灰色猫のはいねの生活

灰色猫のはいねの生活

第三話


クロネコ親子と違うところは尻尾がまっすぐ長いってとこかしら。
でも名前はやっぱりクロなのよね。
「私はあの子の飼い猫じゃあなかったケド、あの子を猫アレルギーに発病させた記念猫なのよ。」
おっとりにっこりと笑ったお嬢様風。
さっきのミケとは大違い。
「私はあの子の会社の社宅で飼われていたの。
私の飼い主はあの子の部署の隣町の駐在事務所みたいなところにいたんだけど、あの子はなかなか愛想のある子で、私の飼い主も気に入ってたの。
あの子が20歳の時に社宅まで遊びに来てね。
そうとう猫好きだったみたい。
あの子は真っ先に私のところへ飛んできたの。
でも夕食のお鍋をしてる時に、何故かあの子の鼻水がタラリと流れたの。
その後に近くのお店に飲みに行って、その日は社宅に泊まることになったのだけれど、どうしたことか翌朝にはあの子は鼻水が止まらなくなってしまったの。
鼻水垂れ流し状態になってテッシュ1箱を空にしても、まだ止まらない。
ナゾの鼻水事件だったわ。」
そこにのそのそと通りがかった茶虎猫。
「俺はミミ。」
その自己紹介にあたしは思わず吹き出した。
「これでも小さい頃はミミって感じだったんだ。」
そのまま飼い主に「ミミ」と名付けられたというその猫は、どう見たって大柄のおじさん猫。
「俺はあの子の元彼の猫だったんだ。
時々、家に来て仲良くしてくれたよ。
あの子がお土産に持って来てくれたケーキの紐で遊んでくれたけど、あんまりエキサイトしてふがーとかかってったら、俺の牙はアザラシだとか言って怖がったこともあったっけ。
まあ、最後の方はやっぱりアレルギーが出て、眼は猫目になるし涙も鼻水も垂れ流し状態、喉が腫れて呼吸する度にひゅーひゅーと鳴って咳が止まらなかったり、ひどかったなぁ。
もっとも俺の飼い主がそれ以上にひどいこと、する結果になっちゃったけどな。」
溜息をついてミミおじさんはそう言った。
「俺も途中で元彼に愛想をつかして脱出したんで、くわしくは知らないよ。
でもあの子は元彼のこと、すんごく好きだったっていうのは判ったね。」
あたしたちをすんごく好きな子。
どんな猫も好きで、可愛がって遊んでくれる子。
そんな子が誰かを好きになるのなら、きっと真剣に好きになるに違いない。
その恋を失ったら。
それはとっても辛いことに違いない。
あたしは胸がちくりとなったような気がした。

何なのよ!も~.jpg

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