講談バージョン第二幕


再びのおめもじでございます。
 元来、ねこの話なんて申しますと講談の世界では、鍋島の猫騒動、左甚五郎日光の眠り猫、というところが、まっいわゆる十八番なんでございますが。
 本日に限りましては招き猫のありようなどという、通好みの演目でご機嫌を伺います。
 時は寛政、江戸の町に招きの猫が流行まして、今戸今戸と草木もなびく、時勢は落語を御禁止にされまして、町人には御用金と称しまして重い税金が課せられ、今日の平成不況とどこかあい通じる世情でございます。
 お先不安の真っ只中、庶民の楽しみが次から次と消えてまいりまして。神も仏ももうーいかんとも出来がたい、こうなったからには、猫の手でも借りたくなるのが人情というもので、それまで神社でもって奉られておりました所の猫が一躍時の人ならぬ時の猫と相成りまする。
 招き招かれいつの頃からか、ねこが福をば招き候事、これ天にかのうた自明の理とあいなりまして、招き猫誕生となります。
 まず、出でましたのが左手おば持ちまして招きまする猫、開運招福のご利益はお客を招いて大繁盛の猫、時の時勢からいまだ右手の招きは登場いたしておりません。(おほん)

 社寺に安置されております所の猫様は、おおむね船守りと、主夜(しゅや)神尊とでございまして、船守りと申しますのは読んで字のごとく海運水運の守護でございます。
 何ゆえ猫様が船を守るのか、と申しますと、なんと!これが全世界共通の大問題と大いに関係があるというから驚きで、かの新大陸おば発見致しましたことでその名を轟かせましたコロンブスを筆頭に、名だたる船乗りの生死を分けたのが、まさに!猫様!という事実を皆様ごぞんじでありましょうか?(パパンパン)

 船の大敵嵐にあらず、ビタミン不足に水不足、そして止めがねずみであります。
一度船中に紛れ込みましたるこのねずみ、鼠算にて殖えまして、貴重な食料、はては、積荷の穀類と食いちらかして、その果てに木で出来ました船底についにその歯を突き立てまして、あわれ、もろともあい果てる、と、かような惨劇が繰り返されまして、ついに猫様の登場でございます。(まってました!)

 悪いねずみをたちどころ、退治し船の安全に、無くてはならじと褒められて、祭られまして、船守りあまた社寺にて祀られて、今に至って居りまする。

 方や主夜様はと申しますと、こちらは夜に目の利く猫様が月無き闇にも目を配り火付け、盗賊、辻斬りと多々ある夜の厄災より、御身を守ると言い伝え。

 これをもちまして猫様がいかに尊いお方であるか、皆様方にもしっかりと、お分かりそうらえば、あたしも語ってよかったと、胸なでおろし、ひとまずは(パン)

 拝聴感謝の御礼を、御ねこ様に成り代わり、一段高こうは御座いますが、
 平に、平に感謝でますはこれまで。






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