偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2017.11.23
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カテゴリ: 万葉

 今日は、母の一周忌、父の十三回忌の法要でした。母が亡くなったのは昨年の12月3日、父が亡くなったのが12年前の2005年11月24日。ということで、母の一周忌と父の十三回忌を併せて、今日これを執り行うことといたしました。
 母のカラオケ友達の嶋郎女さんもご参列下さいましたが、昨日わが家にお供えをお持ち下さった折にお持ち下さった封筒の中に、彼女が母の霊前にと詠んで下さった和歌が1首したためてありました。

野や山に 匂ひかぐはし 四季の花 それ思ひ出の 花も匂へと (嶋郎女)

 席を変えての食事会の場でのご挨拶の中で、この歌をご紹介させていただき、そのあと皆さんにもご唱和をお願いし、犬養節でこれを皆で詠って、母に捧げることとしました。昨夜のうちにPCでこれを打ち込み、出席者人数分を印刷に打ち出したものを用意して居りましたので、これはハプニングではなく、小生の予め考えたシナリオでありました。勿論、嶋郎女さんに事前のご了解を得てのことであったのは言うまでもありません(笑)。

父母を しのぶこの朝 わが庭の 山橘は ひとつ実をつけ (偐家持)

 法事の会場へと出かけるべしで、家を出る時、勝手口の前の庭の片隅の藪柑子が赤い実を一つ付けているのが目にとまりました。早朝の雨に濡れた赤い実は、ぽっちりと照り輝いているようでもありました。

藪柑子 (2).JPG (ヤブコウジ)

藪柑子 (1).JPG (同上)

 ヤブコウジは万葉ではヤマタチバナである。山橘、夜麻多知婆奈、山地木などと書く。

<追記>
 読み返してみて、ヤブコウジの万葉歌を記載していないことに気付きましたので、何首かある中の一番有名なこれを追記して置きます。

この雪の ( ) 残る時にいざ行かな山橘の実の照るも見む(大伴家持 万葉集巻 19-4226

 話は変わるが、大伴家持の長歌に「知智 (ちち) の実の 父の命 (みこと)  柞葉 (ははそば) の 母の命・・」 (万葉集巻19-4164) というのがある。「ちち」というのはイチョウ説やイチジク説など諸説ある未詳植物であるが、一説にはイヌビワだとも言う。「ははそ」はコナラ、ナラガシワ、カシワ、クヌギなど、これも諸説あるが、コナラやクヌギなどのブナ科の落葉高木のことである。
 防人の丈部真麻呂
(はせべのままろ) の歌、「時時の 花は咲けども なにすれそ 母とふ花の 咲きで来ずけむ (巻20-4323) 」という歌は「四季折々に花は咲くけれど、どうして母という花は咲いたことがないのか」と言っているが、母という名の花が無い訳ではないらしい。貝母 (ばいも) とも呼ばれるアミガサユリがそれである。この花は古くは「母栗 (ははくり) 」と呼ばれていたそうな。
 ということで、今日は父と母に関連した草木をとり上げてみました。
 このアミガサユリとイヌビワは過去の記事でもとり上げているので、その折の写真を参考までに再掲載して置きます。写真をクリックすれば、拡大サイズの写真を、写真下のキャプションをクリックすれば、当該過去記事をご覧になれます。

アミガサユリ.jpg
アミガサユリ

アミガサユリ2.jpg
(同上)

イヌビワ.jpg
イヌビワ






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最終更新日  2017.11.25 08:53:42
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Re:母一周忌・父十三回忌(11/23)  
法事に和歌を犬養節で朗唱する
いかにも貴兄らしい趣向に感心しました
皆さまには印象深いお母様の一周忌になったでしょうね。

お父様の方はわが父と6日違い
ボクも先日13回忌を済ませました。

(2017.11.23 20:58:06)

ビッグジョン7777さんへ  
けん家持  さん
  >法事に和歌を犬養節で朗唱する
   いかにも貴兄らしい趣向に感心しました
   皆さまには印象深いお母様の一周忌になった
   でしょうね。
 たまたま、前日に母のお友達の女性がご来駕、お供えに添えられていた封筒の中に一枚の便箋。そこに、母の戒名〇〇さんへとして俳句1句と短歌1首がしたためられていたのでした。母の親友とも言うべき女性の一人にて、そのお気持ちが嬉しく、急遽思い付いたシナリオというものでありました。
  >お父様の方はわが父と6日違い
   ボクも先日13回忌を済ませました。
 父が亡くなった時は、小生も未だ現役(尤も、その4ヶ月前に社長には翌年の3月末を以て職を辞したい旨の辞職願を提出済みではありましたが)でしたから、ブログなどというものを始める前の時期になります。偶然ですが、貴兄とほぼ同じ頃に父を見送ったことになるのですね。
(2017.11.23 22:56:11)

Re:母一周忌・父十三回忌(11/23)  
小万知 さん
お父様の十三回忌とお母様の一周忌をご家族皆様とお心籠ったご法事で、何より天国のご両親様がお喜びになられたことでしょう。
お母様を偲ばれご親友が詠んで下さった素敵なお歌、お写真のお母様しか存じ上げませんが、美しい笑顔のお母様にぴったりのお歌ですね。
昨年。お母様が天に召された夜もちょうど美しい三日月でしたが、今宵も三日月が冴えています。
お庭のヤブコウジも彩りを添えて見送ってくれましたね。 (2017.11.24 00:46:07)

小万知さんへ  
けん家持  さん
  >お父様の十三回忌とお母様の一周忌をご家族
   皆様とお心籠ったご法事で、何より天国のご
   両親様がお喜びになられたことでしょう。
 親戚や兄弟姉妹が一堂に会することは、こういうことでもないと無い訳ですが、その意味では、死者がそれを可能にしてくれているとも言えるでしょうか。

思ひ出す 人あるかぎり 死すれども 人は生くなり 偲びぞ居らむ (偐家持)

  >お母様を偲ばれご親友が詠んで下さった素敵
   なお歌、お写真のお母様しか存じ上げません
   が、美しい笑顔のお母様にぴったりのお歌で
   すね。
 ありがとうございます。嶋郎女さんが歌を作って下さったお蔭で、皆で思いを共有できたような気分になれ、よかったです。
  >昨年。お母様が天に召された夜もちょうど美
   しい三日月でしたが、今宵も三日月が冴えて
   います。
 昨年の12月3日も三日月、一周忌の昨日も三日月。偶然ですが共に三日月となりましたですね。昨年のそれは父からの「迎え舟」、今回のそれは二人が一緒に乗っての「夫婦船」ですかね。

三日月の 夜渡る船は 母父の 添ひてたぐひて 乗りてやあらし (偐家持)

  >お庭のヤブコウジも彩りを添えて見送ってく
   れましたね。
 大伴家持さんは消え残る雪との対比でこの赤い実の照り映える美しさを詠いましたが、偐家持さんの藪柑子は雨の名残に濡れて照り映えていました。

わが庭の 山橘の 実の照るは 朝のしぐれの 名残りたるかも (偐家持) (2017.11.24 09:06:45)

Re:母一周忌・父十三回忌(11/23)  
こんにちは(^^♪

お父様とお母様の 法要を済まされたのですね。
お二人に対する思いが 溢れて来ることでしょう。
懇意にされた嶋郎女さんの素晴らしいお歌が お母様のお人柄を思い出させてくれ、お母様も喜んで下さっていることでしょう。
昨夜 ももちゃんのブログで 「三日月のブランコ」と書かれていましたので、それを見た途端 ヤカモチさんのお母様が亡くなられた夜の 迎え船 を思いました。
小万知さんのコメントにも共感です。
(2017.11.24 12:48:48)

