インディー(7)




彼女の撮った写真がカラーで掲載されており、また、林檎に対する思いのようなものも、綴られていた。良くは覚えていないのだけど・・・


根が横着者の私は、
こりゃ、満ち潮に誘い水(そんな例えはあっただろうか?)とばかりに、そのフリーペーパーに投稿させてくれと申し出た。

出会ったばかりの相手でも、金銭の絡まないことならば、気軽に頼み事をしてしまうのは、私のキャラクターとも言って良い。

こんなキャラになったのは、いつごろからだろうか?

少なくとも、学生時代は、こんな風ではなかった。

ともかく、彼女とは、林檎を巡っていろいろと話をした。自己紹介もそっちのけで。


ちょうど、 クイックジャパン だったかに、 林檎用語辞典 のようなものが、掲載されており、私は、その日、たまたま持ち歩いていたので、

読んでみるかい?


と差し出したら、
喜々として読むので


そんならしばらく貸してあげるよと言った。
(結局、貸したっきりになってしまったが・・・)


彼女は、たまたま一緒に掲載されていた 鳥肌実 も大好きだと言っていた。


私は、はっきし言って鳥肌実は嫌いだ。

彼の演説を聞いたこともないし、作品に触れたこともないが、この手の人物は、とりあえず避けて通ることにしている。


更に、彼女は 三島由紀夫 が好きだと言っていた。
中でも 金閣寺 が好きだと。


これも、趣味が違うなぁと心の中でつぶやいていた。


三島に関しては、 猪瀬直樹氏 によるすぐれた 分析本 が、存在し、あれを読めば、だいたいの事がわかってしまうような気がする。
それ以上、三島に深入りしても、私の場合は、何も得るものはないだろう。


林檎、鳥肌、三島と並べれば、確かに共通項は存在する。


罪と罰のプロモだったか、日本刀をかついで、分断されたベンツの前にたたずむ林檎の写真があったかと思う。


あの勇ましさ

ドイツ語の古典を巻き舌で歌う林檎


確かに
全体主義のようなものと
似通った姿を呈示することは、林檎の場合、ある。


だが、それは次の瞬間、全く違った価値観を帯びて我々の心象に迫って来る。

彼女のフリーペーパーにおんぶさせてくれと、いきなり依頼はしたものの、話し込むうちに、どうも歯車がしっくりと噛み合わない違和感を感じながら、その日は、彼女とさよならをした。


彼女が
怪獣ブースカ が好きだと言うもだから、それならと、私が知っている御幸町のレトロショップに帰り際、案内してやった。
いたく、その店を気に入ったようで、いつまでもその店にいるので、私は「お先に・・」と言って帰った。

(つづく)



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