にっこりむし@花屋の日々

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出産体験記2



水中出産したというと、大抵の人が驚いた顔をするけれど私にとってはとても自然だった、というかやりたいことができたという感じ。母にも子にも楽な方法と聞いてはいたけれど、楽しくて思い出に残る出産ができた。
予定日を4日過ぎた朝、少し出血があった。9時半頃、陣痛らしきものが始まり、昼少し前には20分毎くらいに痛みが来るようになった。早々と“帰って来てコール”をしたので1時半頃、夫が帰宅。陣痛は少しずつ少しずつ強まり、間隔も短くなっていった。早く進んで欲しかったので、3時頃、夫と娘と3人で散歩に出かけた。1時間の散歩中痛みは4回やってきて、その間は、しゃがみこんだり、立ち尽くしたりしてやり過ごす私に「ママ、どうしたの?」と娘が心配そうに聞いてくれた。
散歩から帰った後、気を紛らわせるためドラマのビデオを見ているうち、陣痛はほぼ10分間隔になってきた。(この間、陣痛が来ている時以外は平気な顔でドラマを見、登場人物に感情移入し、文句まで言っていた私。)6時半過ぎ、母にリクエストしたクリームコロッケをしっかり食べる。この頃陣痛は7,8分間隔になっていた。しばらくして、眠くてぐずりだした長女を寝かしつけた後、8時半頃産院へ向かう。途中、車の中から見えた桜がとてもきれいだった。こんな春めいた素敵な夜に生まれてくるなんて幸せな子だなあと思ったのを覚えている。

「なんだか元気ね。ほんとに痛い?生まれるの明日の晩だったりして」よほど元気そうに見えたのか、挨拶した私に助産婦のNせんせいが心配そうに聞いた。そして内診。子宮口が10センチ開いてやっと赤ちゃんは生まれて来るのだけど、その時点で子宮口は6センチ開いていた。「これなら今晩生まれるね」という言葉にほっとする。せんせいには痛みに強いのね、とほめられる。この時点でこんなに元気だなんて、私はやっぱりすごく頑丈らしい。入院する部屋、出産する部屋に案内してもらい、バスタブにお湯が張られる。いよいよだ。
水中出産用の部屋、“タブルーム”には一般家庭のよりほんのちょっと大きめのバスタブが置いてある。9時を少し回った頃、マタニティー用の水着を着てバスタブに入った。(丈のすごく短いワンピースとパンツのセットになっている水着で、ワンピースの方だけを着てお湯に入った。)水中出産の最大のメリットはお湯の中に入ると、とてもリラックスできるということだと思う。お湯の中に入ると緊張がほぐれホッとした。 “あったかくって気持ちいい。やっぱり水中出産にしてよかった”と思う。夫はバスタブの左横に椅子を置いて座り、右横にはせんせいが待機。「お湯の温度はどう?」「明かりはこれでいい?」「お水飲む?」などあれこれと気を遣ってもらう。こういう時、何でも好きなようにしていいよ、と言われるのはとても心地よいことだった。あかりを少し落としてもらい、CDをかけ、バスタブに寝そべる。さすがに陣痛はお湯に入っても消えなかったけれど、上の子の出産時は砕けそうに痛かった腰の痛みが全くないのが驚きだった。それから、陣痛が来ている間、水の中だと簡単に体勢を変えられるので、ベッドの上で身動きが取れないよりもずっと楽に過ごせた。

10時15分頃、いったんお湯から上がって内診。子宮口は9センチまで開いていた。“もう9センチ?陣痛ってこんなもんだったっけ?” もちろんそれなりに痛いのだけど前回はもっと辛かったように思う。お風呂に戻ると「いきみたくなったらいつでもいきんでいいよ」とせんせい。さすがに痛みは究極になってきた。この頃は“しまった。やっぱり無痛にすればよかったかも”との思いが頭をかすめる。この痛みを終わらせたい一心で必死にいきむ私。夫が私の眉間によったしわを「リラックスリラックス」と言いながら伸ばしていた。何回かいきんだところで「もう頭が見えてるよ。触ってみて」と言われ、そっと手を伸ばすと何かやわらかいものに触れた。髪の毛だ!あとほんのちょっとがんばれば赤ちゃんに会える。男の子かな?女の子かな? 10時43分、赤ちゃんはつるるん、という感じで飛び出してきて私の胸の上で元気よく泣いた。上の娘にそっくりな女の子だった。なんと、へその緒が通常の半分以下の長さしかなく、赤ちゃんが出て来る時にちぎれてしまうというハプニングがあったのだけど(あんな頑丈なものを引きちぎるほどの力をよく持っていたものだ、とびっくり。2歳になった今、やっぱり、サルのようにおてんばです)
入院から2時間と少しという安産で、私にとっては100パーセント満足の出産だった。

その夜は夫と赤ちゃんと3人、川の字で眠った。入院用の部屋が3つしかないこの産院には新生児室というものはなく、生まれたてほやほやの子供を真ん中に夫と3人で過ごすことができたのは、すごく嬉しかった。赤ちゃんは本当にほやほやと新しくて、私は嬉しくてよく眠れなかった。こんな幸せ気分の中、ひとつだけ気がかりだったのは家でおばあちゃんと待っている上の娘のことで、4人家族になった記念すべき夜、みんなで一緒に過ごせないのがせつなかった。二人の子供の母になった私は“2人ともうちに生まれてきてくれてありがとう”という感謝の気持ちを忘れずに2人を見守っていきたいと思う。お世話になったNせんせい、色々と助けてくれた友達、夫と娘達に心からのありがとうを。

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