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今日は、また葉裏の話をする。しかし、コナラではなく、ゲッケイジュ(月桂樹)の葉裏である。 昨年の秋、思ったよりもずっと多くの昆虫がコナラの葉裏で様々な物語を繰り広げていることを知ってから、その他の木の葉裏のことも些か気になる様になって来た。このゲッケイジュの葉には、何やら色々悪さをする虫が居るらしく、古い葉は屡々スス病を生じたかの様に黒くなっている。其処で昨年の秋、葉裏を調べてみたのだが、残っているのは多量の脱皮殻、糞、その他よく分からないものばかりで、生きている虫は全く見つからなかった。 これは、屹度、春から夏にかけて何かあるのだろうと思い、帰国後少ししてから、その葉裏を調べてみた。先ず、第1番目に見付けたのが、今日紹介するトガリキジラミの1種である。ゲッケイジュの葉裏に群れるトガリキジラミの1種体長約2mm、翅端まで約3.5mm全員が「不可解な踊り」をしている(2008/05/19) 昨年6月に「キジラミの1種(不可解な踊り)」と言う記事を掲載した。この「不可解な踊り」と言うのは、逆立ちに近い状態で、体を左右に周期的に振る行動のことである。ゲッケイジュの葉裏にいたのは、昨年掲載したそのキジラミとよく似たトガリキジラミの1種で、やはり「不可解な踊り」をやっていた。しかも、其処にいたキジラミ全部が同じ様に踊っていた。ただし、各個体の踊りは同期されては居らず、バラバラである(熱帯のホタルの中には、一本の木に無数に集まって同期して光る種類が居るとのこと)。トガリキジラミの1種の拡大.翅が長く普通のキジラミとは翅脈の走り方が異なる(2008/05/19) 1頭を拡大したのが上の写真。昨年掲載のキジラミと腹部の模様は似ているが、ずっと色が濃く、また、胸部の模様も異なる。 テネラル(teneral:羽化直後のまだ外骨格が固まらず、色も定まっていない状態)と思われる個体も沢山居たが、やや赤味を帯びた淡い色をしている。昨年6月のトガリキジラミは黄褐色で、このゲッケイジュの葉裏にいたトガリキジラミの成虫とテネラルの中間とも思えない。別種であろう。テネラルの個体.少し赤味を帯びている(2008/05/19) ゲッケイジュはクスノキ科である。トガリキジラミの仲間には、クスノキに寄生するクストガリキジラミという種があるが、今日のキジラミは様々な観点からクストガリキジラミとは考えられない。かえって、昨年掲載した方がクストガリキジラミに似ている。例によって、キジラミの種類は分からない、と言うことと相成る。テネラルもみな「不可解な踊り」をしている(2008/05/19) テネラルの個体も、みな「不可解な踊り」を踊っていた。多数の個体がみな踊っていると、かなり遠くからでも目に付く。やはり、同種への信号なのだろうか。 ところで、写真には、キジラミ成虫の他に白いろう(←漢字が使えない、野蛮なシステムだ)物質様のものを被った変な形の虫が沢山写っている。これは、このキジラミの終齢幼虫(擬蛹?)とその脱皮殻の様である。若齢幼虫と思われるものは全く見られなかった。少し時期が遅かったらしい(キジラミ幼虫の形態は変化に富んでおり、普通の不完全変態なのか、或いは、仮変態(新変態)をするのか、調べてみたがよく分からない。仮変態とすれば擬蛹の段階がある)上記トガリキジラミの終齢幼虫(擬蛹?).長さ約1.5mm(2008/05/19) 終齢幼虫(擬蛹?)と思われるものを拡大してみた。ろう物質のない側の先端が鋏の様に開いているのは、脱皮殻らしい。下の写真では、丁度中心線に沿って割れが入り、その間に艶のある小さな丸い物が見える。成虫の頭部が出て来たところかも知れない。羽化中の終齢幼虫(擬蛹?)と思われる(2008/05/19) 上2枚の写真は些か鮮鋭度が足りない。先日紹介した「新接写システム」を使えば、もう少し鮮明な画像が得られる筈である。幼虫から成虫への経過を「新システム」による写真で紹介出来れば、と思っている。
2008.06.27
