恋涙 ~ renrui ~

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交差点 ~ Chase The Chance(灰斗編)





私は会社の前の大通りからタクシーを拾うとタクシーに乗り込み場所を運転手に告げた。


しばらくタクシーに揺られ到着した先は永遠と見た、あの高速ビルの真下。


私は運転手に代金を支払いタクシーを降りると回転式のドアから中に入り受付へと歩いた。


『すみません、観月茉奈と申します。至急、九条鷹邪さんにお逢いしたいのですが』


「アポイントメントはお取りですか?」


『いいえ、ですが、どうしても逢わなければいけないのです』


「アポイントメントをお取りになって再度お見えになってください」


当然のことながら門前払いをする受付の女子社員に私は何度も頭を下げたが聞いてはもらえず困って視線を泳がせると視線の先にエレベーターから降りてきた永遠を見つけ駆け寄る。


『永遠さん』


「まっ茉奈さん?どうして此処に?」


『どうしても、鷹邪に逢いたいんです、お願いします』


驚いていた永遠も私の困ってる様子に何かを感じ私を最上階にある応接室に通してくれた。


椅子が何脚も置かれた大きなこの応接室に鷹邪が来ると思うと何だか妙な感覚に思わず笑ってしまった。


しばらくすると応接室の扉が数回ノックされ短く返事をすると応接室の扉は開き、永遠に続きスーツ姿にきっちりと髪を纏めた鷹邪が入ってくる。


『忙しいのにごめんなさい』


私は立ち上がると鷹邪に頭を下げた。


『いや、いいから。頭、上げて?』


「鷹邪、そんなに時間は取れませんから」


永遠は鷹邪に念を推すと室内を出ていき、私の態度に慌てた様子で言葉を次いだ。


『私、鷹邪に…灰斗の傍に居てって言われた、けどそれは鷹邪の言葉で私は何も、鷹邪に返事してなかったと思うのです』


私が顔をあげると鷹邪は窓際に立っていて、私は胸に手を当て下げ鷹邪の傍に歩き迷わず瞳を見据えた。


『茉奈、そうだな。俺は自分の考えを押し付けてお前の気持ちは何も聞いていなかった』


私の言葉に納得したように頷きながら鷹邪は身体ごと私のほうへと向きを変えた。


『…灰斗と別れたこと、後悔していなかった訳じゃありませんでした。

それでも、自分で出した答えなのだからと納得しようとしました。
鷹邪のこと、好きです。でもそれは恋愛ではありません。
私は今でもやっぱり灰斗が好きなんです、彼はきっとこの先も私の中から消えることはありません。』


自分の気持ちを言葉にしているのにちゃんと上手く言葉に出来ていないような気がした。


それでも鷹邪は黙って私の話しに耳を傾けてくれていた。


『そうか、なら、今度は手離したらいけねえな?行くんだろ?兄貴のところ?送って行ってやる』


話し終えた私の頭を鷹邪は撫で微笑みを返してくれた。


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