輝き煌めくカオス

輝き煌めくカオス

宝石に魅せられて


どのような時代が来ても、健康な知恵を働かすことで勝利の人生が得られる。
宝石に魅せられた斉藤守氏は社長のお抱え運転手からスタートして自動車修理技術を会得し自動車修理工場を経営する。趣味の宝石研磨技術をスクールで学び天性の美的感覚と独創性を生かしコンクールに初作品「ぶどう」を出品して銀賞に輝く。翌年には「日本の紋章」で見事に最優秀賞を獲得して、副賞でアメリカへ行った。ジェムホビー協会の理事を務めたり数々の経験を重ね宝石商に転進した。転進した当時は素人がすぐに潰れるだろうと見られていた。しかし、宝石研磨教室を開いて好評を博し、店は繁盛した。更に進化し続けて現在はマジュッシャンとして弟子数百人を率いる団体のTopとしても活躍している。
☆ジュエリーのお店、鑑定に定評のある安心のお店
藤宝飾 横浜市金沢区泥亀1-25-3
京急サニーマートB館2F 京浜急行金沢八景駅徒歩5分
藤宝飾インターネットショップ
宝石に魅せられて
 一歩はいって驚いたのは、靴のめり込む毛足の長いじゅうたんであった。部屋の中央のテーブルには、スポットライトに照らされた宝石が美しい光を放ち、魅惑的な足を見せて中国服の娘達が、なんでも好きな飲み物を運んでくれる。気がつくと部屋の隅では、バンドが静かに音楽をかなでていた。昭和四十八年、香港のヒルトンホテルでのことである。
 友人に誘われた私は、T経済研究所という名称の、ちょっと得体の知れない会が主催した”香港ダイヤモンドフェスティバル”に参加した。参加者は三百名で、この旅行は旅費も宿泊費も無料ということであった。ただ交換条件として、ヒルトンホテルの会場に顔を出し、ダイヤモンドを 見て気に入れば買い、気に入らなければ見るだけでよいという。物事ただほど高いものはないというが、数多いダイヤモンドを見たかった私は、最悪の場合は旅費を払えばよいのだからと思い、無料の招待の内容には大して期待していなかった。
 しかし、着いた晩の飲み放題食べ放題の豪華な歓迎会には、度肝をぬかれてしまった。そのうえ、ホテルの室といい食事といい想像以上のもてなしにすっかり篭絡され、多少のおつき合いはやむをえないなと観念した。ずうずうしい私でさえそうであるから、純情なほかの人々は、ヒルトンホテルのダイヤモンドフェスティバル会場にはいったときには、催眠術にかかったように買う気充分になってしまった。
 日本にいるときには宝石店を覗いたこともない人々が「日本で買えば二倍も三倍も高い」と言うだけの説明に、一も二もなくうなずくと大金を払っていた。熱気が熱気を呼んで、ひとつの宝石に何人もの買い手がつく。私はルーペを出して見て歩いてがっかりした。色もカットも悪く内部にカーボン等がある石が大半で、日本で買っても、もっと安く買えると思える石ばかりである。
「買った宝石は添乗員がカバンに入れて税関をフリーパスで通るから税金は払わなくともよい」主催者の人はお役人が聞いたら目をむきそうなことを言って、税金を心配して買い渋っている人に説明している。そして「今回三十万円以上の買い物をした人には、三ヶ月後に行う三泊四日のフィリッピンツアーに無料招待する」という。友人は私の反対を押し切って黄色っぽい二キャラットの石を買ったが招待旅行の手前それを止めることはできなかった。大分たかい買い物である。私は、目の色を変えて物色している人々の群れを、宝石を全く知らない頃だったら同じことをしただろうと、冷めた目で眺めた。

 美女の涙によって人生を狂わせる男性もいれば、私のように、その涙にも似たきらめく宝石によって、職業を百八十度転換させられてしまう人間もいる。
 二十四・五年前、手にしたブラックオパールのあやしい美しさに、こんな宝石を自分の手で自由自在に磨けたら、人生どんなに楽しかろうと考えた。ところが機会は意外に早くやってきた。新宿に宝石教室ができ、素人でも三ヵ月も通えばダイヤモンドを除いて、ルビー、サファイヤまでひと通り研磨できるようになるという。私の経営する自動車の店は、ある程度時間が自由になったので早速、入学手続きをとった。

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