昨日の府民の森散歩の続編です。万葉植物展示園ほかで目にした木々と万葉歌を並べてみましょう。
ところで、府民の森というのは、生駒山を中央に、南は高安山、信貴山、北は竜王山、交野山、国見山までの生駒山系の山を縦走する道に沿って設けられた7つの園地を含む公園のことであるが、この縦走路を「竜の道」とも呼ぶらしい。大阪府と奈良県の境界をなす南北に長い生駒山地の稜線が竜に見えるという処からの呼称とか。(小生には竜に見えたことはありませぬが。)まあ、古来から行基や役小角などが修行した山であり、今も様々な信仰の寺院、神社などが無数に山中に在るのであってみれば、竜の道という名も成程である。
(こなら) (クヌギ・つるばみ)
下毛野
三毳
の山の
小楢
のす
ま
妙
し兒ろは
誰
が
笥
か持たむ (巻14-3424)
(下野国の神の山に生えるコナラのように美しい娘は誰の笥<食器>を持つのだろう。)
紅
は 移ろふものぞ
橡
の
馴れにし
衣
に なほ
及
かめやも (巻18-4109 大伴家持)
(紅の色は移ろいやすいものだ。つるばみで染めた着なれた衣に及ぶものではない。)
橡
の
衣
は人皆 こと無しと
いひし時より 着欲しく思ほゆ (巻7-1311)
(つるばみで染めた衣は目立たなくて無難であると人が皆言うので、それ以来その衣を着たいと思うようになったよ。)
(ヒノキ) (サネカズラ・さなかづら)
巻
向
の
桧原
に立てる 春霞
おほにし思はば なづみ
来
めやも (巻10-1813)
(巻向の桧原に立ちこめる春霞のように、ぼんやりと思っているのであったなら、苦労してここまでやって来たりしません。)
あしひきの 山さな
葛
もみつまで
妹に逢はずや わが恋ひ
居
らむ (巻10-2296)
(山のサネカズラが赤くなる時まで、私は妻に逢わずに恋うているのだろう。)
さね葛 のちも逢はむと
夢
のみに
祈誓
ひわたりて 年は
経
につつ (巻11-2479)
(サネカズラのように後にも逢おうと、夢の中ばかりでうけいをしながら、年を過ごしています。)
(カラタチ)
枳
の
棘原
刈り
除
け 倉立てむ
屎
遠くまれ 櫛造る
刀
自
(巻16-3832)
(棘のあるカラタチの原を刈り払って倉を建てよう。糞は遠くになされよ、櫛作りのおかみさん。)
(スモモ)
わが園の
李
の花か 庭に降る
はだれのいまだ 残りたるかも (巻19-4140 大伴家持)
(わが庭のスモモの花だろうか、それとも庭に降った、まだら雪がまだ消え残っているのだろうか。)
(タチバナ) (ツゲ)
わが
屋前
の 花橘の いつしかも
珠に
貫
くべく その実なりなむ (巻8ー1478 大伴家持)
(わが家の花橘は、いつになったら玉に貫けるように、その実がなるのだろう。)
橘は 実さへ花さへ その葉さへ
枝
に霜降れど いや
常葉
の樹 (巻6-1009 聖武天皇)
(橘は実も花も輝いて、その葉さえ、枝に霜が降っても、ますます常緑の樹であることよ。)
君なくは なぞ身
装餝
はむ
匣
なる
黄楊
の
小櫛
も 取らむとも思はず (巻9-1777 播磨娘子)
(あなたがいらっしゃらないならどうして身など装いましょう。櫛笥にしまってある黄楊の櫛も手に取ろうとは思いません。)
(枯れ萩)
萩は万葉集に140余首、最多登場の花であるが、かくも枯れ果てては歌にもなりませぬかな。ならば、偐家持に立ち枯れの萩を詠わせてもみましょう(笑)。
夕づけば 寒くなりゆく 山風の
悲しからずや 萩立ち枯れぬ (偐家持)
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