2-18 ブレスレット



智紀の部屋を出た有芯は、帰る気にもなれず、かといって職安に行く気にもなれなくて、商店街をぶらぶらと歩いた。女物の服やアクセサリーを、なるべく見ないようにしながら。

しばらく歩いて、彼はたまにのぞくアクセサリーショップの前で立ち止まった。

あ、これいいかな?

手に取ったのは、シルバーのブレスレットだった。燻した黒と、輝くシルバーが交互に繋がっている。

これ見たら朝子は何て言うかな・・・考えてしまってから、有芯は気持ちが重くなるのを感じ、ブレスレットを棚に戻そうとした。その時、

「・・・雨宮?」

名前を呼ばれて、有芯は振り返った。彼の斜め45度後方にいたのはキミカだった。

「キミカ先輩」即座に彼の顔に苦笑が広がった。「お久しぶりです」

「なーにがお久しぶりよ、情けない顔して」キミカも苦笑した。「そうだ。今、暇?」

有芯は後ろ頭をぐしゃぐしゃにしながら言った。「忙しそうに見える?」

「見えない」キミカはため息をつき、有芯が手にしているブレスレットを見てふふっと笑った。

「それいいじゃない。アサの好きそうな色ね」

有芯はふーっ、と息を吐いた。・・・見透かされていたか。

有芯はブレスレットを戻すに戻せなくなり、結局レジまで持っていく羽目になった。5800円・・・失業中の身には痛い出費だ・・・。

有芯は会計が済み店を出ると、沈んだ表情を隠そうともせずに言った。「先輩、何でここにいるんだ?」

「あんたこそ、何でこんなとこ一人でぶらぶらしているの? 傷・心・君」

わざわざ傷心と有芯をかけたキミカの言葉に、有芯は怒る気にもなれなかった。「・・・・・うるせえよ」

「・・・元気ないのね」

「元気なわけあるか」

キミカは表情には出さなかったが、驚いていた。彼女は有芯のこれほど切羽詰った表情など見たことがなかったのだ。

こいつがアサを愛してるって、本当なんだ・・・。キミカは今更ながら、実感せざるを得なかった。

「・・・ちょっと、歩かない?」

キミカの誘いに、特に予定のない有芯は頷いた。




19へ


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: