「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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SF「恐竜境に果てぬ」 序章第1節 3・4・5
富士恐竜パーク建設計画その3 人工湖出現実験
私はまだ富士山の広大な裾野に一大恐竜テーマパークを作る夢をあきらめてはいなかった。だが田所は気難しい男ということをいやというほど知らされていたので、うかつに話題再燃させることだけは控えていた。
あれ以来、田所はむしろ好意的に私の訪問を迎え入れ、さらに自身の研究経過について、熱く語ったりもするのだった。
ただし、そんな彼の話を聞くあいだ、私が細心の注意で、つまり彼の話への好奇心だけを示しながら、熱心に聞き入るフリをしたのは言うまでもない。
さて、田所が人工湖実験をジオラマという、稚拙な私のミニチュアで再現する限り、パソコン日記に掲載してもいいと許可してくれたので、平成初年、何回か繰り返したこの実験を、久しぶりに見せるとすこぶる上機嫌なのを好機と、その光景をやや詳しくジオラマ画像と共に描出することにした。
さすがに何度も人工湖を地上に出現させる実験を行なったせいか、偶然樹海を訪れた人々に――それも田所が細心の注意を払って来たからたいしたことにはなっていないが、遠くから目撃されたり、実験終了直後のぬれた岩場に近づいて不思議がられたりしたらしい。
今回は、ごく狭い樹林地域に実験場所を移した。
田所「・・・」
私「いいよ。言いたいことがあるって顔に書いてあることぐらい、わかってるんだから」
田所「ホントにわかってるつもりか ? 」
私「俺の間に合わせの機械装置に文句・・、いや、批判があるんだろ ? 」
田所「やっぱりな」
私「な、何だ、機械がグリコのオマケみたいだとか、鉄人28号の操縦機に似ているとか何とか言うつもりじゃあなかったのか・・ ? 」
田所「俺もずいぶん安っぽく見られるようになったものだ・・。まあいい。機械装置のミニチュアについてなぞ、何も考えていない。第一、俺の機械は、簡単に言うなら、ガラクタの寄せ集めだからな。忠実に再現したら、かえってポンコツのさらに出来損ないくらいにしか見えぬだろうよ」
私「田所・・・。お前、気難しい学者の印象がだいぶ薄れたような感じだ」
田所「バカ、親父のイメージとあんまりダブらせるなよ。お前も映画『日本沈没』の印象を残し過ぎだ。親父は俗物学者たちにつかみかかったほどだからな」
私「うーむ。いくら架空とは言え、これこそ架空の『映画』の世界が俺たちの物語に入って来ると、なんだか頭が混乱して来るな。それはさておき、あの時の田所博士は凄かったな」
田所「息子の俺のほうが恥ずかしいよ」
私「いや、あの迫力はまるでコナン・ドイルの『失われた世界』のチャレンジャー教授だ !
そうそう、それだ、日本海海戦の東郷平八郎長官を評して、『東洋のネルソン』と言った如く、田所博士は東洋のチャレンジャー教授だ ! 」
田所「よせよ、俺までが照れる。それにしても、・・・村松、いみじくも――と、称えておこうか。お前、今、東洋のチャレンジャー教授と形容したけど、俺が偶然呼び込んでしまった代物が、まさしく失われた世界だ」
私「うまい ! 田所先生に座布団一枚・・・。すまん。続けてくれ」
田所「ああ、そうだった。ま、些事(さじ)にこだわると言われそうだが、これでも今の量子力学に没頭する前は、親父と同じ地球物理学をやった関係で、これと関わる地形・地質もやらねばならなかったからな・・。まあ、世界全土に精通とまではゆかぬが、少なくとも日本の地形は、かなりの勉強を余儀なくされた。そこでな・・」
私「すまん、ちょっと待ってくれ」
田所「何だ・・」
私「お前のセリフを忘れちまった」
田所「何だ、話にならんな。俺のセリフはお前が考えて書いているんだぞ」
私「田所、お前は何を言おうとしたか覚えてるか・・」
