第11話-L




また僕は・・・気を失ってばかりだなぁ・・・

朦朧とする意識の中で、はっきりと思い出す事があった


・・右腕!!


飛び起きて右手を見ると・・・・ある

・・なんだ、腕が吹っ飛ばされたのは夢だったのか・・・・・


「お目覚めですか」


瀬奈ちゃんが部屋・・改めて見回すとココはクオリファイド艦内の僕の部屋・・そこへ入ってきた


「ああ・・おはよう」

「もう10時ですわよ?・・「おはよう」はちょっと違いますわ♪」

「そうか・・・」


・・今・・・いつの10時?・・ていうか今!?


「ら・・瀬奈ちゃん、ちょっと変わったね・・?」

「え?・・・・・そうですか?オミ様?」

「お・・オミ・・・・・さまぁぁぁ!?!?」


オミはベッドを落ち、壁際まで後ずさり、さらにべったり張り付いて叫んだ

瀬奈は頬を真っ赤にしながら言う


「だって私をあそこまでして守ってくださったのはあなたが初めてなんですもの♪」

「だ、だからって・・・・態度まるっきり違うよ・・」

「私はファーストキスまで捧げたんですの♪一生どこまでもお供致しますわ、私のダーリン様♪」

「・・・・・・・・・・」


予想外の展開になんだか頭の処理が追いつかなくなってくるオミ

・・悪い夢でも見ているんだろうか、そうだ・・僕は瀬奈ちゃんにもう少しかわいげのある態度をとってもらいたいと思ってこんな曲がった夢を見ているに違いない、そうだ、きっとそうだ、目を覚ませばまたあの毒舌が・・・

瀬奈が後ろから抱きついた

それではた、と我に返る


「キス・・・?・・・・・ドコで?」

「それはもちろんオミ様の腕が飛ばされて、気絶してしまった直後ですわ♪」

「・・・やっぱり僕の腕・・」


握ったり開いたり、それでも違和感はない

・・そしてこの瀬奈の変わりようもどうやら夢ではない・・?


