Pay It Forward  < alfa146ti >

Pay It Forward < alfa146ti >

その2



 6月19日ベイフィールドのスーパーマーケットでコーラを買いベンチで一服していると、何やらもっさりしたおっちゃんが話しかけてきた。インディアンだ。
お決まりの「何人(なにじん)だ?」「どこから来た?」「どこへ行く?」「一日、何マイル走る?」などの質問をされ、ちょっと話をしてから“Have a nice day!”と自転車に乗ろうとすると、「家に来て休め」と言ってくれる。
これは願ってもないチャンスだ。 旅の目的である「わらゆるワクを越えて友人をつくる。 固定観念をはがす」にピッタリではないか。 
一応、迷惑にならないか尋ねてから、彼の家族が待つ車に自転車を2人がかりで積み込む。15マイルくらい走っただろうか。「家はこの近くだ」と言ったのに車は地道をどんどん進んでいく。
「インディアンは危ない」というある白人の言葉を思い出してしまう。 辺りが見渡すかぎり原野という感じになった時、突然ポツンとトレーラーハウスが現れた。 どうも彼らの家らしい。「もうユルト(パオ) には住んでないんだなあ」しばらく家で休ませてもらったあと車で少し離れた街まで連れていってもらい警察や裁判所、シティーホールみたいな所など一つ一つ中に入って職員に紹介ってもらう。  こんなに親切にしてくれるのにどうして「インディオは危ない」という固定観念が生まれるのだろう。 僕は黄色人種だら特別なのだろうか。 それとも、彼らが特別なのだろうか…。 結局泊めていただくことになった。 
お陰で認識は改まったが、良くない点も再認識した。 どうも政府の保護が逆効果になっているように感じる。職を持たない人も多く、一日中、酒を放さない人も目に付いた。 また花園の花を平気でむしったりする「いいかげんさ、無責任さ」も見つけた。 家族は男尊女卑の傾向があるようで、僕が泊めていただいた家庭の場合は、奥さんが何を言っても彼は自分勝手にしていた。 車の運転も奥さんがハンドルを握り、彼が指す方向に“Why?!”と言いつつ従っていた。 たった一日、たった一家庭だったけれどひどく子供がかわいそうだな」と思った。 またごく当然のようにビデオが置かれていたのが印象に残った。

 6月20日 昨日行った街の保健センターに日本人が働いているというので「まさか」と思いつつ連れていってもらう。 なんと本当に日本語を話すノリコさんという日本人女性が働いていた。 久しぶりに日本語を話すと、意志疎通はこんなにもも簡単なのかと思う。 彼女は今日の午後から僕と同じくらいの歳の息子さん二人と、息子さんの友人計四人でロッキーの避暑地テリュライドヘドライブキャンプに行く予定で僕もどうかとさそって下さる。もちろんO・K。 お世話になるとにし、待合わせの時間など打合わせして、出発の時間までインディアン向け新聞取材を受ける。 避暑地のテリュライドはブルーグラス・フェスティバルで賑っており、辺り一面にテントの花が咲いていた。

 6月23日 さて、いよロッキーも本場。 今日はウルフ・クリーク峠(10850ft=3300M)を越えなければならない。 ここから峠までの高度差は約3700ft(1150M)。「押し」は覚悟しなければならないだろう。 水を満タンにしてスタート。 1時間半ほど走るともう脚が上がらなくなる。 「次のカーブを曲がれば」「次こそは」と何度も期待を裏切られること3時間半。 空模様が怪しくなってきた頃、やっと待望の峠に到着。辺りにはまだ雪が残っている。 ここから東に降った雨は太平洋には流れないのだ。 途中で飲んだロッキーの清水のうまさは忘れることは出来ないだろう。 汗が引くと、とても半袖ではいられないので少し着込む。 
「さあ、下るぞ」と走り出すとなんと風が吹き上げてくる。 おまけに道路工事。 「まあ、雨が降ってないだけましや。へたすれば雹やからなぁ」と工事中のおっちゃん。 旗振りの女の子に”Have a nice day”と声をかけて前の車の砂ぼこりの後を下っていく。
何台かのモーターサイクリストに手を振ったり、空想にふけってボーっ走っていると突然、バイクが後から追い抜いて止まる。
「何や?」と思い、近づくとなんと日本人。 彼は僕が手を振ったのでUターンしてきたという。路肩に座り込み、1時間くらいそれぞれの旅について話す。 彼はバイクでアメリカ一周をしていて、今ニューヨークからロサンジェルスに帰る途中であり、僕より英語を話せず、辞書さえ持っていないというすごい野郎だった。  アドレスを交換し、写真を撮って”Good Luck!””You,too!”で別れる。
                 <ウルフクリーク峠>
ウルフクリークパス

 6月25日 今日は標高9010ft(2746M)の峠越え。 ウルフクリークよりは高度差もなく、なだらかだろうと地図から想像する。 とりあえず朝食をしっかりとってと思い、安そうなカフェに行く。 すると突然カフェの中からオーナーらしいおじいちゃんが飛び出してきて、早口でわめき散らし”OPEN”と書いてあるのに「そこに自転車を置くな!」「ここもダメだ!」「あっちへ行け!」と中に入れようとしない。 どう考えてもできないので、説明を求めようとすると”Sa・yo・na・ra”と日本語らしい言葉を繰り返し、手を振る。 いいかげん腹が立つが、戦争の後遺症かな、とあきらめ、朝食抜きで峠に向う。 こういうことは初めてだけに後味は悪く「もう一度戻ってとことんやり合ってみようかな」などと考えながらペダルを踏む。 お陰で峠はあっという間に通り過ぎた。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: