『あかいふうせん』父子家庭日記

『あかいふうせん』父子家庭日記

出生届と死亡届



戸籍課のそれぞれの窓口に書類を提出しました。

死亡届の受付では小声で表情を変えず淡々と書類を受け取り作業に入りました。

次に出生届を受付担当者に出すと私に

「2週間以内に提出していただかないと書類は受理できないんですよねぇ。」

と皮肉った言い方をしてきた。

私が「分かっていたけど出しませんでした。」と言うと

「えっ!」と言う表情で

「どういうことですか?」と担当者は訪ねました。

「妻が出産で容体が悪かったため、妻の容体が回復してから一緒に決めたかったん

です。」と答えると、

「そうですかぁ、でも2週間以内と決まっているので困るんですよ。気をつけてくだ

さい。それで、今日は奥さんもいらっしゃってるんですか?」と言いました。

私が「妻は亡くなりました。今日死亡届と一緒に出生届を出しにきました。」と言

うと担当者は表情を変え

「えっ、そ、それはお気の毒でした。2週間と決まってますが、少しくらい過ぎても

問題ないですから。すぐ手続きしますので後ろでお待ちください。」

と言って慌てた様子で作業を始めた。

しばらくすると書類の手続きが完了して手渡された。

書類には新しい家族として娘の名前が記され、私の隣にあった妻の名前が消され

『除籍』という文字が記されていた。

当たり前の事務手続きとは言え、私にはかなりこたえました。

本来であれば夫婦で我が子の名前が記された戸籍を見て喜ぶのが普通なんでしょう

が私にはその余裕はなく、書面上に記された妻との別れにただ力なく見つめるのが

精一杯でした。

「妻の死から一週間もたたないうちにこんなに別れがあるなんて・・・」という現

実を受け止めるので精一杯でした。

病院で妻が他界した瞬間の別れ、やっと帰ったと思ったのに実家から葬儀場へ運ば

れた時の別れ、火葬場で妻の遺体が焼かれるときの妻の遺体と最後の別れ、そして

今日戸籍上除籍となり夫婦ではなくなりました。

死んだからって別に別れようなんて思ってないのに、死を受け入れられたわけでも

ない。心はまだ結ばれている。心は妻の帰りを待っているのに、時間と共に妻との

距離はどんどん遠くなってしまう。悔しいのか悲しいのかも分からないとにかく苦

しい。孤独、寂しい、今自分がどんな状況なのかも表現できない1日でした。


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: