南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

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2005/01/11
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クラスの中でも小さいほうから2番目くらいの娘は、クラスのお友達に比べても、もちろんトルコの子供の平均よりも生え変わりが遅いほうだと思う。

自分の子供の頃を振り返ると、顎の小さかった私自身、生え変わりが遅く、永久歯が生えてきても、乳歯がグラッともせず、いつも歯医者に連れて行かれ、麻酔注射をされて乳歯を抜かれていたものだ。
(それが嫌で、永久歯が生えてきたことが親に気付かれないよう、笑う時も口をいつも隠してたっけ)

娘の歯は、今のところ下の前歯が2本生え変わったところ。その横が固く膨らんでいるので、3本目がこれから生えるところである。
娘には、「生え変わりが遅くても、心配しないで。母親の私が遅かったのだから、たぶん私に似て遅いのよ」と言ってある。
それに、今までのところ、永久歯が十分に伸びる頃には乳歯も自然とグラついてきて、自然な生え変わりができているので、まったく心配はいらない。少なくとも私にはそう見える。

ところが夫の方は、娘の口の中を覗くたび、心配でたまらなくなるらしい。
私がいくら説明しても、「永久歯が生えてきているのに、乳歯が抜けてないのはオカシイ」とか「永久歯が傾いて生えてるのはオカシイ」「医者に見せよう」と、まことにウルサイ。

夫に「家庭の医学」の基本的な知識が欠けているのは知っていたが、ここまで無知というのも却って困りものである。

しかし、まさか専門家であるべき歯科医師においてまで、乳歯の管理と生え変わりに関する常識が、日本の常識とそうまで異なっているとは思っていなかった。

もう1年半以上も前のことになるが、夫の歯の詰め物が取れたか何かで、歯医者に行くことになった時、前々から気になっていた娘の奥歯の虫歯をついでに治してもらってと、夫に歯医者に連れて行ってもらったことがある。
しかし、夫は自分の歯だけ治してもらって、娘の歯は治さないまま連れ帰ってきた。
「これくらいなら、治さなくってもいいって言ってたよ」と。

それから半年近く経った頃、前年夏に日本の歯医者で治してもらった娘の奥歯の詰め物が取れ、反対側のやや進行したように見える虫歯も一緒に治してもらうべく、前回と同じ歯医者に出向いた。
詰め物が取れた箇所には、あらたに虫歯ができていたので、そちらは治してくれたのだが、反対側の虫歯は治さなくてもいいと医者は言い張る。
「いずれ生え変わるんですから、このままでいいんですよ。精一杯揺らしなさい。半年経ってもグラグラしはじめないようなら、もう一度連れて来てください」と。
私は「日本では、乳歯が一番大事だから、虫歯は治すのが常識ですけど」と食い下がったが、必要ない。どうせ生え変わるの繰り返しだった。

すぐに他の歯医者に鞍替えしてもよかったのだが、そんな不毛な会話は2度と繰り返したくなくて、諦めてしまった。半年後に予定していた日本への一時帰国で、真っ先に歯医者に行くことに決め、もうトルコの歯医者は信用ならないとばかりに見限ってしまった。

昨年夏、待望の日本帰国で、予定通りまず歯医者への予約を入れた。

レントゲン写真を写すためのモニターは、いまやケーブルテレビまで映るようになっていた。
「へえ~、これなら子供用にアニメまで見せられますね」と感心すると、「まだそこまでは・・・」と申し訳なさそうに言われたが。

で、肝心の娘の虫歯だが、やはりかなり進行していた。最初にアンタルヤの歯医者に連れて行った頃から、すでに1年以上経っているのだから、当然と言えば当然である。
私は、トルコの医者に「どうせ生え変わるんだから必要ない」と言われたことを持ち出して、精一杯言い訳を試みたが、まだまだ現役バリバリのお爺ちゃん先生には、しっかり諭されてしまった。
「あなたねえ。乳歯がすべて生え変わるには6年くらいかかるの。前歯から始まって、奥歯は一番最後」

私は、しゅんとなって声も小さくなる。
「そうですよね。私もそう思ったんですが・・・」「医者には治してほしいって、繰り返したんですが、どうせ生え変わるの繰り返しで・・・・」

ともかく、無事に奥歯2箇所を治してもらい、娘の奥歯は銀色に輝くことになった。
そうそう、例のアンタルヤの歯医者だけなのか、他の歯医者も同じかどうか分からないのだが、娘が虫歯を詰めてもらった時の材料は、日本で仮詰めに使われるような、見るからに弱そうな白いセメント状のものだった。

ともかくも、トルコでいかに乳歯が重要視されていないか、私の場合はこのアンタルヤの歯科医師の方針・言葉でまず認識させられた。
今まで以上に、娘たちに歯磨きを徹底させるようになったのは、もちろんである。

* * * * * *


トルコ人の歯の健康に関して、こんな興味深い記事が、2004年12月25日付けの『Hurriyet』紙に載っていて、読んだときには目を疑った。

―イェディテペ大学歯学部の調査で、若者たちの間で虫歯になる割合が、トルコは世界でも一位になることが明らかになった。
ヨーロッパとアメリカでは、1年間に一人平均4本の歯ブラシを使うのに対し、トルコでは1年間に4人で1本の割り合いになることが判明した。

―学部長で教授のトゥルケール・サンダルル医師は、行った調査の結果に自分たちがまず驚いたという。
「トルコ東部と南東部の寄宿学校や、イスタンブール近郊の寄宿学校で、生徒4~5人で1本の歯ブラシを使っているのを残念な思いで眺めた」
「7人家族の家庭でさえ、たった1本の歯ブラシを皆で使っていた」

―サンダルル医師は、イスタンブールのような大都市においてさえ、1本の歯ブラシを全員で使っており、肝炎や、歯や歯肉の病気が広がる原因となる、と語る。
「虫歯の原因であるバクテリアは、口から口へ、家族から、母親や父親から子供に移ることが分かっている」
「このような原因によって、調査では若い人口の虫歯にかかる割合は90%になることが分かった。世界におけるこの割合は、40~60%の間である」


なんともはや・・・思わず口をアングリと開けてしまう。
トルコの田舎の方に行くと、実際、洗面所や手洗い場に歯ブラシが立ててなかったり、泊まった先の人たちが歯を磨いているところを見たことがない、という経験はよくする。義母の家の洗面所にも、歯ブラシがあるのを見たことはない。

そういえば、昨年のシェケル・バイラムで夫の実家に泊まった時、一緒に泊まった義妹の子供たちは、夜寝る前までキャンディーだのなんだのを食べながら、3晩続けて歯みがきはさせられてなかった。義妹に「歯みがき、しなくていいの?」と聞くと、「歯ブラシは忘れた」だと。
いいのかなあ~、あんなに甘いもの一杯食べてるのに。忘れたら、買ってくればいいじゃないの?
どこかへ泊りがけで出掛ける時は、まず歯ブラシや歯磨き剤を用意する私たちには、信じられないことだった。

時々、年端もいかない幼児で、前歯が虫歯で真っ黒とか、あちこち欠けている子供を見るが、こんな調査結果を聞くと、さもありなんと思う。
ただし、この結果から、トルコ人に清潔志向がないとか、歯磨きの習慣がないと、一刀両断に結論づけることは避けたい。
歯ブラシや歯磨き剤がどんなにテレビCMなどで宣伝されていても、トルコ全土にまで普及しないのは、トルコ国内の経済格差と、歯ブラシや歯磨き剤が高級品であることに原因があると思うからである。

調査で名前の挙がったトルコ東部や東南部は、失業と貧困に苦しめられている地域である。
例えば、こんな暮らしぶりをしている家庭がごまんとあるのだ。
ふた間しかない小さい家には、壊れたテレビと冷蔵庫が置物として飾ってある。洗濯機はない。
父親は不定期の日雇い仕事の収入でなんとか家族の口を養うのに精一杯。
子供たちは義務教育である小・中学校までは行かせてあげられるが、高校まで行かせるだけのお金がない。
シャンプーや歯ブラシの存在はテレビで見て知っているが、使ったことはない。頭は固形石鹸で洗う。あるいは、シャンプーや歯ブラシを生まれてこの方見たことがない。

そのような貧しい地方から仕事を求めて大都会に出て、周辺部の貧困地区に住みついている人たちの生活スタイルは、田舎にいた頃とそう変わりがなかったりする。
しかし、テレビなどの影響で、歯磨きをするものだと聞けば、とりあえず1本は必要か、となる。
7人家族で1本の歯ブラシの例など、そのようなケースではないか、と思うのだ。


上記のイェディテペ大学歯学部では、「全ての子供に1本ずつの歯ブラシ」キャンペーンを始めたという。
「これまでに10万本の歯ブラシを学部の努力で用意した。必要のある子供たち全員に配るためには、さらに200万本の歯ブラシが必要なのだ」
「1本か何本かの歯ブラシを学部宛に送ってくだされば、必要のある学校に私たちが送ります」
サンダルル教授はそう呼びかけているという。







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最終更新日  2005/02/28 12:39:11 AM


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