恋涙 ~ renrui ~

恋涙 ~ renrui ~

前世の追憶四



私は今もあの恐怖に怯えていました

心はどこにいてもうわの空で仕事も手につかない状況

『どうした?最近様子がおかしい?』

そんな私の様子に気付き優しく声をかけてくれたのは

藤堂雪、同じ会社の営業課に所属している私の婚約者

私は彼を心配させまいと笑顔を作り平気と手を振る

彼は優しく明るくで社内でも人気で交際3年目でプローポーズされた。

私の態度に首を傾けながらも私の頭に触れ

『無理するなよ、心配だから』

囁くように告げるとまた今夜と言って別れた。

私は雪の背を見詰め自分の頭を軽くコツンと叩き

気合を入れ直す。

夜、雪のマンションに向かう途中・・突然の雨に降られてしまい

私は鞄を頭で雨よけにしながら小走りなった。

しかし雨あしは強まるばかりで私は雨をしのぐ為店先の軒下に飛び込んだ

するともう1つの人影に気付き私はその人物を確認すると

思わず声をあげてしまう

ずっと逢いたいとなぜか思っていた人、低めの声に透き通るような

黒髪を持つ人で雨に濡れた髪は毛先から雨露が落ちている

彼は私に気付く優しい笑みを向け私の手を引き軒下に引き込んでくれた

『この間はどうも、僕も雨に降られてしまって』

彼の傍に寄るとまた懐かしい感傷に捕らわれてしまう

でも不思議と隣にいることが苦痛でもなく私達は他愛も無い話

をした、逢って2回目にも関わらず私は彼との時間が楽しくて仕方なかった

まるで時が止まっているようにさえ感じられた。

現実に引き戻したのは雪専用の着信メロディだった

気がつけば雨もすっかり上がっていて空から光が差し込んでいた

彼は携帯に出ない私を不思議に見ると『それじゃあ』と

笑顔で手を挙げ軒下を出ようとする。

私は彼の背に不意に声をかけ呼び止めてしまった

なぜそうしたのか分からなかったけど・・・・このまま離れてはいけない気がした。

雪専用のメロディはもう聞こえなくなっていて空には

美しい七色の線が架かっていた。

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