「・・じゃあこの手は何・・?」

「治ったようですよ、なんかのナノマシンで」

「クオリファイド・・・・って!!」


クオリファイドがニヤニヤしながらオミを見ている

今度はオミが真っ赤になる


「どういう事なんだ・・ナノマシン?誰かに治療してもらったのか?」

「いつの間に「落とした」んですかぁ~?・・いたいけな女の子を~・・そんなにしちゃうなんて♪」

「違うっ!!僕は今の今まで意識がなかったんだって!!何かしたり出来るわけ・・」

「ロリコン」

「ぐっっ・・・・!」

「オミ様ぁ~♪大ぁーい好き~♪」


何がなんだかわからない・・・


オミは混乱する頭の中で、はっきりと思い出す事が一つだけあった

・・確かに誰かが口づけをした、それは感触として覚えている・・・


「・・私、立派なお嫁さんになってみせますわ~♪」

「待って待って!気が早い!!僕は仕事を・・」

「フフフ・・・」

「何を笑ってるんだよクオリファイド!?な、なんだそのよからぬ企みをしてそーな目はぁ!?」


・・こうして・・・


よくわからない内に、どうやら護衛の任務は完了したらしい

・・最も、「今回は」の事だけど。

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・・数時間後・・惑星アイオネウス地表


・・宿泊先のホテルに荷物を取りに戻ると、アル、ラグナとよく見る連中の姿があった


「アルさん、どうしたんですかわざわざ?」

「ああ、仕事が片付いたんでね・・・」


アルはオミの方を見て、瀬奈がにこにこしながらひっついているのを確認すると黙ってしまった

昔からの彼女を知っているメンバーだ・・ここまで様子が豹変したら驚かないワケがない


「・・・君、この娘に何したの?」

「僕は何もしてませんって!!」

「またまたオミ様ぁ~♪しっかりする事はしてくれたじゃないですかぁ♪」


アル、ラグナ・・その周囲にいた人々の目がジト目になっていく

オミは逃げ出したい・・あるいは泣き出したい気持ちだった

もちろん瀬奈が言ったのは身を挺した必死の護衛、その事を賞賛した言葉だが・・


「・・・引き続き瀬奈ちゃんを「よろしく頼む」よ」

「うわ~ん、なんか含みのある言葉じゃないですか~(泣)」

「・・でも迂闊に手ェ出すとあの人に殺されるだろうから、気をつけてね。」


アル(とラグナ達)はさわやかに「にこっ」と笑うと、オミに書類を一束渡して去っていった

・・オミにもわかるほど、重大な勘違いを抱えたまま・・・・・


皆が去った後で、オミはホテルロビーの真ん中にくずおれた。

・・地球に戻ったら彼のあだ名はきっと「ロリコン」とか「幼女ハンター」だろうから・・・・(本人の一方的観測)

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クオリファイドランサーに戻ると、オミはメイン、瀬奈はサブシートにつく

クオリファイドが現れてシステムを起動し、艦は発進準備を完了する


「セルムラントに戻ったらオミ様にお祖父様を紹介しますわ♪」

「・・・また話が進展してる・・(泣)」

「お祖父様の作る食事はとても美味しいんですの、きっとオミ様も気に入ってくださると思いますわ♪」

「・・・へぇ・・瀬奈ちゃんのお祖父さんってコックか何か?」

「ええ、喫茶ユニオンリバーというお店の・・」

「ふ~ん・・ユニオンリバ・・・・・・」


オミの頬を汗が伝った

・・汗・・数本、いや、数十本・・滝のようになる

・・油の切れたロボットのようにギリギリと後ろを向いて瀬奈を見る


「・・瀬奈ちゃん」

「はい?」

「・・お祖父さんって何歳くらい?」

「そうですねぇ・・50になるかならないかですわ♪」

「・・・・実はヨーロッパの人だったりする?」

「ええ、そうですわ♪」


満面の笑みを浮かべる瀬奈と対照的に、オミはどんどん青ざめていく


「私の両親は行方不明ですの、だから代わりにアルおじさまが面倒を見てくださって・・それで、お祖父様は・・」

「・・・・」

「元民間最強の戦士にして現在は最強のコック、喫茶店経営者としてある意味頂点に立つ男 「ローディス=スタンフォード」 ・・でしょ?」

「そういう事ですわ」

「・・・やっぱり・・伝説の白い騎士か・・・」


・・伝説の白い騎士、そういうコードネームで呼ぶのはオミのような比較的若い世代のT.Cである

あの熱血バカをそういう名で呼んで、似合うもなにもない。


(一度会ってみたいとは思っていたんだけど・・まさかこういう形で会いに行く事になるなんて・・)

そういえば瀬奈の名字・・「皇李」と言えばロディの娘「アリア」と結婚した「レン」の名字である

つまり瀬奈は「皇李瀬奈」であると同時に「ライナ=スタンフォード」でもあるわけだ。


「知らずに護衛してたんですか、オミ様?」

「・・知ってたなら情報くらい公開してくれよクオリファイド~!!」

「・・普通最初に確認するでしょ、護衛対象の身分くらい?・・最もバリアだの基本装備を置いていくような方にそんな事を求めるのは無理な話ですか(笑)」

「・・・・・」


・・オミはふてくされて寝る事にした。

事実だから反論のしようもない、おかげで撃たれるわ右腕吹っ飛ばされるわ・・


・・それにしても僕を助けてくれたあの女・・何者なんだろう・・?

・・綺麗な人だったよな~・・・・


彼女を思い出していると・・不意にライナがぎゅっ、と抱きついてきた


「オミ様ぁん♪」

「・・・・・・・・」


・・現実は厳しいんだなぁ・・・・


痛烈に感じながら、オミのT.C人生は始まった

・・いきなり色々な波乱を抱えつつ・・・・・




だが、ここで忘れてはならない事が一つだけある。




主役はあくまでローディス=スタンフォードの孫「ライナ=スタンフォード」である。

流石ロディの孫だけあって滅茶苦茶強い推定7歳児・ライナ

彼女はどうして狙われているのか?そして何故アル達の護衛を断ってきたのか?

・・数々の謎を抱えつつ、今・・ライナは夫と決めた男と共にT.Cとして宇宙を駆ける!


・・・果たして、いつか決着がつく日は来るのだろうか。

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・・・・第11話 終

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