第09話-1



地面が揺れて、しばらくしてストップし、隆起状態になった・・それで終わりと思っていた

・・しかし、隆起した地面はさらに大きく持ち上がり・・中から、一体の巨大なガーディアンが姿を現わした

アークエンジェルクラス、とでも呼べば良いのか

・・月の遺跡でデストロイが仕留めたとてつもなく大きな羽根を持つタイプの巨大兵器が、火星の地下から現れた


「・・なんだ、アレは?」


・・火星の富豪、以前の依頼者であるゼオはその光景を遠くから見ていた

外部モニターの中の光景だが、それは全く現実味を帯びないものだった

火星の大地は割れ、アークエンジェルの出てきた場所からは無数の小型ガーディアン・・「ギア」の形をした、10メートル台のそれが湧き出すように出てくる


・・これが終末の始まり・・


初老のゼオにも、それはよく分かっていた

・・だが・・彼も、ロディのように、お祭り男と呼べる程のバカなのだ


「おい、俺のギアを準備してくれ」

「へ?・・・ど、どの機体ですか?」


ゼオは避難を促そうとやってきたメイドの一人に、そう言った

・・というか、メイドの少女も慣れたもので「戦うつもりなんですか!?」と驚く事はない(汗)


「ありったけの火器を「ガイスト」に積み込んで、ゲートにやってくれればいい」

「・・はいはい、がんばってくださいね・・・ゼオ様」

「なぁーに、俺に任せておけって!」


久しぶりにギアに乗るというのに、ゼオは自信たっぷりに言う

・・やはり、彼はロディに似ているのだろうか?


ゼオは最新型砲撃機であるG-H/91「ガイストレイス」に乗り込むと、カタパルトから火星の大地に飛び出した

性質上、完全なテラフォーミングが済んでいない赤い大地は、アリのようにひしめくガーディアンのギアに埋め尽くされそうになっている


「・・それじゃ行こうぜ、相棒!!」


誰かのような事を言いながら、ゼオ・・ガイストはガーディアンの群れに突撃を開始した

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・・冥王星軌道上・・

S.Gの刑務所施設があるコロニー「サイクル」


今ここは、同じ冥王星軌道上に現れた巨大な「悪魔」のせいで右を左の大パニックになっていた

・・「悪魔」・・巨大なガーディアンは、火星と同じ小型のギアを送り込み・・コロニーは次々と砲火に包まれていく


・・この刑務所に、あと数日で刑期を終える予定のゲイルがいた


「・・・何が起こっているんだ??」


彼の態度はすっかり真面目になり、今会社に戻ればエリート会社員、というのも頷けるような「いい人」になっていた

・・かつてロディにボコられ損ねたのは、そこまで彼の精神に影響したのだろうか・・


「ゲイル、君も早く脱出するんだ!」

「何が起こっているんですか、一体!?」


彼と信頼関係にある、看守の男がゲイルの元を訪れた


「外で遺跡のガーディアンが大暴れしてるんだ!早く逃げないとコロニーごと沈められる!」

「・・・・」


ゲイルは看守の手を払い、脱出用の港・・ユニバーシップ、ユニバースドライバーの方向とは別に向かって走り出した


「ど、ドコへ行こうって言うんだ!?ゲイル!?」

「これでも私はギアパイロットです・・やれるなら、やらねばならんのです!!」

「ギアでアレと戦うってのか!?・・・正気の沙汰じゃないぞ、勝てるワケがない!!」

「噂に聞けば、ローディス=スタンフォードという男はたった三機のギアでガーディアンを仕留めたそうじゃないですか・・だったら、やってやれない事はない!!」

「・・・そうだな」


看守はゲイルの力説・・論理的でない言葉を、信じてみる事にした

いくらかつての犯罪者とはいえ、今は違う、そう思う事にしたのだ

それほどまでにゲイルの瞳は、「熱血魂」とでも呼べるものに満ちあふれていたのだろうか・・?