田所「もちろん」
私「そうか、さすが大学教授で学者だ。・・・ん ? お前が覚えているということは、とりもなおさず俺も覚えているということになるなぁ・・。でも悔しいけど、俺はお前が何を言おうとしたのか、思いつかない」
田所」おい、いい加減、もう待ったなしだぜ。お前の言う青木湖を出現させなきゃならないんだぞ」
私「おお。それだ、青木湖だ ! 思い出した」
田所「俺がとっくに言おうとしていることを、お前が思い出したってのも、妙な話だな。俺のセリフはお前の創作なんだから・・ああ、俺まで頭が混乱して来たじゃないかよ」
私「こんな会話の応酬じゃあ、リズム感がなくなるな」
田所「だいたい、お前の物語には、情景描写がほとんどない」
私「いや、俺はな、いわゆる小説ってのが嫌いなんだよ。たとえばさ、『その時、樹海のうっそうたる木々のあいだをくぐるように走り抜けて来た風が、田所のやや長く垂れた前髪をほんの少し乱した』なんて描写入れるの、カッタルイんだよ」
田所「まあ、いい。ト書きのないシナリオとでも思えば、気にならぬ。さて、では俺がひとこと断わっておく。お前の名づけた青木湖というのは、確かに悪くない名前だがな、実は本物の青木湖が、全く別の地域に実在する」
私「え ? そりゃ、初耳だ」
田所「お前もなかなか役者だな。村松ブログマンに座布団一枚・・・。いや、俺まで悪乗りしてしまった」
私「ブログマンなんて、まるでカエル男だな」
田所「それを言うならフロッグマンだろ。ああ、話が進まぬ ! 」
私「悪かった。さあ、青木湖、いってみよおーッ ! 」
田所「ババンバ、バンバンバン、あ、ビバノンノン ! バカヤロウっ ! 仮にもクールで通ってる俺に、何を言わせやがる ! ? だいたい、お前のギャグは、全くいただけない」
私「それを言われると一言(いちごん)もない。でも俺の悪いクセは、『連想』しちまうんだ。かんべんしろ。ん ! まただ。『いちごん』で思い出した。
♪ 紅いイチゴ・・ン・・じゃなかった、りんごだった」
田所「とにかく話を進めるぞ。実在の青木湖はな、長野県松本盆地にある。この地方には、南北に木崎(きざき)湖・中綱(なかつな)湖・青木湖と並んでてな、俗に仁科(にしな)三湖と呼ぶらしいが、青木湖はその最大の湖だ」
私「ほお、さすがだな」
田所「ところでな、青木湖、と言ってもこれはお前が名づけたこの樹海の湖だがな、これとは別に富士五湖には、不思議な幻の湖があるという話を知ってるか・・」
私「幻の湖 ? 中村晃子(なかむら・あきこ)の『幻の湖』・・ってタイトルだったか、それなら知ってるけど、・・すまん続けてくれ」
田所「これも俗称では『富士六湖』とも呼ばれているんだが、要するに富士山伏流水の気まぐれで、何年かに一度、忽然と姿を現わしては、何日かのちに、いつのまにか消失しているというものが、地元では有名なんだ」
私「俺の大好きな七不思議ものになって来たな。・・・待てよ・・。俺はお前の言う湖とは違うだろうけどな、昔、兄貴と家(うち)の車に乗ってる時、偶然、それも道路から、そんなような湖・・とも呼べない沼程度のものだけど、見たことがある」
田所「いい経験したな。実はな、樹海周辺には、というより富士五湖周辺には、俺が調べただけでも、かなりの数のその類いの湖沼が点在してるよ。お兄さんと見たっていうその沼が、干上がったところも・・」
私「ああ見た。日ならずしてまた車で同じ場所を通ったら、見事にただの森になっていた。あれは神秘的だなあ。兄貴が、『大怪獣バランでも棲んでいそうだな』って言ったの聞いて、思わず背筋がゾクゾクしたの、よく覚えてるよ」
田所「なるほど。怪獣好きのお前らしいな。そう言えばお兄さんがまた、『大怪獣バラン』に興じた世代の人だったよな。確かに神秘的だ。やはり、現われたり消えたりする水没地域ってところが、何とも言えぬムードをたたえているのだろうな。だから俺は地球だとか、時空だとか、可視と不可視が交錯する現象に心を奪われるんだ・・。おっと、忘我の世界に没入してしまうとこだった」
私「うう、わくわくして来たぞ。じゃあ、毎度、手間をかけるけど、頼む」
田所「よし。ターゲット・スコープ、オープン ! コノヤロ、いい加減にしろ ! 『宇宙戦艦ヤマト』じゃねえんだぞ。・・・おい村松 ! 」
私「ん、何だよ ? 」
田所「お前、その軍隊式みたいなの、いちいち声に出したほうが気分が出るのか ? 」
私「ううむ、まあ、・・そうだな。テキトーに頼む」
田所「ホントにテキトーに言うぞ。ううん、何がいいかな・・。ま、要するにテキトーだ。各部点検ーっ。前部、発進用意よし、中部発進用意よし、機関室発進用意よし、後部発進用意よし ! スイッチ、オン ! 」
私「黄色いポリバケツみたいなのは何だ ? まさか、お前の畑のこやしに使ってるヤツ・・・あああ、こら、暴力はよせよ」
田所「ふざけるな ! こんなプラモデルの余ったパーツ選んだのはお前だろが ! だいたい俺の畑は化学肥料で作ってるんだよ ! 」
小学校のころ、田所と一緒に東宝映画「海底軍艦」を見たことがあった。胸を躍らせながら見入っていた私の耳元で、当時既にずば抜けて優秀だった彼が、「あんな構造で、巨艦が飛行出来る道理がない」と生意気にせせら笑ったのを思い出したが、彼が唯一私と見た特撮映画だった(大ボラもいいとこ)。
田所「村松、一つ訂正というか、断わっておくぞ。やや前のブログで、青木湖が出現する時の描写を、奔流する地下水が、轟々と噴出して来たというように書いたと思うけどな、これは地下の伏流水の座標を機械が計算して、地表の座標に数値変換する原理だから、必ずそんな劇的な光景になるわけではないのだ。今回は穏やかに湧き出させてみる」
私「そうだったか。どうも俺はあんまり驚いたんで、平成初めごろの光景だけかと思っていた」
―つづく―
富士恐竜パーク建設計画その4・人工湖出現と量子力学
田所の言う通り。今度は地下水は噴き出るような劇的な現れ方をしなかった。
それまで乾ききった河原のようだった地面が少しずつ湧き出る水にぬれて、赤土のような色に変わった。田所は多分わざと時間調整を実験項目に入れていたとみえる。
田所「スイッチ・オンでは、つまらなかったか、注水始めとでも言えば・・おい、村松 ! 」
私「え ! ああ、つい見とれてた。何でもいいよ」
田所「じゃ、このまま操作だけ続けるか」
私「田所・・」
田所「ん ? 」
私「改めてというか今さらというか・・・量子力学って言うけどさ・・」
田所「うん」
私「たとえば熱力学、航空力学、流体力学なんてのは、『力学』という言葉を切り離して考えることが比較的、楽だよな」
田所「ああ」
私「ところが、量子力学から力学を切り離して『量子』という言葉だけを取り出すと、俺には、この量子というものの意味や定義が全くわからない。出来るだけ簡単に教えてくれ」
田所「それなら、量子の例を挙げたほうが早いな。もっとも普通、『量子』という単語だけ切り離して言うことはほとんどない。それだけでも随分変わった物理分野だな。それでな、電子・光子(こうし)・中性子などは皆、量子だ」
私「なるほど。あの、しつこいようだけど、それに多分、聞いてもわからないと思うけどさ、量子の定義ってどんな言葉で示されるんだ ? 」
田所「ううむ。こんなのはどうだ。ある力学的な運動を物理学で調べたり研究したりする時の、その結果が示されていたとして、それを分析すると、最も小さな値とそれ以外の値との関係が整数倍の比になる場合、その最小の値を量子というんだ」
私「あ、そうかい・・・。わざわざ説明してもらって悪いが、さっぱりわからない」
田所「いいんだよ。量子力学という言葉を一まとめにして、漠然と認識出来りゃ充分だ」
私「でさ、その量子というのは、極めて小さなものに違いないだろうけど、研究、実験のために、量子一個を見ることは出来るのか・・」