ひろみちゃん8021さんへ  
けん家持  さん
 はい、命日が近接しているので、一周忌と十三回忌を併せて昨日に行いました。早いもので父が亡くなって今日で丸12年になり、母が亡くなって丸1年になろうとしています。
  >お二人に対する思いが溢れて来ることで
   しょう。
 思ひ出の花も匂へ、ではないですが、父や母の思い出を共有できる人々と共に思い出す「在りし日」のことどもを語り合うことで、思い出がより鮮明に立ち現れて来るという風でもありました。
  >懇意にされた嶋郎女さんの素晴らしいお歌が
   お母様のお人柄を思い出させてくれ、お母様
   も喜んで下さっていることでしょう。
 歌を詠んで下そのお心根が嬉しくて、それを共有したいと、否応なしの「犬養節」での「合唱」でしたが、ありがたい法事となりました。
  >昨夜 ももちゃんのブログで 「三日月のブ
   ランコ」と書かれていましたので、それを見
   た途端 ヤカモチさんのお母様が亡くなられ
   た夜の 迎え船 を思いました。
 そうでしたか、彼女のブログ、未だ覗いていませんので後ほど訪問させていただきます。
 妻迎え船は、万葉びとが七夕の夜に天の川を渡る船として幻視したものであったのでしょうか。山上憶良も大伴家持もそれを歌にしていますが、初冬の夜空を渡る三日月は、偐家持にとっては亡父母が「寄り添ひ乗れる」船となってしまったようです(笑)。

母父(おもちち)の 寄り添ひ乗れる 三日月の 船の行く見ゆ 雲の波間に (偐家持)

 今は、我々、父母と両親を言う時は父を先にするのが普通ですが、万葉の頃は母父と、母を先にするのが普通であったようです。
  >小万知さんのコメントにも共感です。
 はい、異議なし、であります(笑)。
(2017.11.24 14:30:31)

Re:母一周忌・父十三回忌(11/23)  
英坊3 さん
家長としての大切な行い事を恙なく終えられたことはご足労さまでした。

私は父の50年忌を終え・来年は母の23年忌を行うことにしています。

貴方の毎月のお墓参りには感心しています。 (2017.11.25 06:24:16)

英坊3さんへ  
けん家持  さん
>家長としての大切な行い事を恙なく終えられ
   たことはご足労さまでした。
 ありがとうございます。お蔭様で、無事終了です。

  >私は父の50年忌を終え・来年は母の23年
   忌を行うことにしています。
 50年忌ですか。お父様は随分早くにお亡くなりになられたのですね。
  >貴方の毎月のお墓参りには感心しています。
 もう40年余も続けていることなので習慣になってしまっています。墓が遠方だとこうも行かないのでしょうが、幸いに徒歩7~8分の距離ですから、造作もないことであります。
(2017.11.25 08:47:26)

Re:母一周忌・父十三回忌(11/23)  
丁度一緒の年だったのですね、

多少前後しても繰り上げしたりして無理やり合わせますよねこういうのって・・・
(2017.11.25 21:38:30)

ふぁみり〜キャンパーさんへ  
けん家持  さん
  >丁度一緒の年だったのですね、
 そうなんです。母の一周忌の年と父の13回忌の年が一緒の年になりました。命日が母が12月2日、父が11月23日ということで、何でも命日に遅れて行うのはよくないらしく、命日よりも早い日なら少し位早過ぎる日でもよい、などという意見に従い、11月23日にしたという次第。
 浄土真宗独自のものか、他の宗派でもそうなのかは、存じ上げぬのですが、母の亡くなったのは12月3日、父の亡くなったのは11月24日なのですが、命日は何故か12月2日、11月23日と、死亡した日の前日となっています。命日というのは死亡した日のことではないのですね。
  >多少前後しても繰り上げしたりして無理やり
   合わせますよねこういうのって・・・
 まあ、費用の節約にもなることですが、それよりも、近接して法事が2回というのは、主催する方も大変ですが、参列していただく方々にとっても面倒なことでしょうから、多少無理しても併せ行うのが相場なんでしょうね。我が父母の場合は、命日が9日違いですから、別々にやったりしたら、親戚からはブーイングでしょうね(笑)。遺影を父母並べてというのもいいものです。あちらでも仲良くやっているみたいなことが想像されて・・(笑)。
(2017.11.25 22:45:58)

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