雨がしずかに降る日には

うつ病の改善と再発



 うつ病がよくなっていくプロセスは、人によってさまざまです。
 治療に要する期間にも大きな幅があり、数ヶ月でよくなる人もいれば、1年治療してなかなかよくならない人も全体の3分の1以上みられます。
 いったんよくなってもように思っても、またつらい気持ちになるというように、波のような動きを見せることも少なくありません。

 どのような状態になったら「よくなった」といえるのかと、患者さんから聞かれることがあります。非常に簡単にいえば、本人の「とてもつらい」という気持ちが、「よくなった」といえれば、よくなってきたと考えることができます。
 気分が沈みこみ、何も面白く感じられず、つらく苦しい気持ちになって、いままでふつうにやっていたことができなくなり、仕事や生活にも不具合が出てくる。それがうつ病の姿です。
 そういう状態から、気持ちがらくになって、仕事や生活を立て直していく。人間関係もよくなってくる。完全に元通りでなくても、少しずつでもいい方向に向かっているようになれば、うつ病が改善してきたと考えることができます。

 うつ病が改善していくきざしは、いろいろな形で現れてきます。
 まず、不眠気味だったひとが眠れるようになったり、前ほど食事がつらいと感じなくなったり、具体的な症状が消えたり軽くなってくれば、少しでも良くなってきたかなと考えます。
 また、身だしなみがきちんとしてきた、声に張りが出てきたとか、女性なら化粧ののりがよくなったなど、外見上から気付くこともあります。そのおうに、外見上の元気さ、エネルギー感のようなものが表に出てくることがあります。
 本人にとっても、周囲のひとたちにとっても、いちばんたいせつなのは、あせらずに、いっぺんによくなろうとしないことです。
 満点じゃなくても、とりあえず60店、70点でもいいじゃないか、ゆっくり、ゆっくりやっていこう、と、そんなふうになるべく気持ちをゆったりらくにすることがたいせつです。


 【心が傷ついたとき】
 私たちは、つらいことやいやなことがあると、その事実から目をそむけたくなります。しばらくはつらい事実から目をそむけて、気持ちが少し落ち着いてから、現実に目を向けようという、無意識の防御です。
 心が傷ついたときには、このように時間が大切な薬になります。うつ病の治療を受けているときには、決してあせらずに、時が経つのを静かに待つことも大切です。


【うつ病の再発】

 うつ病は再発しやすい病気です。これを防ぐためには、まず、症状が改善してからも半年から1年は薬を飲み続けることがたいせつです。これに加えて、本人や周囲の人が、早めにうつのきざしに気付き、気になるときはすぐに医師に相談することがあげられます。

 うつ病が再発するときには、最初にうつ病にかかったときと同じようなパターンをたどることがよくあります。
「早めに気付く」ということは、うつ病にかかったことのない人がうつ病を防ぐという意味でも大切です。身体面(睡眠、食事など)、生活面(趣味、人づきあいなど)、仕事面(集中力、作業の能率など)、気分(気力の低下、イライラ感など)で、なにか「いつもと違う感じ」が現れていないかどうかに注意してみます。

 心身でも生活や仕事でも、小さな変化は毎日のようにありますが、いつもとなにか違うという状態が2週間以上続くようなら専門の医師に一度相談してみるといいでしょう。


〈うつ病の再発率〉
 アメリカの調査データですが、症状の強い大うつ病に一回かかった人の60%、2回発症した人の70%、3回発症した人の90%がうつ病を再発しています。このような再発率は、症状が改善してからも一定の期間にわたって薬を飲み続けることによって、大きく低下することがわかっています。
 ですから、うつ病の症状が消えてからも、半年から1年は薬を飲み続けることが大切です。


⇒うつの経験を生かす

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