FMシアター『家族のコツ』」は、えがったのぅ
18年2月10日(土)22時、NHK-FM「FMシアター」で「家族のコツ」(NHK大阪放送局(BK)主催の「2017年度第38回BKラジオドラマ脚本賞」最優秀賞)を聴いた。
先日もこのブログで書きこんだ黒瀬ゆかさんの作品である。
これが滅法面白かった。最初から最後まで洒落心、満載である。おいらはこういうバカ話しが大好きである(上の写真はNHKのホームページから転載させてもらいました)。
ストーリーを述べるとネタバレになる恐れがあるのでざっくり云うと、婚姻届けを出した主人公が亡くなり、彼女の遺骨が父親の墓に入ってからの彼女の骨と父の骨、彼女の骨をかじる母(生きている)との3人によるドタバタである。
骨の会話など映像ではできない。ラジオだから、骨同士の会話にすんなりと入っていける。
話しの展開は井上ひさしの3人コントをほうふつとさせるし、同時にSF的要素も備えており、初期の筒井康隆の作品を思い出せさせた。
そして何と云っても役者が揃っている。怪優、佐野史郎の軽薄な声が光っているし、バッティングセンターでの母親の声もしびれるのぅ。
おいらは最初、ラジオドラマで50分は長いと思っていた。
だが、あっという間に終わった。それは作者が目いっぱいにストーリーを展開させたからである。終わるころには人生とは何かという人間の根幹のテーマをこんなホームドラマにさせるという作者の力量に感服した。
ただし、この作品のタイトルだけはいただけない。「家族のコツ」では訴求力がなかろう。ではどうするか。売れる本はタイトルだけで決まるというが、それほどタイトルは難しいのだろう。
それにしても黒瀬さん、大したもんじゃい。最優秀賞受賞、おめでとうございます。
なお、この放送の再放送は「FMシアター」HPで「聴き逃し配信(2月12日正午から19日正午まで)」で行われているので、是非ともお聴きすることをお薦めする。聴き逃すと後悔するぜよ。
第9回日経小説大賞授賞式・座談会の見学(前篇)
「第9回日経小説大賞授賞式・座談会」が先週木曜日(18年2月21日)の夕方から大手町の日経ホールで開催された。
先日も書いたが、この授賞式の見学は2年ぶりである。昨年もあったはずだが、バタバタしていて失念していたものと思われる。
なぜならおいらは日経のネット会員なのでこういう類の案内は自動的に日経から送られてくるのである。今年は見過ごさなかったので、配信と同時に参加を申し込んだ。
確か一昨年は参加者多数の場合、抽選だったが、今回はすんなりと申し込みが完了した。参加者が少なくなったのだろうか。
とまれ、一昨年も面白かったので、おいらはわくわくしながら会場に急いだ。
そのとき思ったことは、選者による座談会があるにしても、この賞の見学者だけで日経ホールが満員になるのだろうか、ということである。調べてみると日経ホールの収容人員は610人である。
午後6時半から開催され、開場は午後6時。おいらはこの日、某証券会社のIRセミナーで朝から横浜にいた関係上、6時10分ごろ日経本社ビルに到着した。
最初、場内は閑散としていたが、アナウンスがあり本日は満席と紹介された。おいおい、本当かよ~と思っていたらあっという間に満席となったので少々驚く。
しかし、こういう見学会には誰が来るのだろうかとおいらの好奇心に火がつく。
見渡すと年齢層は圧倒的に年配者が多い。男女比は男7、女3程度で、意外に女性が多い。また、男は背広組が少ない。
おいらの右側には50歳代の男性。ブルゾンを着ているのでビジネスマンではない。職業不詳である。おいらのように本能的に「書きたい」人なのだろうか。
左側は年配の男女ペアだが、会話の内容から推察すると夫婦ではない。男性はジャケットを着てゲラのようなものをバッグから出していたので、出版業界の関係者だろうか。そうだとすると納得ができる。
ところで、後で分かったことだが、今回の受賞者は上智大学勤務の教職者ということで、教え子や大学の関係者が多数来場していた模様である。これも納得。
当日のスケジュールは、第1部が贈賞式、第2部が座談会である。さあ、いよいよ贈賞式の開催である(この項続く)。
第9回日経小説大賞授賞式・座談会の見学(中篇)
6時半の定刻に贈賞式は始まった。
贈賞の式典は通り一遍の内容で特筆すべき点はないが、応募総数が248点あったことがお披露目された。
前々回は約200篇の応募があり、そのうち20篇が予選を通過、最終作品が5篇となり、今回と同じ選者(辻原登、高樹のぶ子、伊集院静の三氏)によって大賞が決まった。
しかし、今回は応募総数のみの発表であり、予選通過作品数、最終候補作品数はオープンにならなかった。こういうのはよくない。密室にしない方がよい(公募新人賞を目指す人間には、灯りが一つ消えることになる)。
そもそもこういうデータは公表したってそんなに差はないはずである。ただし、すでに公表されていたらごめんなさい。その可能性もある。その場合は、おいらが調べていないだけである。
閑話休題。
簡素な贈賞式が5分程度で終了し、受賞者である赤神諒氏のコメントが行われた。
これが滅法面白かったのである。赤神諒氏、只者ではない。
スピーチはのっけから、30分お時間を頂戴し、コメントしたいと冗談をかまし、さらに、受賞コメントはブログを立ち上げているのでそれを参照して欲しい、今回は云いたいポイントが7つあると事前に事務局に連絡したら、長いと一喝されたので、本日は3つのポイントに絞ると早口でのたまわれるのである。
これは、すごいよ。あたかも関西の芸人である。
それもそのはず、赤神諒氏は関西のご出身であられ(同志社大文卒)、ノリがいい。
ただし、これが万人向けかどうかと云うとおいらにも自信がない。スベルのである。スベルには理由があるが、今回は割愛。
さて、その抱腹絶倒の授賞式の氏の述べるポイントは3つ。
一つ目は、小説は売れてなんぼなので、買ってほしい。
二つ目は、笑いを取りに行くので、その場合は笑ってほしい。
三つ目は、日経をよろしく頼む。
ウケたねぇ。こりゃ、大物新人以外の何物でもないわなぁ(この項続く)。
第9回日経小説大賞授賞式・座談会の見学(後篇その1)
お待ちかねの座談会である。
壇上がどういうセッティングになっているかと云えば、左の裾に女性の総合司会の席がある。ただし、総合司会とは名ばかりで要所要所で進行の挨拶をするだけである。
そして中央に5つの席があり、右端から今回の受賞者赤神氏、審査員の辻原登、高樹のぶ子、伊集院静の三氏、司会の日経文化部担当者(役職者で文学に造詣が深いとみた)が着席された。
司会者によって、赤神氏のプロファイルが明らかになる。
今回の受賞までに苦節8年がかかっており、これまで約20作品を書いてきた。ジャンルは多様でホラーと官能小説だけは不可だそうである。
2009年から書き始め、2年前に書いた自信作が最終候補になるも落選。
爾来、奮起して自宅では禁酒として毎日書いてきたということである。
受賞するために特別にしたことは、作家の印鑑は石製で四角でなければならぬということでそれを創ったことが受賞したことにつながったのではないかというギャグがお披露目された。
上智大学で環境法を担当する教員であり、同時に弁護士でもあり、吉祥寺在住との紹介があった。
いやぁ、面白いひとだなぁ。
苦節8年というのがいい。
なんだかおいらは勝手に氏が戦友のように感じてしまった。おいらの場合はハッピイリタイアメントの翌年、オール読物推理小説新人賞の2次予選を通過して、その後、紆余曲折を経て、その5年後に講談社本格ミステリーベテラン新人賞の最終候補となる。つまり、退職して6年目に氏と同じように最終候補作を書き上げたのだが、おいらの場合はその後がいけない。
赤神氏と決定的に違うのは、本格小説を書き続けなかったことだ。
無論、このブログでも書いているように小説は書いていた。しかし、本格小説ではなく、好きなジャンルの短編を書きなぐったのが間違いで、また、自宅での酒は百薬の長として、氏とは180度違う道に進んでしまった。
だから、おいらはこの座談会にくぎ付けになってしまったのである(この項続く)。
第9回日経小説大賞授賞式・座談会の見学(後篇その2)
ここから審査員の選評が開始された。
まずは、芥川賞作家の辻原登氏である。ご存じ文学賞を総舐めにしている小説創りのプロである。
その辻原氏が最初に挙げられたのが、ストーリーテリングがプロ並みであるという点である。
歴史小説に欠かせない要素がストーリーの展開で、この小説は見事である。
2番目は、人物描写。この主人公はとにかく泣く。戦国の武将でこれほど泣く武将を登場させたのは初めてではないか。人物描写の確かさに評価。
3番目は、敵役をどう描くかである。敵役に魅力がなければダメ。作者は旨く敵役を創った。
4番目は、狂言回しの必要性である。軍師が登場し、小説の狂言回しが旨く創ってある。
