once 76 銃声



俺は晴れ男だ。行動的になりたい日には晴れてくれる。

俺は、雨の日が嫌いだ。湿気が、心まで湿らせていくから。

有芯は、いつまでもそこに立ちつくしていた。朝子の言った言葉が、胸をしくしくと痛ませる。

“彼、頼りになるし、とっても優しいのよ。誰かさんみたいに、私を傷つけて捨てたりなんて絶対しない人なの”

確かに俺は高校時代、朝子を傷つけた。

でも・・・お前は俺を愛していると言ってくれた。俺に身体を許してくれた。それも虚像だったのか?!

そんなこと・・・信じられるか・・・! 先輩のくせにヘタな芝居しやがって・・・!! 有芯は血が止まるほど拳を握り締めた。

しかし俺と一緒にいる間、朝子はずっと苦しんでいるように見えた。泣いてばかりいたし、俺はそんなあいつを、やっぱり傷つけてばかりだった。

だから、あいつはウソをつかざるを得なかった・・・。こんなに愛していても、俺ではお前を幸せにできない、ということか?! 朝子・・・。

「やっと、愛し合えたと・・・思ったのに」

有芯の頬を、涙が伝った。

「やっと、心から愛していると、気付いたのに・・・」

不意にひどいめまいがして、有芯の身体はぐらりと揺れた。

その時、「お前、見つけたぞ!」という聞き覚えのある声と共に銃声が響き、有芯はその場に倒れた。





77へ


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: