once 8 二人の過去(2)


***8***

そして、合宿がやってきた。

部員総数11名、みんなが嬉しそうだ。

智紀はめがねを新調し、その姿が「俳優の生瀬さんに似てる!」と、朝子に勝手に「ナマっち」とあだ名をつけられ、有芯は部長の朝子を気遣い、朝子と一緒になって部員をまとめた。

朝子ともう一人の3年、キミカは一生懸命打ち合わせと、台本の確認。

1年の女子4人組、信&ナミ&楓&茜ははしゃいで、まるで遠足。彼女達は身長も低くて、まるで中学生だ。

1年の男子奥くんは大人しくみんなの様子を伺い、同じく1年男子のカケルは1年女子組と一緒にはしゃぎ、1年のもう一人の男子ヒロは………。

「ねぇ、あんた、合宿に何変なジュース持ってきてるの?!」と、朝子に呆れられていた。

合宿最初のメニューは、台本の読み合わせだった。読み合わせと言っても、円になって座っている以外は本番さながらで、台本を順番どおりに読んでいき、それをみんなでチェックするといった形態だ。

「楓、ここの台詞は特にもっと感情を入れないと。何にも伝わってこない! 次……」

熱心にダメ出しする朝子を、有芯は頼もしく、そしていとおしく思った。

ひととおりのメニューが済み、夕飯を食べると、朝子は窓辺で煙草に火をつけながら、とりあえず1日目のメニューをこなせて、ほっとした。

しかし就寝時間近くになって、事件はおきた。

ヒロが、さっきのジュースをみんなに勧めだしたのだ。

朝子はにおいだけで吐きそうになり、飲むのが本気で嫌で、必死になって有芯と逃げた。しかし、狭い合宿場に、そうそう逃げ場などあるはずもない。

「朝子先輩~有芯先輩~。もう逃げられないですよ~」

ヒロが言った。他の部員達は早々と捕まったのか、ジュースの餌食になっていた。

「………先輩」

有芯が朝子に耳打ちした。

「……………え!?」

朝子は最初戸惑ったが、頷いた。

目配せをして、朝子と有芯は、同時に後輩達の包囲網を突破した。

「先輩が逃げたぞ~!!」

二人は、追って来る後輩達の目をごまかすために、中庭の死角に隠れていたが、やがてそこに人気がなくなると、校舎に向かって走り出していた。



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