インディー(55)



競馬好きが高じて一口馬主までやっている。


「こちら、カーネギー伯爵。ぼくの競馬仲間で、飲み仲間。大して強くなくて、しょっちゅう潰れています」

「おつぎは、富山の酒、マスイズミ、モンラシェ樽仕上げ!」
「モンラシェってなんですか?」
とナオミ。

「ブルゴーニュの、いや、世界の最高峰に位置する白ワインのブランド!」


「ますいずみ酒造の若旦那が、ワイン狂いでね、モンラシェを寝かせてあった樽を買い取って、そいつで日本酒をしばらく寝かせてからリリースしてるんだよ。いわば、和魂洋裁。洋裁の裁は、才能の才じゃなく、裁くって言う字になるね」
と、しゃべり出したら止まらなくなる私。

「ともかくいただきましょう!」
と目を輝かせるハセさん。
和洋中のあらゆる酒に、ふだんから接しているハセさんも、この手の奇抜な酒に出くわすのは、初めてらしい。


「香りが、ユニークですねぇ」とヒロト。


「ママにも・」と気配りの伯爵。


花より団子というよりも

花よりシャンペン
花よりワイン


ワイワイと盛り上がって来たところで
ようやくヤベのおでまし。


「ちわーっす!」
とデカイ体を屈めて挨拶。


昼間のヤベは、全く冴えていない。

もっとも、昼間っから冴えてるバーテンダーなんて、そうそういないだろう。


「ハセさん、こちらが噂のヤベ君です。彼は、オリジナルのカクテルをいくつか持っていて、ぼくのためにも新しいカクテルを作ってくれたんですよ!」
と、割りと露骨な売り込み。


「オカチャンっていうカクテルなんですよ」
と、シレーッと冗談ぽく盛り上げてくれるナオミ。


だんだん、酒もワインも、味がわからなくなっていく。


ワイン会はいつもこんな感じ。


酔いが回って、理性が薄れて行く中で

(ハセさんは、ヤベのことを気に入ってくれただろうか・・)
と気にかける

(そうだ、ギターだ!チェンジ・ザ・ワールドやらなきゃ!)

(つづく)


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