紅石英

※こちらはちょっと古い記述になっております。
新しい記述・写真は こちら をご覧ください

写真はリンク先のページ上部にメニューがあります。

2011年5月23日、別館サイトと記述を統一しました。
ローズクォーツの写真は 別館サイト 別館サイトのほうにたくさんあります。


ローズクォーツ……発色原因実はよくわかっていないらしい

■和名について。

ローズクォーツは、結晶の形を取ることが少ないので、塊状で産出するものを 「紅石英」、ブラジルなどでまれに見つかる自形結晶を 「紅水晶」と呼びます。
「透明度の高いものを紅水晶と呼ぶ」という説明もあります。結晶の形をしていない石英でも、透明度の高いものを習慣的に「水晶」と呼びますが、ここでは、塊状か、結晶かによって発色原因が異なって考えられていることから、塊状のもの(削って形を作ったものを含む)を紅石英、天然の状態で結晶の形をしているものを紅水晶とします。

●紅石英……結晶しているけれど塊状


英名ではローズクォーツだが、和名では紅石英。
丸玉やエッグ、ハートなどに加工されているものは塊状で産出する紅石英。
ただし、鉱物学的には「結晶している」。

●紅水晶……結晶の形を残している

英名ではローズクォーツ、和名では、紅水晶。
ブラジル、アフガニスタン、アメリカなどで、結晶の形をしたローズクォーツが産出するが、量はかなり少ない。


■ローズクォーツは結晶している!

「ローズクォーツの結晶は珍しい」と言われますが、正しくは 「自形結晶のローズクォーツ(紅水晶)は珍しい」です。……というのは、塊状で産出するローズクォーツも、厳密には結晶しているからです。この場合の「結晶」とは、見た目ではなく、分子の構造がどうなっているかという話になります。
結晶していないことを専門的には「非晶質」といい、オブシディアン(黒曜石)や練り水晶(溶融水晶)やガラスがこれにあたります。

目で見た場合の結晶の形、水晶で言えば、見た目にも水晶らしい形に結晶しているものを「自形結晶」といいます。(塊状の石英を削って六角柱のポイント状にしたものは自形結晶とはいいません)
確かに自形結晶のローズクォーツは少なく、時には重機でガリゴリ掘られている塊状ローズクォーツに比べたら、産出量は雲泥の差です。
しかも、ブラジルとマダガスカルはローズクォーツの大産地ですが、ブラジルでは自形結晶のローズクォーツが見つかるのに対しマダガスカルでは見つかりません。
自形結晶のローズクォーツは、ブラジルの他では、アメリカ、アフガニスタンで見つかっており、アフガニスタン産では、特に濃い色合いのものが知られています。

このように、ひとくちにローズクォーツといっても、産地によって結晶形になるならないの違いや色合いの違いがあり、その発色原因も時代や産地によってさまざまな説が立てられています。


※左上の濃い丸玉から時計回りに。 濃い丸玉:透明感はないが色が濃く、くっきりスターが出る。 丸玉:ローズクォーツらしい華やかなピンク。 
マダガスカル産の「ラベンダーロースクォーツ」アメジストではなくローズクォーツだそうである。ピンクと言うよりパステルラベンダー色。 
濃いめのローズクォーツラフカット。もやもやとした内包物が入っているようにも見え、とても細かい針状結晶も見える。 
タンブル:ほんのりピンク。マダガスカルスターローズと言えばこんな感じ? 丸玉:二つ目の丸玉とほとんど同じ色。 
かち割りローズ:桜餅を思わせる、ちょっと「和」な色合い。中央:スモーキーとローズクォーツを混ぜたような不思議な色。


■薔薇色の発色メカニズム

実は、 「発色原因はこれ」とはっきりわかっているわけではないようすです。
古くはマンガンによる色だと言われていましたが、その後さまざまな説が出ています。
ちょっと検索してみたら、その数の多さにちょっとびっくりしたのですが、よく考えてみたら、ローズクォーツの発色原因はたくさんあっても不思議ではないかもしれません。

↑に、ブラジルとマダガスカル産の塊状ローズクォーツを集めてみました。
パソコンのディスプレイによって色合いは異なって見えてしまうでしょうが、ローズクォーツと言っても色合いは均一ではなく、かなりバリエーションがあることはおわかりいただけるかと思います。私が持っているだけでもこれだけのバリエーションがあります。これらがすべて同じ発色原因なのかどうか。

ちょっと拾い集めてみると……(目についた順に)

少量のルチルの微結晶 (注:おそらく塊状ローズクォーツについて)

0.01%ほど含まれているチタン(注:おそらく塊状ローズクォーツについて)

燐イオン(ブラジル産ローズクォーツについて)

デュモルチェ石の微細なインクルージョン(マダガスカル産ローズクォーツについて)

紅水晶は微量の燐(+自然の放射線)(ブラジル産ローズクォーツについて)

紅石英はチタン(マダガスカル産ローズクォーツについて)

微量のマグネシウムやチタン(注:おそらく塊状ローズクォーツについて)

アルミニウムと酸化チタン(注:おそらく塊状ローズクォーツについて)

(注:く塊状ローズクォーツについて)良質な水晶(注:無色透明のという意味)に比べて約10倍のチタンが含まれていることは判明している。
チタンの結晶が均一に分散して内包されることは難しいと考えられるので、紅石英が自形結晶を作りにくいことから考えて、珪素(イオン)の一部がチタン(イオン)と置換しているのではないか。
置換されたチタンイオンが電子の状況によって青~緑色の光を吸収しているために淡いピンク色に見えていると考えられる。
チタンが増えるにつれて赤みを増し、自形結晶にはなりにくくなる。(……とすると、アフガニスタンの、濃い結晶ローズは……?)

微量のチタン、鉄、マンガン

(注:ブラジル、Itinga産の自形結晶ローズ)分析の結果、燐酸マンガンが含まれていた。

(注:自形結晶のローズクォーツについて)含まれるアルミニウムとリンによるもので、自然のガンマ線にさらされたために生じたもの。

※合成のローズクォーツは燐によって発色させている。

……とまあ、実にいろいろありますが、今のところ、ブラジルの紅水晶は燐の混入と自然の放射線による発色で、マダガスカル産のは、チタン(ルチルの微細な針状結晶)による発色という説が知られているようです。


マダガスカル産の水晶に見られた、針状の微結晶。
これは、ルチル?
発色原因の説の中で”水晶に、比重が大きいルチルの微細結晶を均一に分散させることは難しい”としているところがあったが、ではこれはルチルではないのだろうか。
ただ、これがルチルだとしても、それがピンク色の発色原因かどうかはちょっと疑問。(理由は下に↓)

スター・ローズクォーツのスターは、この微細な針状結晶が、結晶の構造に従って規則正しく内包されているために発生すると言われている。


ブラジル産のミルキークォーツ。
色の薄いローズクォーツではなく、全く色味はない。
ところが、このミルキークォーツには、肉眼で見えるか見えないか程度の細い細い針状結晶が無数に内包されている。
そのようすは、上のローズクォーツに酷似している。
この針状結晶がルチルであるならば、ピンクに見えても良いはずだが……?

果たしてルチルが発色原因なのだろうか。

(写真左:水晶内部の針状結晶。よーく見ると針状結晶が見える)
(写真右:針状結晶を内包した丸玉の全体像。ミルキークォーツであってローズクォーツには見えない)

マダガスカル産のミルキー・クォーツ(ジラソル)にも、同様に極小の針状結晶の内包が確認できるものがある。


ブラジル産のローズクォーツの自結晶に見られた内包物。ローズクォーツに内包物が含まれているものはほとんど見かけないように思うので、これもルチルだろうか?
見かけはルチルよりも角閃石類に近いようにも見えるが……。


自形結晶ローズクォーツとコンビネーションを組む水晶は、多くがスモーキーである。
ブラジル産、アフガニスタン産など、国も色合いも異なっていても、その点が共通しているということは、スモーキーの発色原因であるアルミニウム(イオン)が、ローズクォーツの発色にも何らかの影響を及ぼしていると考えられないだろうか?


■スターローズクォーツのスターの探し方

スターローズクォーツはとても美しくて魅力的な石です。ですが、「スター」と表記されていなくてもスターが出る石があるのをご存じでしょうか。
比較的透明感のあるローズ・クォーツ(マダガスカル産)では、探せばかなりの確率でスターが見つかります。
こんな方法で探してみてはいかが?

(1)光をあてる
スターを見つけるには、ペンライトが一番便利です。ペンライトがなければ、お店で石をスポットで照らしているライトの光を利用します。

(2)石を回転させて光の筋を探す
丸玉とか、カボションとかタンブルなど、磨いてある石を収束した光で照らしながらくるくる回転させ、キャッツアイのような光のラインを探します。

(3)ラインをたどるように回転させる。
光のラインをたどって回転させると、残りの光の線が現れて、「*」のようなスターを見つけることができます。
スターの出方は石のよってさまざまなので、交差する三本の光の線のうち、どれかが見えにくく、「×」のように見えることもあります。

(4)反対側も見てみる
スターは、だいたい決まった位置に見え、その反対側にも現れることが多いです。


■薔薇色の中の薔薇色

ローズクォーツといえば、ブラジルとマダガスカルが有名ですが、アフガニスタンでもわずかに産出するそうです。ときに「アフガン・ローズ」と呼ばれるこの石は、ローズクォーツと聞いて連想するやさしく淡いピンクとは違う、薔薇色。濃く深みのあるピンク色です。
2006年には、しっかりとした結晶形を持ち、ブラジル産を超えるのではないかと思われるような透明感のある石も出てきました。従来のアフガンローズよりは淡い色合いですが、色合いはブラジル産に劣りません。





もどる
「石メモ」トップへ
●煙水晶と黒水晶へ
●黄水晶と紫水晶へ

つづく
●緑水晶へ
●青水晶へ
●姿を変えた石英へ




© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: