恋涙 ~ renrui ~

恋涙 ~ renrui ~

前世の追憶七


私は・・雪を裏切った。

愛してくれる雪を私は。。。それでも夜兎と関係を持った事に後悔はなく
それがどうしてなのか分からない。

ただ・・胸の奥が暖かい幸せに満ち足りていて、私は手を伸ばして夜兎の
艶やかな黒い髪に触れると自然と笑みが零れた

上体を起こしシャツを羽織りベットサイドに座るよう足を降ろしたと同時に
携帯のバイブ音が鳴る・・・雪からだと確信を持ち携帯を開く

ディスプレイには雪の名前が刻まれていて私は出ることが出来ずにいた
暫くすると光続けていた携帯のディスプレイは静かになった、私はシャワーを浴びると夜兎を起こさないように洋服に身を包むとテーブルにメモと書き残す

  ― ありがとう ―   梓

もう逢うことなどないだろうと心の何処かで理解していた、私が彼について知ったことは名前が夜兎という事とマンションで一人暮らしという事・・そして胸に大きな傷跡があるという事。

たった一度の関係、夜兎だってそのつもり。。そう私も・・・不意に胸に痛みが走る
私はベットサイドに近づき夜兎の頬に口付けをすると部屋を出て自宅へと戻った

自宅へ戻ると慌しく着替えを済ませ会社へと出社した。。本当は行きたくなどない気持ちでいっぱいで雪にどんな顔をすれば良いのか分からないでいたから・・それでも
朝から外せない会議があった私は仕方なく会議の書類に目を通す。

書類を持ち会議室に向かう途中、力強い腕に手を掴まれ・・見上げると雪だった
その表情にはいつもの笑顔は無く私は無言で見詰める事しかできずにいると雪が口を開いた

『昨日はどうして家に来なかった?』

短い言葉の中に心配と疑心が見えた気がして、私は思わず目を伏せ

「ごめんなさい・・・」

ただ謝る事しかできず、そんな私を雪は優しく抱きしめて頭を撫でてくれた

『もういい・・無事なら』

私はその言葉に涙が溢れ、罪悪感に打ちひしがれもう決して夜兎には逢わない・・・雪だけを見ようと誓った。

午後になり私は上司に呼ばれた、会議室の一室を訪ねると新にうちに配属される事になった三名を紹介され・・私は挨拶しながら顔をあげるとある二人の顔を見た瞬間言葉を失った

三名のうち一人は女性で女性の隣にはあの薄気味悪い視線を送っていた男・・そしてその隣には

「・・・夜兎・・・」

私は思わず名前を呟いた

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