手錠を外され、兵器格納庫へ走る彼の背中を、看守は親友を見送る気持ちで見守った


「・・借りるぞ!」


幻魔・・暗いカラーの機体「ファントム」の時とは違う、白い機体・・レストア直後のG-N/100「リベリオン」

かつての妙なプライドは捨てた、その彼の心の色そのものの、真っ白な機体が彼を待っていた

止める者はいなかった

・・すでに逃げ出した後・・逃げる途中の者もいる


・・・だが、ゲイルは一人でも立ち向かうつもりだろう

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7日目の朝、標準時間にして9時過ぎといった所

・・本当に一斉蜂起したガーディアンの攻撃に、世界・・宇宙の全ては大混乱に陥れられた

すでにガーディアンの破壊された「月」を除いて、宇宙の全てで惑星を破壊するほどの力を持ったそれらが暴れ始める

あえて情報をリークしなかったのはサクラの作戦である

・・どうせ最初の攻撃は逃れられないし、動いてもいないマスターの位置を特定する事もできない

だったらギリギリまで混乱を避けた方が、被害もある程度少なくできるだろう・・そういう事だったらしい


・・もちろん、どちらにせよ人々を見捨てる彼女の策は冷酷なものであるが


S.Gの部隊が展開し、各地の惑星ではすでに戦闘が始まっている


・・それはこの、地球でも同じ事だった

ユニオンリバーの面々はそれぞれに仕度を整え、互いの健闘を祈って散り散りになった


セルムラントを離れ、ロディは一人でS.Gの部隊と合流した

無数のギアが海の中に立つ、巨大なアークエンジェルに突っ込んでいく・・しかしリィズ達はいない

彼女達はどうも、情報を得た時点で宇宙にいたらしい


・・まぁ、ロディは彼女達の力を借りる事などはなから念頭に置いてないのだが


「・・・」


そびえ立つアークエンジェルの巨体

・・大天使、とはよく言ったものだ・・・それはギアや、ガーディアン・ギアのようなものとは比較にもならないほど大きい

二度目の対面、そして今度は勝つつもり・・いや、確証を持って、勝つと断定しているロディ


「どけ、てめェら!!」


S.Gのギア隊に下がるように言うと、ロディの乗ったゼファー・・背中に身長の3倍はありそうな「巨大な剣」を背負ったゼファーが、大空高く飛び上がった!

ラッチが外れて、背中の巨大な剣は宙に舞う

柄を握り、以前と同じあの構えで・・一刀両断を決めるゼファー

身長が縮んでも、パイロットの攻撃方法は猪突猛進・・全然変わりもしない

だが、今度は前回のようにアークエンジェルの相干渉バリアに阻まれる事はなかった

巨大な剣・・「フォトン・サーフィングブレード」と呼ばれるそれはフォトン粒子を応用した・・・(以下略)


ともかく、何事をも自分の信念、根性で貫くつもりの彼にとって、最大の力となるものだった


アークエンジェルは一瞬で真っ二つになり・・周囲に展開していたガーディアン・ギアも一斉に行動を停止する


「・・・最高だぜ、相棒!」


前回の雪辱も果たし、ロディは最高の笑みで、最高の相棒ゼファーを賞賛した

・・暴走する前に、このようにガーディアン全てを破壊する方法も考えたが・・

フォトン・サーフィングブレード(P.S.B)のような特殊な兵器でもない限り、それは無理な話だった

もちろん、ユニオンリバーの四機のギアでそれを実行するには、あまりにも時間が足りなさすぎた


「地球はとりあえず救ったぜ」


あっさりと言いのけて、ゼファーが思いっきり跳躍する

・・そこへどこからともなく飛んできたリニアバードにつかまり、ゼファーは大気圏外へと飛び出して行った


ユニオンリバーが取る行動は一つ、マスターの破壊

そのために必要なのは、一度全てのガーディアンが完全に起動してしまう事だった


全てのガーディアンをサクラとシュウがチェックし、情報ネットワークの中枢部にいるたった一つのマスターを発見する

彼らの力を持ってしてもそれはそうそうできるような事ではなく、早期実現は難しいだろう


・・だが、誰しも「あきらめる」つもりも、それを「無理だと思う」つもりも毛頭なかった


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第09話「REVERSE TO 10days(後編)」


仕事内容(メニュー):ガーディアン・マスターシステム「エリクシル」の破壊

目的地・標的(ターゲット):特定不能


依頼人(クライアント):頼まれなくたってやってやる

注意事項(ワーニング):3日目の夕暮れには世界が滅ぶ、それまでになんとしてもマスターシステムを破壊する!
今回は被害だのなんだの言ってられねぇ!さぁド派手にやってやろうぜ!
ユニオンリバー社一世一代の大勝負でェ!!



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