恋涙 ~ renrui ~

恋涙 ~ renrui ~

前世の追憶壱拾四


その躰は更に密着するように回された腕に力が入る

「やめて、私は雪と結婚するの!!貴方も知っているでしょう」

その言葉を紡いだ瞬間少し緩むのを感じ私は一気に緑青
の躰を突き放すと慌てて部屋を出ると直ぐに階段を下りようと
手摺に手を置くも胸がドキドキして動けずにいた

「なんなの、一体」

モタモタしているうちに部屋から緑青が怖い顔で出てき
私を捕らえようと手を伸ばす

「嫌っ」

私はその手を払いのけ階段を勢い降りるも逃げ道がなく
私は困った様子で辺りを見回す。すると背後から靴音がし
私は近くにあった給湯室に逃げ込み身を隠す

足音は近づき給湯室の前まで来ると私は祈るような思いで
瞳を閉じる

「・・・・助けて、誰か・・・夜兎」

とっさに口にしたその名前、雪ではなく夜兎の名前であったことに
私は恐怖で気付かなかった

足音は静かに給湯室の前を通りすぎ私は安堵し胸を撫で
暫く待って部屋を出ようとした瞬間にドアノブがゆっくり回されるのに
気付き私はゆっくり後ずさりをする

扉はゆっくり音を立て開かれると緑青の姿がそこにあり
私を見据え近づいてくる

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