越中屋*四十五右衛門*商店

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『歌謡曲の構造』その1


例の小泉文夫著「歌謡曲の構造」を借りてきました。

前の日記で提起していた疑問点の解明をとりあえずやっていきます。


>(1)楽曲の基調となっている音階のコードを類型化し、日
>本調に聴こえるものと、洋楽っぽく聴こえるものに分類する
>方法。

少し間違っていました。
実際に先生が着目しているのは「音階」だけです。
基調となる旋律にどの音が用いられているか、逆に言えば、
どの音を用いずに旋律を作っているか、です。

次のように6つのグループに分類されました。

(1)4・7抜き短音階 ラ・シ・ド・●・ミ・ファ・●
(2)2・6抜き短音階 ラ・●・ド・レ・ミ・●・ソ
(3)4・7抜き長音階 ド・レ・ミ・●・ソ・ラ・●
(4)自然的短音階 ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ
(5)長7度を用いる短音階 ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・#ソ
(6)全音階的長音階 ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ

(1)~(6)へ向かうにしたがって日本伝統的なもの~西洋的なものに段階的に分類したものです。
大瀧さんの類型で言うところの〈右派〉<->〈左派〉の対立にほぼ、該当します。


さて、あの73年のリストで、日本調、洋楽っぽい、中道のボーダーラインはどこに引けるのか。
73年の曲群をはめ込んでみます。自力ではできないので、
「歌謡曲の構造」巻末の一覧表にある73年の曲名を上げます。

(1)4・7抜き短音階
くちなしの花 渡哲也
なみだの操 殿様キングス

(2)2・6抜き短音階
夜空 五木ひろし

(3)4・7抜き長音階
なみだ恋 八代亜紀
私の彼は左きき 麻丘めぐみ
赤い風船 浅田美代子
危険なふたり 沢田研二
女のみち ぴんから兄弟
喝采 ちあきなおみ

(4)自然的短音階
心もよう 井上陽水 
神田川 かぐや姫
母に捧げるバラード 海援隊

(5)長7度を用いる短音階
学生街の喫茶店 ガロ
若葉のささやき 天地真理
終着駅 奥村チヨ

(6)全音階的長音階
あなたに夢中 キャンディーズ
個人授業 フィンガー5
あなた 小坂明子
心の旅 チューリップ


以上のようになります。
わたしのプレイリストには(5)のグループの曲が1曲もなかったので、皆さんご存知の73年の曲を上げてみました。


少しピンとこない部分も正直あります。

ちょっと解説しますと
(6)全音階的長音階 (5)長7度を用いる短音階、こちらは元来日本は無い音階であるが、遣隋使以来ずっと渡来していたもの。

(4)自然的短音階 もやはり外来のものでヨーロッパやロシアの民謡に多い。

(2)2・6抜き短音階 平安時代からある日本固有のもの。民謡、童謡の音階。
平安時代以前に外来の音楽や楽器を導入した雅楽とは違う音階。
これは明治の唱歌教育の際に排除されました。

(1)4・7抜き短音階 (3)4・7抜き長音階 は伝統的なものではなく、輸入した上記のものを日本独自に簡略化したもの。


歌が大衆に〈流行〉する、とは〈歌い継がれる〉ということのようですね。
一般の人にとっては楽譜なんて馴染みのないもので、それが広く広まったのは〈歌い継がれた〉からでしょう。
楽譜も楽器もできない人にだって、レコードやラジオがない時代にだって歌の〈流行〉はあったんです。
つまり、その〈流行〉するカギは、歌いやすさ、馴染みやすさ、ではないでしょうか。
4・7抜き、2・6抜きという5音階が受け入れられた理由は、その歌いやすさ、なのかもしれません。

第11講 『歌謡曲の構造』その2へ

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