Another hall of FINAL・FINAL

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~プロローグ~





~プロローグ(ペルマネンツ行きのバス)~

「あれから16年もたつのか・・・・」

バスがゆっくりとスピードを落として、静かに停車した。

車体中央にある小さなドアが開き、
また一人の男が大きな荷物を背負って乗り込んできた。

これでバスの乗客は、俺を合わせて4人だ。

今乗ってきた男が背負っているのは、一目でスキー板だとわかる。

男は少し辺りを見回して、俺の真後ろの席に座った。

ドアが閉まり、再びバスは走り出した。

「あ、あの…」

さっきの男が不意に話しかけてきて、俺は振り返った。

「ペルマネンツ行きのバスって、これでいいんですよね?」

「ええ、そうですよ。」
俺は少し間を空けてそう答えた。

「ああ、よかった」
男はホッとしたのか、被っていたニット帽を乱雑に脱いだ。

さらに男が話しかけてくる。
「私、ビリー・トールソンと申します」

「ディーン。ディーン・アルム。よろしく」
俺はそう名乗って、ビリーと握手をした。

外で長いことバスを待っていたのか、
ビリーの手は寒さが伝わってくるほど冷たかった。

「お一人…ですか?」
ビリーが尋ねてくる。

「ええ、まあ」
俺は曖味な返事を返した。

本当は、一人じゃなかった。

リアと二人で来る予定だったのだが、
突然来れなくなってリアも残念そうだった。

リアとは結婚してもう3年になる。

なかなか子供に恵まれず二人で悩んでいたが、
よりにもよって、こんな時期に子供が出来るとは。

お腹の中の子の大事をとって、
今回のスキー旅行には行かず、家で留守番だ。

リアは旅行をキャンセルすればいいと言ったが、
俺は一人で行くと言って譲らなかった。

いや、普通ならキャンセルしていただろう。

これが、ただのスキー旅行ならば。

ようやくゾウディアックに行く気になれたのだ。

この機を逃すと、もう次はないかもしれない。

なぜだか知らないが、そんな気持ちが強かった。


そんなことを考えている間に、
もうバスは終着していた。

宿泊先の山荘ペルマネンツは、山頂付近にある。

ペルマネンツ行きのバスといっても、
山荘の前まで連れて行ってくれるわけではない。

バスが行けるのは最寄のバス停までで、
そこからしばらく山を登らないと山荘には行けない。

俺達バスの乗客4人は、
それぞれの荷物を背負い、無言で山を登り始めた。

新雪に足を取られ、
さらに重い荷物を持っての雪山登山は決して楽ではない。

ようやく山荘が見えてきたのは、
それから40分くらい後のことだった。

・・・
「やっと着いたの!?
 パンフレットには、
 『バス停から徒歩15分』って書いてあったのに!」

息を切らしながらそう怒鳴っているのは、
一緒に山を登ってきた女性だ。

見方によっては10代にも見えるが、
おそらく実際の年齢は20代になりたて、といったところか。

典型的な、ハイスクールのチアリーダーのような感じだ。

「まあ、雪が予想以上に深くて時間がかかったんだろう。
 それに、無事についたんだからいいじゃないか」

そう答えたのは、痩せ身で背の高い男だ。
年齢は40代前後だろう。

男が背負っているのは、ショットガンかライフルだろうか。

どうやらスキーではなく、
ここらで盛んなハンティング目的で来たらしい。

「そうですね。
 それにしても大きな山荘ですねえ」

沈黙を埋めるかのように、ビリーがそう言う。

俺以外の全員が、目の前の山荘を見上げている。

「うん。なかなかいい造りだな」

「夜はもっと、ロマンチックに見えるかもしれませんね」

「わー!素敵ー!」

俺もつられるように、山荘を見上げた。

俺が山荘を見上げた瞬間だった。

突然山荘全体が、真っ赤な光に包まれた。

違う。光じゃない。

あれは……

あれは炎だ。

山荘が、燃えている。

山荘がひとつの大きな炎の塊になっている。

山荘の中から叫び声が聞こえる。

俺を、呼んでいる?

助けないと。

誰を?

どうして?

俺は・・・

俺は・・・

逃げるのか?

どうせ今から中に入っても、助からないんじゃないか?

いや、違う。

怖いんだろう?

自分のことしか考えないんだ。

いつだって、そうだった。

いつも背中を向けて生きてきた。

過去に。 自分に。

負け犬。 臆病者。

いくじなし。 弱虫。

人殺し。

人殺し。

人殺し。


「あの、入らないんですか?」

「え?」

「いや、皆さんもう山荘の中に入っちゃいましたよ」
ビリーが山荘の扉を押さえながら、そう言う。

山荘は…燃えていない。

今のは、幻覚?

来て早々、幻覚のお出迎え、か。

「は、入るんですか?」

「あ! すいません!」

俺は、ずっと扉を開けたまま押さえていてくれたビリーに礼を言い、
足早に山荘の中へと入っていった。



第一章-山荘-へ続く・・・

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