今朝は青空も覗いていたが、午後になってすっかり雲に覆われて、空は無表情になりました。無表情も一つの表情であるから、表情が無いわけではない。
では、無表情とは何?
これと言って名付けることの出来ない表情、単に名の無い表情ということに過ぎないのですかね。それは見ている側の問題で、表情を作って居る側である、空の問題ではないのである。
こういう議論を「空論」と言うのでしょうな(笑)。
或は、雲を掴むような話、とも言う。
先日のTVでイマソラという空の写真の投稿が流行っているというようなことを言ってましたが、吾輩の「イマソラ」はこんな風でありました。
<参考> #イマソラ
万葉人も「空」に様々な思いを馳せて歌に詠んだようです。空の万葉歌を列挙して置きましょう。小生が、これまでに撮った空の写真などを添えて、イマサラのイマソラであります。
み空行く 月の光に ただ一目
あひ見し人の
夢
にし見ゆる (安都扉娘子 巻4-710)
(空を行く月の光のもとでただ一目見ただけの人が夢に現れます。)
み空ゆく
月讀壮士
夕
去らず
目には見れども 寄るよしもなし (巻7-1372)
(空を行く月讀おとこよ。夜にはいつも目には見るが 近寄るすべがない。)
さ夜中と 夜は
深
けぬらし 雁が音の
聞ゆる空ゆ 月渡る見ゆ (巻9-1701)
(真夜中かと思うほどに夜が更けたようです。雁の声が聞こえる空を月が渡って行くのが見える。)
蒼天
ゆ 通ふ
吾
すら
汝
がゆゑに
天の川
路
を なづみてぞ来し (巻10-2001)
(大空を行き通う私ですら、あなた故に天の川の道を苦労して来ました。)
この夜らは さ夜ふけぬらし 雁が音の
聞ゆる空ゆ 月立ち渡る (巻10-2224)
(今夜はもう更けたらしい。雁の声が聞こえる空を月が渡って行く。)
こと降らば 袖さへぬれて とほるべく
降りなむ雪の 空に
消
につつ (巻10-2317)
(どうせ降るなら、袖まで下に濡れ通るほど降って貰いたい雪が、空で消えている。)
はなはだも ふらぬ雪ゆゑ こちたくも
天
つみ空は
陰
らひにつつ (巻10-2322)
(ひどくも降らない雪なのに、こんなにも大空は曇りわたっている。)
ふる雪の 空に
消
ぬべく 恋ふれども
あふよしなくて 月ぞ経にける (巻 10-2333
)
(降る雪が空で消えるように、身も心も消えんばかりに恋い慕っているけれど、逢うすべがなくて月日が経ってしまった。)
たもとほり
往箕
の里に 妹を置きて
心空なり 土は踏めども (巻 11-2541
)
(往箕の里にあなたを置いて、心は上の空だ。足は土を踏んでいるが。)
(注)往箕=所在不詳の地名
東細布
の 空ゆ
延
き越し 遠みこそ
目言
疎
からめ
絶
ゆと隔てや (巻11-2647)
(横雲が空を通ってはるか向こうへ越えて行くように、遠いからこそ逢うことも、言葉を交わすことも途絶えがちになっていますが、絶えてしまおうとして隔てているのではありません。)
(注)東細布の=よこぐもの、しきたへの、など様々の訓があって定まらない。
この山の 峯に近しと わが見つる
月の空なる 恋もするかも (巻11-2672)
(この山の峰に近いと私が見た月のように、こころ空なる恋をすることよ。)
み空行く 名の惜しけくも 吾は無し
あはぬ日
数多
く 年の経ぬれば (巻12-2879)
(大空に広がるように名が立つことになっても、私には惜しいことはない。逢わない日が多くなって年月が経ってしまったから。)
立ちてゐて たどきも知らず わが心
天つ空なり 土は踏めども (巻 12-2887
)
(立ったり座ったり、どうしていいかわからず、私の心は上の空です。地面は踏んでいるけれど。)
うたがたも いひつつもあるか 吾ならば
地
には落ちず 空に
消
なまし (巻 12-2896
)
(きっと言っているに違いない。私ならば、地面に落ちず、空に消えてしまいたい。)
吾妹子が
夜戸出
のすがた 見てしより
情
空なり
地
はふめども (巻 12-2950
)
(あなたが夜、戸の外に立つ姿を見て以来、心は上の空だ。地面は踏んでいるけれど。)
ひさかたの 天つみ空に 照れる日の
失
せなむ日こそ わが恋止まめ (巻 12-3004
)
(大空に照る太陽がなくなる日にこそ、私の恋も止むのでしょうが。)
(注)照れる日の=照る月の、とする訓もある。
下毛野
安蘇
の河原よ 石踏まず
空ゆと
来
ぬよ
汝
が心
告
れ (巻 14-3425
)
(下野の安蘇の河原を石も踏まず、空を飛ぶ気でやって来たんだよ。お前の気持ちを言ってくれ。)
み空行く 雲にもがもな 今日行きて
妹に言問ひ 明日帰り来む (巻14-3510)
(大空を行く雲であったらなあ。今日行って妻と語らい、明日には帰って来ようものを。)
み空行く 雲も使と 人はいへど
家づと遣らむ たづき知らずも (巻20-4410)
(大空を行く雲も使者になると人は言うけれど、家への土産を託する方法がわからない。)
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