青空日記

青空日記

その3



<腸管寄生性原虫症>
Amebiasis (Amoebiasis) 赤痢アメーバ症
Giardiasis ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)
Pentatrichomoniasis 腸トリコモナス症
Cryptosporidiosos クリプトスポリジウム症
Isoporiasis イソスポーラ症
Cyclosporiasis サイクロスポーラ症
Sarcosporidiosis (Sarocytosis) 肉胞子虫症
Balantidiasis バランチジウム症
Microsporidiosis 微胞子虫症
Blastocystiasis ブラストシスティス症


熱帯地方では細菌やウイルスだけでなく、腸管寄生原虫による下痢症も多く見られる。診断・治療が遅れると慢性化・重症化して致死的になることがあり、特に小児下痢やHIV/AIDSなどの免疫不全患者における慢性下痢には注意を要する。検査法は簡単で、高価な機器も必要ない。顕微鏡観察と手技に少し慣れれば、誰にでも、何処でも診断できる。


赤痢アメーバ症(Amebiasis)
Entamoeba histolytica(組織を溶かすという意味)による感染で、
栄養型(trophozoite)とシスト(嚢子、cyst)がある

Trophozoite:偽足で運動、赤血球を捕食、2分裂で増殖、組織に侵入
Cyst:腸管腔でtrophozoiteが被嚢したもの。成熟シストは4核
E.histolyticaと形態的に区別できない、非病原性のEntamoeba disparがある。これは、組織にinvasionしない。検鏡上は区別できない。感染者はcystのみを排出する。
1993年までは混同されていた。無症状のシスト排出者(cyst carrier)はPCRで鑑別する必要がある
疫学:世界中に分布
年間感染者数 5億人
(disparを含むため、実際にhistolyticaに感染している人数は不明)
年間発症者数 5千万人
年間死亡者数 約10万人(under estimateされているのでは?)
日本での届出数 673(増加中)国内での感染が65%

感染経路:成熟シストの経口摂取
(生水、生野菜、男性同姓愛者の性行為・・STD)

症状:腸アメーバ症(intestinal amebiasis)と
   腸管外アメーバ症(extraintestinal amebiasis)がある
intestinal:trophozoiteが大腸壁に侵入し、潰瘍を形成する。粘血便、下痢
extraintestinal:大腸壁から虫体が諸臓器に転移・・肝、肺、脳などにabsceeを形成する

診断
腸アメーバ症

糞便検査(排便後30分でtrophozoiteは死んでしまうので、急いで)
シストは集シスト法で(ホルマリン、酢酸エチル法など)
迅速診断キットもある
(クリプト、ジアルジア、アメーバが鑑別できるが高い)

腸管外アメーバ

画像診断、血清検査(抗体検査)
治療
症状のある人については、Metronidazole(フラジール)の経口投与(お酒を飲んではだめ、副作用で嘔気を来たす)
シストキャリアはhistolyticaであれば(90%はdispar)、フロ酸ジロキサニドの経口投与

感染予防:流行地では、生水・生野菜・生ジュースなどの摂取を避ける

細菌ではSTDとして注目されている(糞口感染ではあるが)
trophzoiteの中には大抵赤血球が見つかる
アメーバには6種あるが、病原性を持つのは、histolyticaのみ
膿瘍:肝細胞を溶かしながら大きくなる。中央はドロドロで壊死組織のみで虫はいない

肝臓から直接浸潤で横隔膜を溶かし、肺へ浸潤する
脳へは血行性に転移する
時には皮膚に浸潤して潰瘍を形成することもある
疫学検査では、25%がhistolytica感染であった
小腸にはまったく病変がない。大腸のみ。CFでみると、タコいぼ状で紅うんを伴う潰瘍が見える
Metroは基本的にcystには効かない。栄養体のみに効果がある。有症状者は下痢をしてるわけなので、trophozoiteがcystに変わる時間的猶予がないため、trophozoiteを出している。Cyst自体には病原性はなく、人に感染するのみ。症状のないcystキャリアは、たとえhistolyticaであっても、Metroの使用意義はない。
栄養体は体外ですぐに死ぬが、シストは2週間から1ヶ月生き延びる。しかも、胃液で不活化しない。
赤痢アメーバのシストは4核。大腸アメーバ(病原性なし)の核は8核(検鏡では区別できないけど)

ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症、Giardiasis)
Giardia lambliaの感染(G. intestinalis, G. duodenalisともいう)
栄養型とシストがあり、小腸上部に寄生する
栄養型:オタマジャクシ様で扁平。2個の核と8本の鞭毛、腹部に吸着吸盤があり、新鮮な下痢便や胆汁中では活発に動く。
シスト→ラグビーボール状で2-4個の核、中央小体など。軟便や有形便にみられる(大腸でシストになる)
疫学
世界中に分布
年間感染者数:2~3億人(米国だけでも250万人)
届出感染症であるが、日本では年間80人程度・・・?
途上国からの帰国下痢症では最も多い
感染:成熟シストの経口摂取。10個位でも感染する
症状:1~3週間の潜伏期間。急性または慢性の下痢と、軽度の上腹部痛。便は悪臭を伴う(魚の腐ったような臭い)・・・ちなみに赤痢アメーバは甘酸っぱい、細菌性赤痢は刺激臭
無症候性シスト排出者は多い(届出不要)
低γグロブリン血症や分泌型IgA低下の患者では重症化する(体重減少、衰弱)
感染が胆嚢、胆管に広がり、胆のう炎を起こすことがある(重症例のみ)。
小児における慢性下痢では、栄養障害、発育障害(精神面も含めて)を来たす
10%で2ヶ月以内の再発がある
診断:糞便検査
下痢便を30分以内に検鏡すれば、活発に動く栄養体が見える。時間が経つと死滅する。
軟便や有形便はホルマリン・酢酸エチル法で集シスト。ルゴールで検鏡
治療:Metronidazole
普通の検鏡で十分に見える
血便は出ない、熱も通常は出ない
無症候性シスト保有者であっても、治療する(Metroでいい)
生野菜でも、10秒湯通しすれば、シストはすべて死滅する


腸トリコモナス症 (Pentatrichomoniasis)
Pentatrichomonas homminis (Trichomonas hominis)の感染
下痢便に栄養型が見られる。シストは形成しない
新鮮な下痢便を直接塗抹でみると、活発に泳ぐ多数の虫体がみえる。目玉と鞭毛


クリプトスポリジウム(Cryptosporidiosis)
Cryptosporidium hominisが腸管上皮細胞の微絨毛内に寄生する
成熟オーシスト(有性生殖によるシスト)が糞便中よりでてくる(糞便から直接感染する)
多くの哺乳動物にも感染する人獣共通感染症
疫学
世界中に分布
年間感染者数 2.5~5億人  年間死亡者数は不明
日本の届出数は9人(恐らく氷山の一角)
旅行者下痢症の検便では、陽性率5%
感染:成熟オーシストの経口摂取(生水、生野菜、男性同性愛者の性行為)
下痢便中には1日に数十億個オーシストが出ているが、たった1個口にすれば感染が成立する
水道水による集団感染が起こりやすい(塩素では全く死なないので)
ミルウォーキー(1993年)たった2週間で40万人に感染
埼玉(1996年)9千人に感染など
スイミングプールや託児所などで集団発生する。院内感染も多い
国内感染(患者や子牛から)もある
症状
4~5日の潜伏期間を経て、激しい水様性下痢(シャブシャブ、消毒液は効かない)と腹痛、嘔気、軽度発熱など
免疫機能が正常なら1週間前後で自然治癒(ただし入院治療を必要とするほど、脱水がひどくなる事はある)。一ヶ月程度でオーシストも排出しなくなる
免疫不全患者:慢性化、重症化(胆嚢・胆管炎も)、致死的。HIVやMalnutritionでは要注意
1976年に始めて報告された、新興感染症
初感染で重篤、再感染では軽症か無症状
診断
糞便検査でオーシストを検出(ただし普通の直接検鏡では、発見できない)
ショ糖遠心浮遊法(sugar centrifuge flotation)
 比重1.2のショ糖液:ショ糖(砂糖でもいい)50g + 水65ml(すぐにカ ビるので注意)
 便1mlとショ糖液9mlを混ぜて遠心し、上澄みを検鏡する。コントラスト がついて見える
 カバーガラスを2枚使って移動させて、2枚目の淵をみると見つけやすい。
抗酸性染色法(acid-fast staining):オーシストは赤染
直接蛍光抗体法
治療
確実に効く薬はない(アジスロマイシン、クラリスロマイシン、nitazoxandineがやや有効)
HIV陽性で、本症による下痢症が1ヶ月以上続けば、AIDSと診断する(CD4値にかかわらず)
特にCD4が150を切ると、重症化しやすい
便を採取する際は、コップに最低5mlはとりたい。Swabではなかなか発見しにくい
パロモマイシンという薬もあるが、米国から輸入しないといけない
発症直後は抗体価陰性だが、5日程度で陽性化してくる
下痢がおさまっても、最低2週間はプールに入ってはいけない
免疫不全患者が下痢をした時には、必ず便検査をすること!(クリプトと指定して)
微絨毛の中に無理やり入り込んで、最終的には微絨毛に包まれる形で増殖するため、薬が効きにくい
検鏡上、とても小さい。ややピンクにみえる。馬蹄形の内部構造がみえる
位相差顕微鏡のほうが見やすい(光って見える)
血便は出ない