田所「とりあえず、現段階では・・と言っておこうか。たとえば電子一粒を見ることは不可能だ。いや、これは極微の粒子を見る技術が飛躍的に発達しても、量子の性質上、まず観測は無理だろうな」
私「この問答は一区切りつけたほうがいいかな」
田所「お前がカッタルイって言うなら、無理にとは言わぬけどな、お前の知ってる範囲の疑問を話題にする限りでは、ナニ、ざっくばらんに話してもかまわぬではないか」
これでも田所は話相手を欲している。その才能が余りにずば抜けているから、日常会話に使えぬことを承知しつつも、ストレスのようなものを抱えてもいると私はみた。
私「でもさ、この人工湖の実験と量子力学をいきなり結びつけるのは、乱暴だろ ? 」
田所「そうでもない。というより大いに関係ある。量子力学は、時空理論と切っても切れない関係だからだ。量子の運動は観測不可能だと言ったろ。この量子というミクロの物質は、妙な言い方だが、『魔的』な動きを見せるんだ。早い話が時間をさかのぼる」
私「ということは・・・お前が呼び込んだ先史時代というのも・・」
田所「その通りだよ。量子論のたまものだ ! 」
私「俺自身は実はなんにもわかっちゃいないけど・・・現象そのものは、やっぱり魅力的だな ! 」
田所「もう一つ、例を挙げておこうか。ま、近い将来か遠い将来かは俺もわからぬがな、魔的な性質の量子、ここでは光子を使った『量子通信機』が実用化されると、今の携帯電話はガラクタ同然になる。この通信革命により、盗聴は無論のこと、ウイルスの添付も出来ぬし、さらにいかがわしい出会いサイトも、全く送信不能になる」
私「それは、やっぱりお前の言う量子の魔的性質に関係するのか ? 」
田所「その通り。今はとても信じられぬだろうがな、今言った光子には、ある種の『意志』があってな、通信妨害しようとする外部の何者かの行動を、時間を瞬時にさかのぼって察知して、まあ、今で言う妨害メールなどを役立たなくするんだ」
私「素人のバカな考えと思って聞いてくれ。将来、そういう革命的通信が可能になったとしてさ、それでもその時代の、つまりは今で言うウイルスを植え付けたりするヤツらが、つまり未来のならず者が現われてさ、新たな妨害手段を発見して、結局今と同じってことには・・」
田所「それは、まあないとしか言えぬな。何しろ通信の主役たる『光子』そのものが、妨害行動を察知して、封ずる性質を発揮するから、・・・それこそSF的になるけど、光子と悪魔の取り引きでも実現させぬ限り、不可能だな」
私「それじゃあ、たとえば、核爆弾というのがあるだろ。あれはウランやプルトニウムなど、質量が大きくて核分裂を起こしやすい物質に中性子をぶつけて、反応させるよな。で、通常では壊すことが出来ない原子核を壊して分裂させて、膨大なエネルギー放出の連鎖によって、核爆発を起こすよな」
田所「そうだ。・・あの村松、話の腰を折って悪いがな、お前の言わんとするところは、多分読めた。結論を言うと不可能だ」
私「そうか、中性子という一種の量子の意志に託して、核分裂反応を阻止するということは出来ないわけだな」
田所「量子に魔的な意志があるとは言っても、今話した中性子に、反核平和思想を持たせるという意味での『意志』ではないんだ。残念ながら中性子は、反戦平和行動は起こしてくれない。やはり人間の良心に頼むほかないんだ」
ようやく湧き上がりつつある伏流水は、まだ水深1m前後で、長いあいだ干上がっていたので、元は澄んだ清水とも言える水であっても、それは豪雨で増水した河川のように濁っていた。この水面が晴天の空を反射するように真っ青になるのは、もう少しあとのことである。
私はつい先ほどの話題が気になり、田所に問うた。
私「ところで田所、さっきの『量子通信機』、もしかしてもうお前だけは・・」
田所「ああ、試作品の実験に成功して今では実用可能な完成品を持っている」
これについてまだ聞こうとしたが、何しろ大掛かりな実験を始めたばかりなので、遠慮した。
