Alice Boy's Pictures

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委細かまわず

委細かまわず


2007年4月3日記


アメリカ在住の伯母が来日している。
亡くなった祖父母と長兄(私の伯父)の墓参りに来ている。
伯母は、父の姉なので70代後半になろうというところ。
アメリカ人と結婚して40年余になる。

私の父母は、私が障害者を産んだことも、離婚したことも、一切親戚にはしゃべるなと言う。
私は、悔しくは思うけれど、援助してもらわねばならない時もあるので、父母の命令に従っている。
私の第一の願いと仕事は、息子達を育て上げることなので、自分の感情をかみ殺すことも必要なのだ。

母が、伯母が私と会いたいと言っているので"挨拶せよ”と言ってきた。
私は伯母に特別な感情は持っていないので、ごく普通に挨拶ができる。
母が私に言外に言いたいのは"余計なことは言うな”ということなのだ。

今も昔も、母は伯母のことをたいへん褒める。
けれども、小学生、中学生だった私には、伯母のことを

「アレは普通の女じゃない。日本の男はあんな女を相手にしない。あんな女と結婚したのは、アメリカ人でそれもバカだからよ。」

と言い続けた。

母が私に伯母のことを”パンパン”と言わなくなったのは、実家の事業が大きくなってからのことだから、私が成人してからだと思う。
つまりは、資産が増えて母の気持ちが満足したのだろう。
伯母が変化したわけではないようだ。


伯父、伯母が結婚したのは1965年というので、昭和40年か。
すでに”パンパン”や”オンリー”という言葉は死語だったのでないだろうか。

伯父と私は英語で話す。
国際電話も最近は聞き取りやすい。

伯父は、英語を母国語とする人々の常として人を褒めることが上手なのだけれど、
”君の伯母さんと結婚できて本当に幸せだ。結婚して一度も後悔したことがない。1月6日に結婚届を出しに大使館に行ったら正月休みだった。君の伯母さんに逃げられないように、どうしても届けをだしたかったから、警備員にたのんで職員を呼び出してもらって書類を受け取ってもらったんだ。”というのは本心のように思う。
伯母は、すでに米国籍であるし、伯父が亡くなっても日本に帰らない。
伯母も結婚して一度も後悔したことがないと言う。

いくら資産が増えても、自社ビルを有しても、私の母の伯母への嫉妬心がおさまることはないだろう。


伯父、伯母と私の息子達は、これからも一度も会うことはない。
他の親戚達とも同じだ。
私の息子達が、親族の冠婚葬祭というものを経験することはない。

長男は、感じることもあるだろうけれど、私に何も言わない。訊かない。
長男にありがたいと思う。すまないと思う。

けれども、こんなことで気持ちを揺らしていては、エネルギーの無駄使いというものだ。

委細かまわず。
私は私の責任を果たそう。

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