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ふるっぴ@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) もうすぐ2016年の夏です。みんな元気…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) furuさん ふるっぴ、お久しぶりです! よ…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) gate*M handmadeさん うお~!お久しぶり…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) 勝手に匿名コメントを残し、怪訝にさせて…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) やっぱり元気やったな!? 良かった。
2012.10.12
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カテゴリ: カテゴリ未分類
まるで、刷毛でサッと描いたような雲が青空に浮かんでいる。
秋のフライトは、澄んだ空気と、陽光に祝福されているね。

ボクは、イワン。ヤンスカ様の所有する妄想航空のキャビンクルーさ。
このごろ、新しい読者が増えたからねえ、こういう紹介入れとかないとだめなんだ。

ボクのオーナーは、マダム・ヤンスカ。
正直なところ、彼女が何をしている人なのか未だに謎だね。
ほら、叶姉妹みたいなものでね。
恋と妄想に生きる貴婦人だ。

そして、今、彼女のそばに控えているのが、妄想鉄道の運輸部長であり、

と、彼の小さな妄想列車かわうそ。

ボク達は、バルセロナへ向かっている。
ヤンスカ様が、ブイヤベースを食べたいと思いついたので、出発した。
ボクは、彼女をミーラチカ。ロシア語で、かわいこちゃんと呼ぶ。

ワガママで、情熱的で、快楽的な、ラテン気質なわがオーナーを
ボクは、けっこう気に入ってるんだよ。

そして、気に入ってるどころか、完全にオーナーに思いを寄せているのが
カーステアーズなんだ。
ボクなんかは、まだまだ最近ヤンスカ様にスカウトされたばかりだけど、
カーステアーズはね、もう10年以上、彼女に仕えている。
最初は、雇主と従業員だった。

いつしか、秘書と言うのか、執事と言うのか、とても近しい仲になったんだよね。

ボクは、恋愛対象が男性だけど、でも恋の仕組みはよくわかってる。
カーステアーズは、どんどん、オーナーへの思いを募らせていったんだ。
ヤンスカ様が、あっちこっちと理想の恋人を探す旅路を共にしながらも、
ずっと、胸の奥を焦がしながら、彼女を見ていたんだよ。

何層にも重なった思いを抱えたまま、彼女を見ていたんだ。

こないだ、とうとう、彼の感情のふたが開いてしまった。
ヤンスカ様が、自分に心を閉ざしていることに腹をたてて、
ついに、彼は、自分の立場を忘れて、オーナーに自分の胸の内を吐きだした。
で、彼女を抱きしめたことに、自己嫌悪を抱いて、妄想列車を去ったんだ。

ヤンスカ様は、必死に彼を求め、ボクといっしょに、彼の居場所を見つけて
カーステアーズを無事に連れ戻すことが出来たんだけど…。


笑えるほど、ぎこちないんだよ、二人は。
あんなに、以前は、二人っきりで過ごしていたくせに、
今では、必ず、ボクやかわうそに一緒に居て欲しがるんだ。

でね、ボクとも二人っきりになろうとしない。
彼女を抱きしめたり、優しくスキンシップをするのは、癒し担当のボクの仕事なのにね。
ミーラチカの中で、カーステアーズを意識するあまり、
平気だった行動にブレーキがかかっているんだよ、おかしいね。

「でね、教えてよ、リーアム。二人はどうなってるの?」ボクが聞くと
「何がだ?イワン」と、早々とそれ以上の会話はしないという意志のこもった一言が返ってくる。
マジで彼を怒らせるのは避けた方がいい。温和で物静かな彼の外見に騙されちゃダメ。

じゃあと、開放的なヤンスカ様に訊ねても、実はあの方は、本気だからこそ慎重になさっているかして、決して教えてくださらない。

ボクからすると、本当にイライラするよ。
さっさと、恋人になればいいのに。
そうか、わかった。きちんと、決定的な言葉がないから、先に進めないんだね。
ボクは、かわうそを呼び出してギャレイに籠る。

「イライラしない?かわうそ」
「ああ~、でもボクのご主人様は、妄想ばっかしてるから、ボクの車体も少し立派になったでしょう?」
確かに、最初はプラレールほどの大きさだったのが、今は二回りほど成長している。
「てことは、リーアムは何とかしたいんだよねえ?」
「ええ。ボクには妄想列車としての守秘義務がありますからねえ、いくらイワン様にでもご主人様の妄想内容はお話しできないんだよ」と、ニヤニヤしている。

ギャレイのカーテンがさっと開けられて、ヤンスカ様が立っている。
「イワン、かわうそ、何をしているの?私が頼んだブラック・ベルベットはまだ?」
かわうそが、いそいそと、ゴブレットを準備する。
ボクも、急いで、シャンパンとスタウトを出してきて、彼女に微笑みながら注ぎ込む。
「ミーラチカ、どうしたの?向こうで待っててよ」
「いいえ、あなた達に、言っておきたい事があるの」

あああ、目が笑ってない、ヤンスカ様。

「なんでしょうか?」とかわうそが媚びるが、無視である。

「私には、自分の感情がわからないのよ、イワン」
「リーアムへの、気持ちということ?」
こくりと頷く彼女をみていると、いったい、いくつなんだよ!と叫びたくなるボクがいるけど、
今までのヤンスカ様の恋愛データベースにない展開だから、仕方がないのかもね。
「あの人のことを、どう考えたらいいのかしら」

かわうそが、したり顔で答える。
「ヤンスカ様あ~、頭で考えるものじゃなくって、心に感じるものでしょう?」
怒られるぞ、かわうそ、と思ったら、わが愛しのオーナーは、床に座り込んでしまった。
ボクは急いで、彼女を立たせて、これまでもそうしていたように、柔らかく抱きしめる。

ヤンスカ様は、緊張していて、まるで、ボクを嫌っているかのような固まり方をしたので、
そっと、手をほどいて、背中を押しながら、ソファまでお連れしたんだよ。

「イワン!この方に何をしたんだ」リーアムが厳しい声でボクに言う。

まったくなあ。
「リーアム、聴いて!ボクから見たら、完全に二人はお互いに惹かれあってる。どうして、さっさとヤンスカ様を恋人にしないんだよ?」

二人が、同時に声を放つ。
「やめろ!」
「やめて!」

ヤンスカ様は、うつむいたまま告げる。
「お願い、言葉にしないで。そんな言葉で私たちを縛らないで」

リーアムは、無言で、彼女を観ている。

「カーステアーズは、それが仕事だから、私に良くしてくれるだけ。私が弱っていたから、あなたは私を支えようとしてくれたのね、ありがとう、カーステアーズ」

どうした?リーアムったら、何で黙っているんだよ。

「もちろん、わがオーナーの望みのままにお仕えするのが私の務めだから。
なんて、いっちゃダメだよ!ご主人様!あなた様の本当の気持ちを言葉にしなきゃ!」
かわうそが叫ぶ。

「いいえ、言葉にしないで。聴いてしまったら、私はそれを信じたくなるわ。そして、信じてしまったら、私は夢をみるようになるでしょう。でも、もう、夢から覚めたり、夢が破れるようなことは体験したくないの。だから、言葉にしないで」
彼女は、立ち上がると、自分の部屋に入ってしまった。

リーアムは、彼女のカクテルを手にして、後を追う。
そして、すぐに、部屋から出てきた。
あえて感情を出さない彼の心の内を読み取りたいけれど、
不可能なんだよ。

コックピットから、まもなくバルセロナへ着陸すると連絡が入った。

重苦しい沈黙の中、ボクは、安全確認をし、ヤンスカ様の様子を見に行く。
何のために、ボクらは旅を続けていくんだろう。
あなたの求めるものは、そこにあるのに。





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Last updated  2012.11.04 03:59:54
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