その4了 ―その5へつづく―
富士恐竜パーク建設計画その5・人工湖満水
私「完全に青木湖らしくなったな ! 」
田所「うん。しかし、このへんはまだ雲が多いから、水が真っ青にはならないな。ただ、向こうの空が晴れているから、おっつけここも晴れ間が広がるだろう」
私「田所・・」
田所「来なすったな。『恐竜パーク』だろ ? 」
私「お前が首を縦にふってくれるわけはないと承知の上で、俺なりにまとめた考えで、改めてお前に頼みたいと思って来たんだ」
田所「一応話を聞こう。ただし、いいか、まだ勘違いするなよ。これはあくまで仮定の話だ」
私「え ? 」
田所「確かにお前が長年構想を練って来た『富士恐竜パーク』は、それ以上名前を変えないでもいいくらい、土地の名とテーマ・パークの名がピタリ合っている。ただな、くどいがこれは仮にの話と覚悟して聞けよ。ズバリ問題事項を言うとな、『地形』と『気候』だ」
私「充分な安全対策を施した上でもダメということなのか ? 」
田所「富士の裾野というくらいだ。すぐ近くの『富士サファリパーク』ならば、最もセキュリティを考えるべき猛獣についても、見学客が普通の車に乗って徐行すれば、ほとんど問題ない。それに元々アフリカなどで暮らしていた動物の場合でも、現に全国の動物園で、恐らく擬似的に故郷の適切な環境を作り出して飼育されている。ところが、お前が計画している動物は先史時代の恐竜や水棲ハ虫類ばかりだ。そしてそのほとんどが途方もなく巨大な体格と凶暴性を持っている。そこへ来て彼らが棲息した時代はだいたいが亜熱帯気候だ。だが俺は富士山の高原地域の気候に彼らを適応させる技術または反対に、高原を亜熱帯に変える技術をまだ具体的には何も考えていない」
私「田所。先くぐりをするようで悪いが、あれほどダメの一点張りだったお前がたとえ話だけだとしても『仮定』という言葉を使う限りは、もしかして何か、俺にはとても考えつかない秘策のようなものでも見つかったんじゃないのか・・。違うか ? 」
田所「なかなか鋭くなって来たな。そこまでお前が言うなら、一つ、条件を出しておこう」
私「条件 ? 」
田所「そうだ。ただし、この条件も、やはり仮定のうちだと思えよ」
私「わかった。お前の言う条件というのを聞いたからと言って、必ず短兵急な行動には出ないと約束する」
田所「よし、それでは話そう。お前、例の『プレヒストリック・パーク』(※)の地形を知ってるよな。あの古生物パークは、前後に広大な海と切り立った絶壁が自然の隔壁となって、ティラノサウルスなどの危険な恐竜の脱出を見事に阻んでいるな。ところが富士山の麓の広大な高原地域には、そのような理想的な地理条件が存在しない」
(※)「プレヒトスリック・パーク」はイギリス・アメリカなど先進各国が合作し、日本でもNHK教育テレビで放映されたSFドラマ。タイム・ポータルと呼ぶ一種のタイムトンネル装置で、太古の絶滅動物たちを現代の然るべき環境地域に連れて来て飼育するという特撮駆使の壮大な冒険物語である。
私「確かにそうだが・・・。でもそのためにも、頑丈な鉄骨などの柵をあらゆる箇所に建設すれば、少なくとも見る人間への危険対策は施せると思うんだが・・・。甘い考えなのか・・・」
田所「パークの生き物の中にはたとえば翼竜がいるぞ。翼長7m前後のプテラノドンが見物客に襲いかかったら、一撃で肉を裂かれると予想するほうが現実的だと思うな」
私「田所。お前の条件の一つとは、たとえば『時空バリアー』を張るということか・・ ? 」
田所「そうだ。ただしお前の言う通り、これは条件のほんの一部に過ぎない。だが、細かいことをここでいっぺんに話さなければならぬこともなかろうと思うから、とりあえず、時空バリアーという最大条件を提示しておく」
私「もう少し、具体的な話をしてはダメか・・」
田所「いや、お前の質問には答えるよ」
私「時空バリアーは、すべて完成段階に達しているのか ? 」
田所「原理はすべて解決したし、実用にもなる。ただし、バリアーを張り続けるための電力供給も問題の一つだ。じゃあ、時空バリアーのことを少し説明しておこうか」
私「頼む」
田所「時空バリアーには、大きく三種類のやり方がある。まず現代と過去の行き来を両方可能にセットする方法だ。次に現代から過去へは行けるが、その逆を封ずる一方通行のバリアーだ。最後に、今の逆で、過去から現代のみの一方通行だ。ただ、呼び込んだ生物の周囲にバリアーを張って、そこから外部へは出られなくする必要が生ずる場合もある。あとはそれらの応用で、生物を過去へ帰す調整法もある」
私「そうか、時空バリアーの電源維持が最大問題の一つか・・。当たり前だが、費用がかかるな」
田所「フフフ・・」
私「なんだ田所。なんか、含みのあるような感じだな」
田所「まあな・・。俺も、言わば俺の研究と、それに対するお前の計画への熱意とを、このところ独りになると、いつのまにか、考えるようになってしまったのだ。こんなことは初めてだが、俺たちの考えが相乗効果を起こしているように思えてな、覚えず、『時空バリアーつきパーク』なんぞという、俺にしては物好きな想像をするようになっていたんだ。・・・ところで村松 ! 」
私「え ? 」
田所「俺の丸太小屋に電気が通ってないの、知ってたか・・」
私「ええッ、そうなのか ! ? 」
田所「ついでにガス・水道つまり光熱費に属するようなものは一切、自家発電などで充分供給して、・・・それでなお余裕があるんだ」
私「じゃあ・・・さっき電力源に問題があるって言ったのは、実は解決済みってことか」
田所「くどいが、具体策を立てた段階ではなく、おおざっぱな方法を考えただけのことだ。それでたとえば青木湖を出現させるに必要な磁力は、ほら、お前も知っての通り、この地域には、自然の磁場が働く一帯があるだろ。俺の研究実験の規模からみたら、富士山周辺地域の磁力は、無尽蔵に近い」
私「じゃあ、時空バリアーは、青木ヶ原の磁気でまかなえるのか。ただ、お前は青木湖出現の機械装置の作動の際に、電磁場を発生させてるよな。それにはどうするんだ ? 」
田所「ウソみたいな話だがな、俺が使う車のバッテリー程度のもので充分なんだ。何しろ富士山伏流水一年分を集めると、琵琶湖の水量に匹敵するくらいだから、水力の利用などということも出来るのだ」
私「田所。さっき俺は決してあせるようなことはしないと約束したけどな、お前が出来ぬ相談と割り切ってることの、ほんのわずかでいい。これからも折をみてのことでいいから、先史時代の生物を、――あくまでも秘密裡の実験としてなのは当然だが、現代に呼び出して見せてはくれないか。あ、それから、これは俺のほうから田所に、ある意味で安心してもらおうと思って、最前から、言うつもりのことだったんだがな、俺は恐竜パークで商売しようという意思は、とっくからなかったんだ」
この予期せぬ提案に、さすがに田所は驚いた顔をした。それでもしばらくすると、この話に偽りは必ずあるまいなと、念を押したところで、田所は、ポツリ言った。「お前も商売っ気がないヤツだな」
そして私もすぐ返した。
「そうさ。商才なぞカケラもない。だいたい、塾もあっけなくつぶれたしな」と。
もちろん本心は、まだ恐竜パーク計画を心中ひそかに温存していた。いや、そのつもりだったが、身の丈10mほどもある恐竜の実物を、生きて呼吸しているヤツらをとにかく見たい気持ちも大きかった。
どうやら、これで少しずつ表向きは、というより田所に対しては、営利目的ゼロと約束取り交わした、欲も得もない私たちの、言わば壮大な趣味のための恐竜パーク実現に向って、話がまとまりそうなムードになって来た。
田所「おお、ようやく陽がさして来たな」
私「ああ、真っ青な水面になった」
その5了
―
序章第2節その1
につづく―
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