インディー(129)



私は二人に向かって顔をしかめ、人指し指を唇の前で立てた。

二人とも、まったく悪びれた様子はない。


「これが噂のオカチャン!こちらトモコです!」

「はじめまして!」

「はじめまして」

「キムチサンド3ツ!」

とマスターにオーダーを出す。

この一言でようやく周囲の視線の刺は、こちらへの監視を緩めてくれた。


「飲み物は何にする?」

「あたしは、オレンジジュース!」
とナオミ

「わたしも」
とトモコ

私はビールをオーダー


とりあえず乾杯

「今日は蒸し暑いね」

「そうですね。ノホホッ」

とトモコ。

なんなんだ、その笑い方はー

「いつも、そんな調子?」

「ふたりでいるときは、こんな感じよヌェ!」
と言って
「ヌェ!」
を合唱しながら、顔を見合わせる。

以後、この「ヌェ!」の合唱を何度、聞かされたことか・


「トモコさんは何学科?」


「社会福祉でございます。ノホホホッ!」

いやもうたまらない。

すっかり、トモコペースに乗せられて回りの視線も気にせずにおしゃべりしているうちに、キムチサンドが運ばれて来た。


「ウホホッ!普通のサンドっぽい」

3人で奪い合うように食べはじめる。

やはり、トモコがダントツの勢い。

自分の皿をたいらげた後、ナオミのを奪おうとする。

取り合いをしたあと、また、顔を見合わせて
「ヌェ!」の合唱。


なんなんだ、こいつらー

新手のギャグコンビかあ


「キムチサンドうまいだろ?」
とか切り出すタイミングさえなかった。


「あぁ、うまかった」


「ヌェ!」と顔を見合わせる。

余りに、周囲の視線がこちらに突き刺さるものだから、二人に
「でようか?」
と促した。

こんどは、「ヤキニク!ヤキニク!」の連呼。

酒も飲まずに、良くこれだけハイになれるものだと感心してしまった。


「おめあての店まで少し散歩するよ」

「遠いの?」
とナオミ

「すぐそこ。でも少しゆっくりしようよ。今、食べたばかりだし」

「ウン」

「うわぁ、この商店街なんかとっても涼しいわぁ」
とはしゃぐトモコ。

「ここは真夏でも涼しいよ。夏の穴場だね」

「街全体がレトロしてますね」
とナオミ。

「オレはわりとここが好きだね」

(つづく)



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