すずめ、月へ飛ぶ

すずめ、月へ飛ぶ

両想い失恋・すっきりする男


19歳の時、奇妙な体験をした。
告白された男に、その場で振られたのである。

19歳の冬、とある劇団で知り合った彼。24歳の彼を大人だと信じていた。
私は彼を好きになったが、彼には二年付き合っている彼女がいる、公演が終わればあう事もなくなるだろうとすっかり諦めモード。仲良くはしていたがそれ以上を望む気持ちはあんまりなかった。

公演が終わる直前、彼から告白された。二人きりの車の中。「俺、お前の事、凄く可愛いと思ってる」
頭がクラクラした。言葉も出なかった。その瞬間・・・

「あーすっきりしたー。俺、お前も彼女も同じ位好きだからさ、だったら二年の重みのある彼女の方が大事だし。ただ言いたかっただけなんだよ。やっとすっきりしたーー」

だと。また頭がクラクラした。そして言ってしまった。
「あのー、私も好きなんですけど・・・」

彼は途端に深刻な顔付きになり言った。
「俺はただ好きだって言いたかっただけで、お前とは付き合えない。俺の親父は浮気して何度もお袋を泣かしている。だから俺も彼女を泣かせたくない。お前の事は彼女にちゃんと言って謝るよ。」

唖然とする私を放置し、彼は爽やかに去って行ったが、次の日から彼はまるで私の恋人気取り。焼きもちや束縛も凄かった。

劇団が終わり、彼から電話が来るようになった。相変わらずの束縛ぶり。なのに自分は、「彼女にお前との事話したよ。同じ布団で寝た事も話した」と言う。確かに同じ布団で寝たけど、皆で合宿中にした事だし、勿論何もしていない。掠ってさえもいない。彼は続けて、「彼女は最初凄く怒って、お前と会わせろって叫んでたけど、その後仲直りにエッチした」とアホな事を言う。それを私が聞いて嬉しいと思うのか。

最近、その彼が演劇から足を洗い、ライブ活動を始めたと言うので、当時の劇団のメンバーと行って見た。
9年振りの彼は「マーティン、お前は臭い臭い臭い臭い臭い臭い・・・」と熱唱し、正視に耐えかねたが、当時の彼女と最近結婚したらしく、幸せそうだった。

彼は私達を自分のファンだと思い込み、メールでライブ日程などを送ってくる。もう二度と行きたくないと思っているのにな。そのメール、気持ち悪い内容で「オイラ、尻毛が濃いから夏は汗でパンツで擦れて痛いから、ライブに来てくれ」とかそんなんばっか。ああ、あの時振られてよかったなと、今日もしつこく来たメールを見てしみじみ思うのであった。



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