イソスポーラ症(Isosporiasis)
Isospoa belliの感染(戦争イソスポーラ)
腸上皮細胞の細胞質内に寄生。未成熟オーシストが糞便中に
オーシストは外界で発育し、2~3日で成熟し、感染性に
途上国を中心に世界中に分布。特に免疫不全者に多い
HIV陽性者で、本症による下痢が1ヶ月以上持続する場合には、AIDSと診断する
感染:成熟オーシストの経口摂取(生水、生野菜)
水様性、あるいは粘性の頑固な下痢を主症状とする
免疫機能正常者:10日前後で軽快
免疫不全患者
間欠的に下痢症状が続く
体重減少・衰弱が著しく、続発性吸収不良症候群となる
重症例では胆嚢などにも感染が広がり、胆嚢・胆管炎を併発
適切な治療を行わないと、死にいたる

糞便検査でオーシストを検出する
検査:ショ糖遠心浮遊法、ホルマリン・酢酸エチル法
薬:ST合剤(バクタ)が有効。免疫不全者では、再発を繰り返し難治性に
100倍では見えない(400倍で検鏡する)


サイクロスポーラ症(Cyclosporiasis)
Cyclospora cayetanensisの感染。新興感染症である
小腸の上皮細胞内に寄生
未成熟のオーシストが糞便と共に排出し、外界で成熟
熱帯地方に広く分布
途上国:小児下痢症患者からの検出率は、ネパールで10~19%、ペルーで6~18%
先進国では輸入感染症として、あるいは輸入野菜を介した感染症として
頑固な下痢。免疫が正常なら1週間でおさまるが、免疫不全患者では慢性化する
検査:糞便のショ糖遠心浮遊法
治療:ST合剤


Sarcosporidiosis(肉胞子虫症)
Sarcocystis hominisの感染
中間宿主(牛、豚)の筋肉内で肉胞嚢を形成。人がそれを食べると、生体内で小腸粘膜上皮細胞に侵入し、成熟する。成熟オーシストは糞便中に排出される
世界中に分布するが、頻度は不明
症状:下痢、腹痛、嘔吐
加熱不十分な牛肉、豚肉の摂取
糞便検査(ショ糖遠心浮遊法)
治療薬はない


Balantidiasis(バランチジウム症)
Balantidium coliの感染
腸壁に侵入し2分裂で増殖
下痢、血便
豚との濃厚接触な地域に多い
下痢便は薄層塗抹標本で栄養体を
メトロニダゾール、テトラサイクリン


Microsporidiosis(微胞子虫症)
世界中のエイズ下痢患者から検出される。慢性化し難治性
有効な治療薬はない


Blastosistiasis(プラストシスティー症)
世界中に分布する。陽性率は日本でも3%程度ある。
無症状の感染者が多い
治療薬はない




© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: