インディー(14)




お気に入りの店

気取らず
お洒落で
京都なんだけど京都そのものではない店


「背筋が伸びて首が長いのは、バレエのおかげ?」

「そうですね」

(さっき、同じような会話をルーンでしたはずなのに、嫌な顔ひとつせずに丁寧に受け答えてくれた・・・)

「バレエに興味を持ったことはないなあ・・」

「それではダンスはどうですか?」

「フラメンコなら少しだけ興味があったこともあるよ」


「たとえば、こうやって、お箸を使う動作。これもダンスなんですよ」


「うん、うん」

ワインは、気取らず、少し甘口の CAVA

気に入ってくれたようだった


「私は、高校のときは、ずっと コクトー のファンだったんです」

「あー、あの詩人で絵も描いていた」

「バレエのプロデュースとか、映画監督もやってたんですよ」

オルフェ なら見たことあるね。でも映像トリックが、チャチイ感じでインパクト薄かったよ」


「昔の映画ですから」


「コクトーって確か、ホモでアヘン中毒だったよね」


(コクトーに焼き餅焼いてる?そうかも知れない)


「ホモって純粋だと思いませんか?高校のときは、ホモ漫画とかホモ小説をたくさん読みました」

「確かに純粋とも言えなくもないけど。ぼくは女性の方が好き。レズの方が親近感が強いよ。」
「歳を重ねるに連れて自分の中のオバサンが、歳と共にどんどん領土を拡大しているんだ」


ようやく、えくぼを見せて笑ってくれた。


「私ね、卒論のテーマは、バレエにしようと思っているんです」


「一回生でもう卒論のこと、考えてるの?早いねぇ」
「ぼくなんて、一回生のころは、友達と遊ぶことしか考えていなかったよ」


「私ってね、根が怠惰にできているんですよ。だから、目標がないと駄目になってしまうんです」


「コクトーみたいにアヘン中毒になってしまうとか?」


「そうそう。ホント、そうなんです」

価値観をニュートラルにして会話を楽しめるこの手の相手は大好き


気の強そうな相手ならなおさら


ナオミは、さしてアルコールは強くはなさそうだったが、二人でちょうど一瓶を空け切ってしまった。


ボサノバサウンドに背中を後押しされながら、店を出た。


(つづく)



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