「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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ALL TOMORROW'S PARTIES
夜祭り
そこは民家から遠く離れた山の高台の鬱蒼とした陰気な館で
手入れをされてない庭の竹が伸び放題に茂って館全体に暗い影を落としていた。
「戦争が終わるまでよ」
家の中は母親とお手伝いのトキさんと私の3人だけ。
私達は何も無い、暗く冷たいその館で息を潜めて暮らした。
戦争が終わった後も都心の家が空襲で焼け落ちてしまったのでそのまま帰れなくなった。
父親は戦地に赴いたまま行方が知れなかった。
この土地にいやな思い出があるのか母親は外へ一歩も出ようとせず、
痩せ細って、日増しにヒステリーはひどくなるばかりだった。
「汚らしい貧乏人の子供なんかと遊ぶんじゃない」
母は私にも外出を禁じ、私達一家はこの陰気な屋敷に幽閉されたまま1年を過ごした。
私は時々山に遊びに来る同じ歳くらいの子供達が遊ぶ様子をいつも窓から遠く眺めるしかなかった。
母親がヒステリーを起こして叫びだすと子供達は怯えて立ち去るか、
面白がって真似をしたりして、私はいつも決まりの悪い思いで声をかけることもできなかった。
私は母を憎んだ。父を憎んだ。戦争を憎んだ。
なぜ?
子供になぜという言葉は無意味だ。
子供は受け入れ、服従するほかに現実という壁に立ち向くすべを持たない。
しかし私の中でいつしかその思いは螺旋状に回転し、火を噴きそうなほど過熱していた。
なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ・・・・
ある夏の日のこと。母親が神社でのお祭りに連れて行ってあげるといった。
私は自宅から持ち出した一張羅の浴衣を着て、母と二人で夕闇の中会場に向かった。
神社ははものすごい人だかりで盆踊りの音、子供達のはしゃぐ声、的屋の掛け声で騒々しかった。
人並びに掲げられた提灯が赤く夜空を染めている。
まるで自分の家とは正反対の光景だった。仲よさそうにはしゃぐ親子たち。
その喧騒の中を母親は黙って私の手を引いていた。
そのとき、ふいに私の導火線に火がつけられた。
逃げなければ。
導火線についた火はもはや勢いとなって私を促していた。
私は母親の手を振り切ると一目散に走り始めた。
逃げなければ。逃げなければ。
耳をすませても後ろから母親の悲鳴も追ってくる足音も何も聞こえない。
もしかしたら気づいてさえいないのかもしれない。
それでも私は逃げなければ。どこか遠くへ。
私は全速力で走った。
ふいに爆音が轟き、衝撃が地面を揺らした。
驚いて後ろを振り向くと後方に真っ赤な火の手が上がっていて人々の悲鳴や逃げ回る足音が騒々しく響いている。
上空には戦闘機が絶え間なく火の粉を吐き出しながら旋回していた。
また大爆発。
もう辺りは火に包まれている。
戦闘機が私を見つけて空中旋回し、じっとこちらを見据えていた。
私はまた全速力で駆け出した。
逃げなければ。
祭りの喧騒から外れた一画では、同じ年くらいの男の子達4人が輪になって何かに熱中していた。
足を止めてその光景をぼんやり眺めると、私に気づいた男の子の一人が私に近づいてきていった。
「お前、名前は」
「林光子」
「ふうん、いいもんやるよ。」
そういわれて手を差し出すと男の子は拳の中の何かの物体を私に渡した。
よく見るとそれは羽をむしりとられた数匹のトンボの死骸だった。
私は気持ち悪いのを我慢して、それをポケットにしまった。
「ありがとう」
男の子たちは顔を見合わせてにやにや笑っていた。
「なぁ、かくれんぼやるか」
「なあに。それ」
「なんだ、知らないのか。じゃんけんで負けた奴が鬼になって
それ以外のやつは100数えるあいだにどこかに隠れるんだ。
鬼に見つかったら負け」
「わかった」
「じゃあ、じゃんけんぽん」
いいだしっぺのその男の子が鬼となった。
「ちぇっ、じゃ数えるよ」
手の平で目を覆うと大きな声でカウントを始めた。
「いーち、にーい、さーん・・・・・」
「逃げろー!」
皆が四方に一目散に駆け出した。
逃げなければ。どこか見つからないところへ。
私は無我夢中で走った。
辺りはすっかり暗くなり青い鬼火が不気味に揺らめき
顔の無い男女が亡霊のようにおぼろげに彷徨う中をすり抜けて私は逃げ続けた。
そうしていつのまにか境内の最奥まで行き着いた私は本殿の階段に腰掛けた。
一人ほっと息を整えていた私は何か不気味な予感に顔を上げた。
見ると目の前に聳える鳥居がいつのまにか頭を絡ませた二匹の巨大な
蛇となり、私を見下ろしているのだった。
ちろちろと吐き出される舌が真っ赤に燃えている。
「きゃーー」
私は悲鳴をあげて駆け出した。
逃げなければ。逃げなければ。
夢中で走りながら後ろを振り返ると黒い大きな四つの眼が遠くで点になって私を見つめていた。
また亡霊たちの中を掻き分けて、
先ほどの爆発で黒焦げになった死体の山を踏み越えながら私は必死で逃げ続けた。
祭りの回廊はどこまでも果てしなく続いているようで終わりがなかった。
私は一体どこまで逃げればいいのだろう?
遠くでまた爆発の音が響いた。巨大な蛇はもうすぐ後ろまで迫ってきている。
母親の金切り声が響く。
私は耳をふさいでその場にしゃがみこんだ。もう、逃げられない。
ふいに気配を感じて顔を上げると、3人の大きな赤鬼が私を取り囲んでいた。
赤鬼達は私を見て理解できない言葉を話し、大げさに笑い転げている。
どうしよう。逃げなければ。しかし私の足はもう一歩も動かなかった。
一人の赤鬼がしゃがみこみ私にむかって何事かを話しかけた。
・・・・赤鬼ではなく、それは米兵達であった。
その瞬間、周りの亡霊たちが姿を取り戻して私の横を足早にすり抜けてい
った。
遠くで花火の閃光が飛び散った。盆踊りの太鼓の音が狂騒的に鳴り響いている。
米兵の一人が私の手をとって促した。
いけない。私は逃げなければいけない。どこか遠くへ。
逃げなければ。逃げなければ。逃げなければ。逃げなければ。逃げなければ。
遠くでカウントがこだましていた。
93、94、95、96、97、98、99・・・・・
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