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ここ暫く雨模様の日が続いている。虫も余り現れないが、先日、ウメの葉裏に小さなアブラムシの有翅虫の様なものがくっ付いているのに気が付いた。 アブラムシにしては少し小さ過ぎる。多分キジラミだろうと思って、マクロレンズで覗いてみると、やはりキジラミの1種であった。 翅は長いが、体はそれに比してずっと短い。翅端までは約3.5mm、一方、体長は2mmに満たない。ウメの葉裏にいたキジラミの1種.体長は2mm弱だが、翅端までは3.5mm程度ある(2008/05/19) 先日のトベラキジラミと比べると、体長は約2/3の小さなキジラミである。しかし、腹部の長さと模様は異なるが、翅端までの長さは大体同じだし、頭部、胸部の模様は非常によく似ている。ソックリと言っても良い。・・・と言うことは、これはトベラキジラミの奇形ではないのか?横から見たキジラミの1種.前翅の前縁(写真では翅の下縁)に毛が生えている(2008/05/19) 原画を拡大して比較してみる。撮影する角度がほんの少し違っても随分違って見えるので、比較は非常に難しい。 しかし、幾つかの違いを見付けた。眼の後にある肩の部分、形態学的に何と呼ぶのか分からないが、その部分の構造が互いに異なる。また、本種の前翅前縁(前縁脈)には荒い毛が生えているのに対し、トベラキジラミにはその様なものはない。前から見ると面白い顔をしている.(2008/05/19) ・・・と言う訳で、これはトベラキジラミの奇形ではなく、別種の様である。言うまでもないことだが、種類は分からない。ただ、キジラミ亜科(科とする場合もある)であることは、翅脈の走り方から間違いないであろう。 北隆館の図鑑に拠れば、日本には約160種程度のキジラミが棲息しているとのこと。本種は、我が家で見つかったキジラミとしてはトベラキジラミ、「キジラミの1種」に続く第3番目のキジラミである。一寸少な過ぎるが、実は、その他にもう1種いる。ゲッケイジュに寄生しているトガリキジラミの1種で、現在種類を調べているが、まだ良く分からない。何れ、掲載する予定である。
2008.05.31
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帰朝した日から毎日雨模様で、天気によって気分が左右される私としては、全く意気が揚がらない。しかし、今日は昼頃に一時薄日が射したので気を少し取り直し、何時ものベランダの椅子に座って一服していると、ヒメリンゴ(多分、花が咲かないので良く分からない)の葉に小さなウンカのような虫が留まっているのに気が付いた。 多分、キジラミであろう。そう思ってマクロレンズで覗いてみると、今、我が家にいるトベラキジラミよりずっと黒ずんだキジラミであった。トベラキジラミ.黒色が強い.体長3mm強(2008/05/14) 早速写真を撮って種類を調べてみる。すると・・・、残念ながら「我が家の新種」ではなく、トベラキジラミの特に色の黒い個体の様である。 トベラキジラミは既に昨年の5月に掲載済みである。同じ種類の虫を載せるのは些か気が引けるが、一見別種と思えるほど色が濃いし、当時とはカメラもレンズも異なってかなり解像力が上がっているので、特に掲載することにした。横から見たトベラキジラミ.キジラミという虫は、横から撮ると、何故か胴体が縮んで見える(2008/05/14) このWeblogを始めた頃と比較すると、マクロ撮影時の解像力はかなり上がっている。しかし、等倍マクロではこの辺りが限界であろう。我が家の様な小さな庭では、そう遠くない内に「ネタ切れ」と言う事態が生じる可能性が高い。今年は何らかの工夫をして、1mm以下の虫を撮りたいものだと思っている。
2008.05.14
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マクロレンズを買って等倍接写が簡単に出来る様になってから、今までよく見えないので無視していた、5mm以下の小さな虫が気になって仕方がない。 先日も「何時ものベランダの椅子」で一服していると、目の前のクリスマスローズの葉上で何かが周期的にチカチカ光っている。極めて規則的で、ほぼ0.5秒間隔で光ったり消えたりしている。一体何だろう? 早速マクロレンズで覗いてみると、小さなキジラミの1種が逆立ちをしていた。体長2mm、翅端まで3mm、等倍マクロの限界をやや超えている。 このキジラミが、体を周期的に左右に振っている。翅に陽が反射した時にのみ光るので、周期的に光が点滅している様に見えるのであった。 数コマ撮ったところで、ピンと跳ねて、何処かへ行ってしまった。まるでヨコバイの様な敏捷な動き。キジラミの1種.体を向かって右に傾けている(2007/05/27) このキジラミ、種類はよく分からない。普通のキジラミ、例えば先日のトベラキジラミなどとは異なり、体長に比し随分と翅が長く、また、動作は機敏。クストガリキジラミかも知れないが、情報不足で判断できない。上の写真とは反対に左に体を傾けている(2007/05/27) しかし、一体何をやっていたのだろうか? 求愛の踊りとしか思えないが、周りに求愛の相手なぞ見えず、居たのはこのキジラミ1匹だけである。実際には居たが見えなかったと言う可能性も否定できないが、キジラミは普通は集団的な生活をするから、求愛行動など不要に思える。或いは、単独生活をするキジラミなのだろうか。 この写真を撮ってから数日後、また、同じ所で同じ種類のキジラミが同じ行動をとっていた。この時は、近づいただけで逃げられてしまったが、これでこの奇妙な行動が、この種類のキジラミにとって決して異常なものではないことが分かった、と言って良いだろう。 「踊り」をしていたのは、よく陽の当たる場所である。こう言うところで体を周期的に振れば、周囲に一定周期で反射光を送ることになる。やはり、同類に向けての何らかの信号と考えるのが普通だろう。 世の中、不思議な行動をとる虫が居るものである。もし読者諸賢の中に、キジラミのこの様な行動に付いて何らか情報をお持ちの方あらば、是非御教示を賜りたい。
2007.06.10
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春の花の季節も終わりに近づき、今は常緑樹の若葉が清々しい。我が家ではトベラの新梢が伸び盛り?である。 このトベラ、家を引き継いで庭を整備したときに、真っ先に植えたものである。何故、こんな何の変哲も無い木を一番に植えたのか? トベラは、最近では都心の道路の分離帯等にも植えられおり極普通の植物になってしまったが、本来は海岸性の植物でこの辺りでは珍しい植物であった。 私は、子供の頃、否、今でも海が好きで、小中学生の頃は臨海学校には必ず参加していた。場所は何時も伊豆の下田で、伊東から埃道をバスで3時間も揺られて行ったものである。土埃で髪の毛は勿論、眉毛まで真っ白になった。 学校(在東京都世田谷区)から伊豆方面に向かうと、その内トベラが現れて来て、海が近いことを知らせてくれた。私にとって、トベラは海岸の象徴的植物であり、それが転化して憧れの植物になっていたのである。 毎年、トベラが新梢を伸ばす頃になると必ず葉裏に何かアリマキの様な虫が付く。別に気にもしていないのだが、今年、初めてキチンと見てみた。すると、アリマキも居たが、多くは体長3mm程度の極小さなウンカの様な虫であった。トベラの葉裏に潜むトベラキジラミ.幼虫は葉を巻いてその内側で生活する.脱皮殻が見える(2007/05/03) 拡大して見ると、中々模様の綺麗な虫である。しかし、ウンカの類は種類も多いし同定は無理と思っていたのだが、「トベラ ウンカ」で検索したところ、ウンカではなくキジラミで、トベラキジラミと言う種類らしいことが分かった。一般にキジラミやアリマキは付く植物が限定されている様なので、まず間違いないであろう。トベラキジラミ.ヨコバイ類に似るが触角が長い(2007/05/03) 外見はセミやヨコバイ、ウンカに似ている。しかし、この写真の様に背中側から撮ったのでは見えないが、セミやヨコバイの口吻は頭部の基部下部から出ている(頚吻群)のに対し、キジラミではアブラムシ(アリマキ)やカイガラムシなどと同じく、口吻が前肢の付け根の間から出ている(腹吻群)。キジラミを生きたままひっくり返して撮影するのは難しいので、残念ながら、写真では御見せできない。トベラキジラミ.色の薄い方は脱皮後余り時間が経っていないものと思われる.一寸複雑な綺麗な模様をしている(2007/05/03) このキジラミ、沢山付くと虫の出す甘露に黴が生えてスス病を発生させる事があるという。 しかし、今のところこのキジラミを退治するつもりはない。毎年発生しているにも拘わらずスス病は発生していないし、トベラの生長が良過ぎて困っている位なので、少しキジラミ君達に頑張って貰い、養分を吸い取ってトベラの生長を抑えて貰った方がかえって良いのではないか、とさえ思っている。
2007.05.04
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