yuuの一人芝居

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会話小説 雨の夜の男と女 連載中



「これからどうするの」
「どうするって・・・」
「会社のこと」
「そのこと、まっすぐに車をとめられなくなったから・・・」
「なにそれ」
「きっかけ、定年退職に従おうと…」
「ちょっとお手軽ではない」
「だって駐車ラインの中にとめられなくなったから・・・」
「衰えたったこと」
「そう」
「その歳でなの」
「ああ、歳は取りたくない」
「弱気ね」
「そう、弱気なの」
「会社が下請けにどうかって話も断るの」
「そう、ことわって・・・」
「これから何すんの」
「決めていない」
「退職して、来なくなるんだ」
「そんなことはないよ、魚の煮つけとぬたでいっぱいやるのはやめられない」
「あら、私にすっかり惚の字だとばっかり思っていた」
「下心てやつ・・・」
「そう」
「俺には勿体ないよ」
「味噌だらけになってぬたを作らしといて、それはないでしょう」
「いつか、男は懲り懲りだって言っていた」
「こんな商売をしている女の口癖なの」
「知らなかった」
「そろそろ、コーヒーを入れとかなくては、帰るのでしょ」
「追い出すの」
「今の話、恥ずかしくてつづけられないから・・・」
「そうなの、おれて奴は人の心なんか解らないから」
「いいのよ、ゆうちゃんらしいから、許す」
「無粋な人なのだ」
「私の周囲にはそんなおとこがいっぱい」
「そうなんだ」
「そうなの、なぜか…」
「安らぐから…」
「そんな店だった」
「あたりに気を使わずに一人で呑める」
「みんな私の笑顔で飲んでくれていると・・・」
「しんみりコップを空けていた」
「無粋な客に愛想のない女将」
「ママと言わないところがいい」
「コーヒー出そうか…」
「ありがたい」
「みんなラーメンというのに・・・」
「人それぞれという」
「退職してどうするの」
「先のことは考えていない」
「パチンコとカラオケを生きがいにしないで」
「分からない」
「優柔不断なんだから」
「今までと違った生き方がしてみたい」
「女作って子供作って・・・」
「それもいいかな」
「奥さんなくしていままでどうしていたの・・・」
「なに・・・」
「あちらのほうのこと」
「忙しかったから」
「弱いんだ」
「いや、強い…」
「強いんだ」
「がまん強い」
「もう、いや、はぐらかすばかりして」
「子供を残して逝かれ時はどうなるかと思った」
「大変だったね」
「やればできる、そのことを知った」
「よくやったね、今ではみんな独立して…」
「それが親だと思った」
「なによしんみりして、真剣な顔をして」
「思い出していた」
「ごめんね、こんな話に…」
「いいんだ」
「奥さんのこと思い出していたでしょう」
「今日のコーヒー苦い」
「次の日にはおいしいコーヒーを入れるわ」
「それにしてもお客こないね」
「雨らしいから、こんな日は有難いわ、女であることが考えられるから」
「ええっ…」
「女、紹介しょうか」
「なに、突然」
「言ってみただけ、言ってみたかったの」
「帰るよ」
「逃げるんでしょう」 
「ああ」
「その歳で女狂いはしないでよ」
「分からない、狂ってみたいという願望はある」
「若い女にいれあげて・・・」
「それもいいかなと・・・」
「冗談でしょう」
「そのときにならなくては何とも言えない」
「もう少しいたら」
「雨がやみそうだから・・・」
「それもあるわ。帰ったら一人になって女を考えてしまうから」
「ママにもそんなときがあるんだ」
「私もまだ女だから」
「いい人なの、その人」
「乗り気になったの」
「いや、言葉の遊び」
「興味があるんだ」
「なくはない」
「まだ男がなくなっていないんだ」
「一応、男だから」
「悔しい、こんなにいい女が前にいるのにくどかないのは失礼なことだとおもわない」
「紹介すると言ったのは・・・」
「それは言ったわよ、さびしそうに見えたから・・・」
「ああ、鎌をかけたんだ」
「そんな歳になっていることを今感じた」
「歳ていったの」
「言わない」
「聞こえた」
「歳をとると耳が遠くなるっていうから」
「聞きたいことが聴こえなくて、どうでもいいことが耳に入ってくる」
「私なんかいつも・・・」
「気にするんだ」
「またに」
「・・・雨やんだかな」
「話変えたいんだ」
「濡れながらもいいかなと」
「そんな時、ある」
「雨の中を一人の年寄りが孤独をしょって歩く・・・」
「絵にならない」
「やはり」
「悲壮感がにじみ出ているようで」
「みんなそれを背負っている」
「私は背負っていない」
「背負いたくないという願望…」
「かも・・・」
「なんだかさみしくなった」
「やめよう」
「その人って歳は・・・」
「なによ・・・気になるんだ」
「聞いてみただけ」
「言わない、忘れて」
「なにを、歳のこと」
「いいえ、彼女のこと」
「・・・」
「期待してた」
「わからない、言葉が見つからない」
「まだ、男なんだ」
「そんな風に見えない」
「見える時も、ある」
「思い出して様に男を思い出す」
「私も・・・。そんなときどうするの」
「それ聞くの」
「おんなだから・・・」
「今日のような雨の日にぬれながら考える」
「侘しいね」
「ほんと」
「男やもめにうじがわく」
「古いよ、古い。おとこやもめにときときが・・・」
「わかる、でも肩こっちゃう」


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