と、辻原氏はべた褒めであった。
毎回(と云っても2回目だが)思うのだが、辻原氏は論理的にものごとを考え、その物差しによって作品を評価しておられる。おそらく、小説を書くときもその物差しを座右の銘にしておられるのだろう。
続いて伊集院氏。
氏が受賞者ご本人に聞いたところ、戦国の武将大友一族を題材にしたのはこれで6本目だそうである。
本作の前の5本目が小説現代長編新人賞(?裏を取っていません)で最終候補というがその作品がひどかった。
率直に云ってこんなに成長するものなのかと驚いた。
特に、主人公の弟がのびのびと書かれている手がよい。主人公は戦国時代の人物像のパターンにはまっているが、弟のキャラクター作りに成功したとの評である。
高樹のぶ子氏は、15、16人の登場人物のそれぞれのキャラ立ちを評価したいが、そもそも歴史小説は苦手だと本音を吐露された。そういうところが女性作家の強みである(この項続く)。
第9回日経小説大賞授賞式・座談会の見学(後篇その3)
ここで、小説における人間の魅力とは何か、が話題となったのである。
高樹のぶ子氏は、英某作家による「フラットな人とラウンドな人」論を取り上げ、「予期しないことをすることによってその人が浮き彫り」になり、詰まるところ、それが人間としての魅力ではないかと話されたのである。
今回の受賞小説では戦国時代に似合わない泣き虫が主人公であり、それが成功した鍵だと辻原氏も述べられた。
これに対し、伊集院氏の魅力論は面白い。
例えば、正岡子規を主人公にして小説が書けるかと云うと、まず現地の松山まで足を運び、そこで実際に6月の風を感じて正岡子規の背中が見え、表情が感じられるとそれが正岡子規の魅力ではないかと云われるのである。
う~む、小説はこうして創られるのじゃのぅ。
その後も興味深い座談会が続き、ここで赤神氏の人となり紹介として、赤神氏の先輩である大学教授と赤神氏のゼミの教え子によるスピーチがあった。いずれも赤神氏の人柄と功績を称えるもので、それぞれ趣き深い内容であった。
このとき、氏の先輩により、赤神氏は備後福山市の景観訴訟で環境保護派の弁護士を務められたことが判明した。お~、そうだったのか、大したもんじゃい、恐れ入りました。
さて、その後は赤神氏による審査員諸氏への質問コーナーとなった。
質問は3つ。
小説で女性を描く場合に、肝に銘じることは何か。
純文学とエンタメ小説との両立は。
歴史小説で事実の改変は、どこまで可能か。
というものであった。
それぞれの回答を3氏が回答されたのだが、ここでは代表回答として、次を述べる。
高樹氏は女性の本質はそのイメージの真逆にあるので、それを踏まえないとダメ(女性はやさしいと思ったら大間違い。本質は恐ろしいなど)、伊集院氏はドストエフスキーもチェホフも元はエンタメであり、純文学とエンタメに違いはない、質問自体が愚問である。
辻原氏は、歴史小説の改変は許されるが、やりすぎはダメ(もともと昔のことはわからないことばかりである。だから、変えてもいいが、明らかな史実を変えることは不可)といずれも興味深い回答であった。
最後に3氏から赤神氏にエールが送られ、無事座談会も終了した。
赤神氏がこれまで多くの小説を書いてきたので本人が量より質で勝負したいとアピールに対し、伊集院氏が「それはさておき、とにかく書きなさい」というのが印象的であった。
さて、おいらも初心に帰って、書くしかない。今年はひたすら書くぞ~!!(この項終わり)
今やらねば
老人力がついても変わらないことがある。
それは、忙しいときほど仕事がはかどるということである。
忙しいから、仕事の段取りを最初に考える。
つまらない仕事は放っておく。
そして優先順位にしたがって、目の前の仕事をさばいていく。
だから、面倒だと思っていた確定申告の作業もあらかた終わった。
不思議なことだが、忙しいから何でもできることがある。忙しいときほど、映画館に行っていることがある。
人生は、おそらくその繰り返しである。今週の一連の動きは、人生の縮図かも知れない。
そうだとすると、もう一つ忘れてはならないことがある。
「木を植える最も良い時期は、『20年前』だった。
次に良い時期は、『今』である」
中国の諺だが、おいらはこれが好きである。
先日も書いたが、今年は小説を書く。
木を植える最も良い時期は、今しかない。
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