あい・らぶ・いんそん

告白9



消えゆく命を前にすがってくるイヌクの心を、受け入れることもできず、

しかし拒むこともできないスジョンだった。

やがてゆっくり、朝陽が差し込んでくる。

「今日、ジェミンが病室に移ったのを見届けたら、俺は消えるよ。だから

心配するな・・ジェミンに知れることも、もうないだろう。」

「消えるって・・・何処に行くの?」

「心配してくれるのか?嬉しいな・・。」

イヌクは寂しそうに笑った。

二人ともただじっと天井を、見るともなしに見ていた。

「おまえがバリを出てから、もうこんな日は来ないと思っていたよ。おま

えを苦しめたな・・・すまなかった。」

「イヌクさん・・・一人で・・・」

スジョンは、あとは言葉にならなかった。

「大丈夫だよ。おまえが最後の想い出をくれた・・・だから、もう思い残

す事はない。あとはジェミンと幸せに暮らすと約束してくれ。」



やがてジェミンも集中治療室から、病室に移ってきた。

イヌクが用意した部屋はVIP用の病室だった。

スジョンは大きく息を吸い込み、ジェミンに悟られないようにジェミンの

枕元に行った。

ジェミンがうっすらと目を開けスジョンを見た。

「あなた・・」

スジョンが声をかけると、にっこり笑った。

その弱々しいジェミンの笑顔に、スジョンは後ろめたさを感じていた。

ジェミンの頬にそっと手を当て泣くスジョンに、

「心配かけたな・・」

と優しく言った。

スジョンはジェミンに甘えたかった。何もかも忘れて甘えて、その胸で

泣きたいと思った・・。この幸せをどうして手放せるというのだろうか。

スジョンは点滴の針がついた腕の手を握り、自分の頬につけて泣いている

と、ジェミンはもう一方の腕でそっと抱きしめた。

「あなた・・ジェミンさん・・ジェミンさん」

スジョンは目の前にいるジェミンの存在を、確かめるように何度も名前を

呼んだ。

「あぁ・・可愛い人。もう泣くな・・。」

ジェミンはいつものように、少しおどけた口調でいった。

「心配かけたな・・俺はおまえをおいて何処にも行かないから・・心配する
な」

そう言いながらスジョンの髪を何度もなでていた。

ジェミンの目から、幾筋も涙が枕に落ちた。

するとスジョンの後ろからイヌクが顔を出した。

「大丈夫か?」

「あぁ・・・」

そのとき看護婦がスジョンを呼びに来た。

「ちょっと行ってきます・・。」

スジョンが部屋を出ると、イヌクがベッドのそばの椅子に座った。

「夢を見ていたよ・・・ずっと。」

ジェミンが言った。

「どんな?」

「おまえと会うまえの俺は、ただおもしろおかしく遊び回っていた・・・

会社でも仕事もせずにただ一日が終わって、遊びに行くことばかり考え

ていたよ。」

ゆっくり・・思い出すようにジェミンは話し続けた。

「それがスジョンを愛し、おまえという男に逢って、俺は変わった。」

「そうか・・・」

イヌクも又懐かしそうに思い出していた。

「おまえのおかげで、仕事に興味を持ったよ。おまえを何とか追いつめ

ようと必死だったからな・・。」

「そんなこともあったかな・・・」

イヌクが静かに目を閉じて答えると、

「これでおまえに借りを返せたな。」

と、ジェミンが苦笑いをしながら言った。

「なんの借りだ?」

「いつか、スジョンが働く店の前で喧嘩になったとき・・・おまえに助

けられた・・。」

イヌクも思い出したように、ふっと笑って言った。

「いいや、俺達を助けたのはスジョンだった」

するとジェミンも笑った。

「そうか・・そうだったな・・」

二人の心に同じ時間が流れていった。

告白10へ


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: